HIV検査体制の改善と効果的な受検勧奨のための研究

文献情報

文献番号
202319012A
報告書区分
総括
研究課題名
HIV検査体制の改善と効果的な受検勧奨のための研究
研究課題名(英字)
-
課題番号
22HB1002
研究年度
令和5(2023)年度
研究代表者(所属機関)
今村 顕史(地方独立行政法人東京都立病院機構 東京都立駒込病院 感染症科)
研究分担者(所属機関)
  • 西浦 博(国立大学法人京都大学 大学院医学研究科 )
  • 本間 隆之(山梨県立大学 看護学部)
  • 土屋 菜歩(東北大学東北メディカル・メガバンク機構)
  • 佐野 貴子(嶋 貴子)(神奈川県衛生研究所 微生物部)
  • 加藤 真吾(株式会社ハナ・メディテック)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 エイズ対策政策研究
研究開始年度
令和4(2022)年度
研究終了予定年度
令和6(2024)年度
研究費
54,784,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
本研究では、疫学的な現状評価、検査と予防の普及啓発、HIV診断検査の充実を図り、その成果を戦略研究に集約することで実効性を高めていく。90-90-90(95-95-95)の最初の90(95)に当たる検査目標の達成に向けた質の高い検査を拡充しつつ、COVID-19流行後の新たなHIV検査戦略の方向性を政策提言し、より効果的かつ持続可能な検査体制を構築することを目標とする。
研究方法
本研究は、3つの分担研究(疫学的な現状評価、検査と予防の普及啓発、HIV診断検査)を、戦略研究によって横断的に集約しながら、我が国における検査体制の確立につなげられるように組み立てられている。COVID19による影響を受けた検査体制の分析評価から、より効果的で持続可能な今後のHIV検査戦略についても検討する。
結果と考察
 HIV検査体制の改善に向けた戦略研究では、他の3つの分担研究で得られた成果を横断的に集約しながら、今後の検査体制の構築に必要な現状分析、検査手法等の実証研究等を行っている。郵送検査を活用したハイリスク層向けの検査会を、北陸3県と南九州3県で実施して効果分析を行った。さらに、他分担研究との協力で、新たな郵送検査キットの開発をすすめ、沖縄県の保健所と連携した検査会の実施につなげた。また、研究班で連携している民間クリニックの調査により、クリニック検査における現状分析を行った。繁華街のナイトクラブに来場する若者を対象とした研究では、HIV検査の受検経験やHIV/STI感染リスク行動に関する調査も実施した。
 HIV検査・相談における疫学的な現状評価にかかる研究では、数理モデル分析によってHIV新規感染者数と診断確率を推定した。特にCOVID-19流行による90-90-90(95-95-95)の達成状況への影響を定量化すべく、診断率の推定を実施した。さらに、道州制レベルの地域別における診断状況の定量化を行った。保健所等に関する研究では、COVID-19流行後のHIV検査体制や、梅毒検査の実施状況等を把握するためのアンケート調査を行い、その結果についての分析を行った。また、保健所におけるHIV検査・相談のガイドラインの改定を行った。
 効果的なHIV検査受検勧奨に係る普及啓発の研究では、郵送HIV検査キット配布時の問診と、保健所にて配付したキットの利用状況を追跡できるシステムを構築して、沖縄県の保健所において新たな郵送検査を活用した検査会を実施した。インターネットサイトの研究では、「HIV検査・相談マップ」の利用状況の解析を行い、COVID-19流行による保健所等HIV検査事業の中止や縮小状況の調査も行った。さらに、近年の梅毒流行を踏まえ、性感染症の知識や検査情報を掲載した新たなサイト「性感染症検査・相談マップ」も作成した。
 HIV診断・検査法にかかる研究では、郵送検査会社へのアンケート調査によって、現在の検査対応の実態を把握するとともに、民間郵送検査における精度調査も実施した。また、新規HIV-1/2抗体確認検査法(Geenius)普及と実施体制の向上のために、Geenius検査への切り替え状況の確認を行うとともに、地方衛生研究所を対象とするweb研修会を開催して、検査の問題点や対応などの情報の普及を図った。さらに、Geeniusによって乾燥ろ紙血の検査を行った場合における検査精度の検討も行った。
 本研究班によって構築されていく各種検査体制は、長期的な戦略としても、我が国におけるHIV早期診断に直接的な影響を与えていくことが予想される。その結果として、エイズ発症者を減少、早期治療による長期合併症予防、さらに感染拡大を防ぐという、我が国のエイズ対策における大きな目標にも貢献する社会的意義の高いものであると考えられる。
結論
ケアカスケード90-90-90(95-95-95)の達成には、これまでの受検勧奨が届きにくかった対象層にも有効な、質の高い検査の拡充が求められる。さらに、COVID-19流行は、保健所や医療機関での検査体制など、我が国におけるHIV検査体制にも大きな影響を与えたため、より効果的かつ持続可能なHIV検査体制の再構築も喫緊の課題となっている。
本研究においては、郵送検査の活用など、今後の新たな検査体制につながるような、受検勧奨と検査手法の開発や実証研究も行っている。さらに、より効果的かつ持続可能な新たな体制の構築へ向けた政策提言の検討もすすめている。
本研究によって構築されていく検査体制は、今後の我が国における中長期的なエイズ戦略にも大きな影響を与えていくことが期待される。

公開日・更新日

公開日
2025-05-01
更新日
-

研究報告書(PDF)

研究成果の刊行に関する一覧表
倫理審査等報告書の写し

公開日・更新日

公開日
2025-05-01
更新日
-

研究報告書(紙媒体)

収支報告書

文献番号
202319012Z
報告年月日

収入

(1)補助金交付額
56,366,000円
(2)補助金確定額
56,366,000円
差引額 [(1)-(2)]
0円

支出

研究費 (内訳) 直接研究費 物品費 7,738,930円
人件費・謝金 12,939,586円
旅費 2,935,707円
その他 31,187,451円
間接経費 1,582,000円
合計 56,383,674円

備考

備考
差異17,674円の理由につきましては、自己負担金(今村顕史3,402円、佐野貴子126円、加藤眞吾14,146円)の発生によるものです。

公開日・更新日

公開日
2025-05-01
更新日
-