筋萎縮性側索硬化症患者由来疾患モデル細胞を用いた病態解明と治療法開発

文献情報

文献番号
200935062A
報告書区分
総括
研究課題名
筋萎縮性側索硬化症患者由来疾患モデル細胞を用いた病態解明と治療法開発
課題番号
H21-こころ・一般-015
研究年度
平成21(2009)年度
研究代表者(所属機関)
高橋 良輔(京都大学 大学院医学研究科・臨床神経学)
研究分担者(所属機関)
  • 井上 治久(京都大学 物質-細胞統合システム拠点・iPS細胞研究センター)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 こころの健康科学研究
研究開始年度
平成21(2009)年度
研究終了予定年度
平成23(2011)年度
研究費
30,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
神経変性疾患では、特定の神経系が脆弱性を有し、選択的神経変性を生じる。最近の研究において、グリア細胞がその神経変性に寄与していることが明らかになりつつある。変異SOD1を有する遺伝性筋萎縮性側策硬化症(amyotrophic lateral sclerosis: ALS)においては、変異SOD1を有するアストロサイトが運動ニューロン変性を加速すると考えられている。また、アストロサイトのSOD1タンパク質量を減少させることが治療効果を有する可能性がある。本研究では、アストロサイトのSOD1タンパク質量を減少させる可能性のある低分子化合物・既存薬候補を同定し、最終的に、ALS治療薬を発見することを目的としている。
研究方法
ヒトSOD1のゲノムを用いて、SOD1のpromoter制御下に分泌型ルシフエラーゼを発現するベクターを構築する。ヒトアストロサイト細胞株にそのベクターを導入し、恒常的に分泌型ルシフエラーゼを発現するクローンを樹立する。上清のルシフエラーゼを測定し、SOD1転写活性を抑える低分子化合物もしくは既存薬を同定する。すでに細胞死を誘発することによりSOD1の転写を抑制することがしられているマイトマイシンCを陽性対照として用いる。ルシフエラーゼ活性測定で同定された低分子化合物・既存薬の中で、さらにELISAでSOD1発現量を低下させ、WST-1アッセイで毒性を有さない低分子化合物・既存薬をスクリーニングする。また、低分子化合物(もしくは既存薬)の濃度依存性にSOD1の転写が抑制されるかを検討する。
以上の1次スクリーニングの後、さらに研究分担者(井上)による、ALS患者iPS細胞由来アストロサイトでの2次スクリーニングを行う。
結果と考察
約10,000種類の低分子化合物のうち、濃度依存性にSOD1の発現量を減少させる177種類の化合物といくつかの既存薬を一次スクリーニングで同定した(Z'-factorは、0.5~1.0)。同定した既存薬の中には、変異SOD1マウスを用いた治療実験で治療効果を示されているものも含まれていた。WST-1アッセイでその効果が細胞毒性によるものであることを除外し、ELISAでSOD1タンパク質量の実際の発現低下を177のヒットの内10化合物で確認した。その中で最も効果の高い2化合物に構造式類似の既存薬でも同様の結果を見出し、ウェスタンブロッティングでSOD1タンパク質量が実際に減少していることを確認した。
結論
ヒトアストロサイト細胞株において、細胞死を生じることなく、SOD1転写活性を低下させる低分子化合物・既存薬を同定した。

公開日・更新日

公開日
2010-08-31
更新日
-