ニューロパチーの病態におけるプロテオグリカンの役割の解明と新規治療法の開発

文献情報

文献番号
200935059A
報告書区分
総括
研究課題名
ニューロパチーの病態におけるプロテオグリカンの役割の解明と新規治療法の開発
課題番号
H21-こころ・一般-012
研究年度
平成21(2009)年度
研究代表者(所属機関)
楠 進(近畿大学 医学部)
研究分担者(所属機関)
  • 門松 健治(名古屋大学 大学院医学系研究科)
  • 岡 昌吾(京都大学 大学院医学研究科)
  • 北川 裕之(神戸薬科大学 )
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 こころの健康科学研究
研究開始年度
平成21(2009)年度
研究終了予定年度
平成23(2011)年度
研究費
22,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
プロテオグリカンは長大な糖鎖であるグリコサミノグリカン(GAG)とコアタンパク質からなる分子の総称であり、神経系組織の細胞外マトリックスの主成分である。本研究は、(1)プロテオグリカンのGAGの合成異常および(2)GAGに対する免疫反応と、ニューロパチーの病態との関連を解明し、新規治療法開発へつなげることを目的として行った。
研究方法
1)プロテオグリカンの一種であるフォスファカンに対する慢性炎症性脱髄性多発神経炎(CIDP)患者血中の自己抗体上昇の有無を検討した。2)コンドロイチン硫酸(CS)糖鎖合成酵素であるC6STのノックアウトマウスを用いた免疫性神経疾患の動物モデルである実験的自己免疫性脳脊髄炎(EAE)の検討を行った。3)ラット実験的自己免疫性神経炎(EAN)におけるプロテオグリカン(コンドロイチン硫酸(CS)およびケラタン硫酸(KS))の解析を行った。4)HNK-1 糖鎖抗原を認識する単クローン抗体の反応特異性を解析した。5)末梢神経障害患者で一塩基多型が見出されているコンドロイチンN-アセチルガラクトサミン転移酵素-1(ChGn-1)によるコンドロイチン硫酸鎖の合成制御機構を解析した。
結果と考察
CIDPの一部において抗phosphacan抗体陽性例が見出され、同抗体が運動失調の病態と関連する可能性が示唆された。HNK-1エピトープに対する抗体の反応には多様性が認められた。この多様性が抗体陽性例の臨床的特徴と関連する可能性がある。C6STノックアウトマウスではEAEが重症化し回復が遅延した。CSはEAEにおいて神経保護的に作用していることが明らかになった。EANに罹患したラットの脊髄ではミクログリアの150-250 kDaのKSプロテオグリカンの発現がほとんど消失しており、病態形成との関連が示唆された。ChGn-1の発現量とCSの二糖総量に相関性が見られたことから、ChGn-1はCS鎖の合成量を制御していることが示唆された。一方その鎖長にほとんど変化がないため、ChGn-1によりCS鎖の本数が制御されていることがわかった。
結論
CIDPの一部で、phosphacanは標的抗原のひとつであり、抗phosphacan抗体と運動失調との関連が示唆される。
プロテオグリカンの発現はEAEやEANの病態に密接に関連する。
HNK-1エピトープに対する抗体の反応は多様である。
ChGn-1によりコンドロイチン硫酸鎖の本数が制御されている。

公開日・更新日

公開日
2010-08-31
更新日
-