統合失調症の多次元生物学的診断法と新たな治療薬の開発をめざした病態解明研究

文献情報

文献番号
200935048A
報告書区分
総括
研究課題名
統合失調症の多次元生物学的診断法と新たな治療薬の開発をめざした病態解明研究
課題番号
H21-こころ・一般-001
研究年度
平成21(2009)年度
研究代表者(所属機関)
功刀 浩(国立精神・神経センター 神経研究所 疾病研究第三部)
研究分担者(所属機関)
  • 佐藤 典子(国立精神・神経センター病院 放射性科)
  • 石川 正憲(国立精神・神経センター病院 第一病棟部)
  • 沼川 忠広(国立精神・神経センター 神経研究所 疾病研究第三部)
  • 尾崎 紀夫(名古屋大学大学院医学系研究科)
  • 岩田 仲生(藤田保健衛生大学医学部)
  • 那波 宏之(新潟大学脳研究所)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 こころの健康科学研究
研究開始年度
平成21(2009)年度
研究終了予定年度
平成23(2011)年度
研究費
21,900,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
本研究の目的は、最先端の脳科学的手法・生物学的手法を用いて、統合失調症の多次元生物学的診断法の確立を行うとともに、遺伝子研究・機能解析によってバイオマーカーや治療法の開発を行うことを目的とする。
研究方法
病院急性期病棟と連携し、入院患者全員に研究協力を依頼する体制を確立して研究を行った。一連の高次脳機能検査として、知能、記憶、実行機能、気質・性格、運動機能、統合失調症認知機能簡易評価尺度(BACS-J)について検討した。MRI画像(拡散テンソル画像、MRS)、ストレス反応をみるDEX/CRHテスト、情報処理障害をみるプレパルスインヒビション、カテコーラミンの脳内産生をみる呼気ガス検査など多次元の生物学的指標に関するデータを収集した。DNAサンプルを用いた遺伝子探索も行った。既に知られている脳由来神経栄養因子(BDNF)やニューレグリンなどのリスク遺伝子について、細胞、動物モデルを用いた機能解析を行った。
結果と考察
統合失調症には広汎な認知機能障害があり、BACS-Jはそれを簡便かつ包括的に測定でき、高い感度、特異性をもつため極めて有用であることを明らかにした。
DEX/CRHテストにより、ストレスホルモンの過剰抑制がストレス症状の増加や統合失調症型人格傾向と関連することを報告した。
統合失調症のリスク遺伝子として、軸索進展を制御する遺伝子SEMA3Dを同定し、コピー数異常を同定した。これらは病態発生の解明や治療法開発に役立つ。
統合失調症型人格傾向とMRIでの左上縦束の神経ネットワーク低下との間に関連を見出した。
統合失調症症状を惹起することで知られるフェンサイクリジン(PCP)のシナプス減少作用におけるBDNFの役割について明らかにした。
ニューレグリン1の早期暴露により、ドーパミン神経支配過剰となる動物モデルを作成した。
結論
多次元の生物学的指標の開発とデータベース構築が進み、22年度以降に生物学的所見に基づいた診断基準の作成が期待できる。
新たなリスク遺伝子や染色体コピー数異常の発見により、病因解明と標的分子の探索が進んだ。
既に見出されているリスク遺伝子であるBDNFやニューレグリンの機能解析により、病態発生メカニズム解明に寄与する結果を得た。

公開日・更新日

公開日
2010-08-31
更新日
-