統合失調症における社会生活機能障害の評価・支援-MATRICS-CCB日本語版による認知機能障害の評価と治療計画への応用-

文献情報

文献番号
200935050A
報告書区分
総括
研究課題名
統合失調症における社会生活機能障害の評価・支援-MATRICS-CCB日本語版による認知機能障害の評価と治療計画への応用-
課題番号
H21-こころ・一般-003
研究年度
平成21(2009)年度
研究代表者(所属機関)
曽良 一郎(東北大学 大学院医学系研究科)
研究分担者(所属機関)
  • 大森 哲郎(徳島大学 大学院ヘルスバイオサイエンス研究部)
  • 住吉 太幹(富山大学 大学院医学薬学研究部)
  • 中込 和幸(鳥取大学 大学院医学系研究科)
  • 松岡 洋夫(東北大学 大学院医学系研究科)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 こころの健康科学研究
研究開始年度
平成21(2009)年度
研究終了予定年度
平成23(2011)年度
研究費
16,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
統合失調症は複数の領域にわたる認知機能の障害を示し、就労の可否など患者の社会的予後を大きく左右する。ゆえに、統合失調症の認知機能障害の体系的な測定のために国際標準とされている評価法を本邦に取り入れ運用することは、精神医療・保健福祉の観点から大きな価値があると言える。本研究の目的は、国際標準として体系化された認知機能障害テストMATRICS-CCB日本語版(MATRICS-J)を開発した上で、認知機能改善の効果判定や認知機能障害の改善に伴う脳生理機能の変化を検討し、社会生活機能障害に対する治療への応用に貢献することである。
研究方法
MATRICS-Jの下位検査で言語的・文化的影響を受けやすい「語音整列(LNS)」、および「マイヤー・サロヴェイ・カルーソー感情知能テスト:感情の管理(MSCEIT ME)」の妥当性・信頼性を、患者群を対象とした臨床研究および健常者を対象としたアナログ研究によって検討した。次に、外来および入院中の統合失調症患者および健常者を対象にMATRICS-Jを実施し、MATRICS-J全体の有効性の検討を行った。さらに、統合失調症認知評価尺度日本語版(SCoRS-J)の妥当性・信頼性、認知機能の統合失調症の臨床症状およびQOLへの影響、認知リハビリテーションNEAR(Neuropsychological Educational Approach to Cognitive Remediation)による認知機能の改善効果を統合失調症患者を対象に検討した。
結果と考察
個別に検討した下位テストは、本邦でも概ね有効に機能することが示唆された。また、さらなるデータの蓄積が必要ではあるものの、MATRICS-J全体の有効性を示唆する結果が得られた。さらに、SCoRS-Jは十分な信頼性・妥当性が確認され、患者の日常生活機能と直接関連する認知機能障害の程度を評価するためのツールとして有効性が示された。加えて、統合失調症患者の陰性症状と認知機能との関連性、NEARによる認知機能の改善効果が確認された。
結論
統合失調症の認知機能障害の国際標準として体系化されたMATRICS-Jの開発を行い、その有効性の検討を行った。また、統合失調症の認知機能を改善するための認知リハビリテーションの検討を行い、次年度にMATRICS-Jを用いて包括的な検討を行うための基礎的知見を得ることができた。

公開日・更新日

公開日
2010-08-31
更新日
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