ライソゾーム病に対するケミカルシャペロン療法の確立

文献情報

文献番号
200935045A
報告書区分
総括
研究課題名
ライソゾーム病に対するケミカルシャペロン療法の確立
課題番号
H20-こころ・一般-022
研究年度
平成21(2009)年度
研究代表者(所属機関)
鈴木 義之(国際医療福祉大学 大学院)
研究分担者(所属機関)
  • 大野 耕策(鳥取大学 医学部)
  • 松田潤一郎(医薬基盤研究所 生物資源研究部)
  • 難波 栄二(鳥取大学 生命機能研究支援センター)
  • 榊原 康文(慶應義塾大学 理工学部)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 こころの健康科学研究
研究開始年度
平成20(2008)年度
研究終了予定年度
平成22(2010)年度
研究費
9,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
ライソゾーム病を対象としたケミカルシャペロン療法の確立を目的とする。β-ガラクトシダーゼ欠損症、β-グルコシダーゼ欠損症に対し、よりよい治療効果を示すシャペロン化合物を探索する。基礎データの集積後、非臨床試験、臨床試験を開始することを最終目標とする。
研究方法
バリエナミン化合物の大量供給を目指し、新しい合成法を開発した。さらに分子動力学的シミュレーションによりシャペロンと酵素分子の結合動態を計算した。より広いシャペロン効果スペクトルを達成するため、2種の化合物のβ-ガラクトシダーゼに対するシャペロン効果を培養細胞系で検討した。個体実験として、GM1-ガングリオシドーシスマウスにNOEVを経口投与し、神経学的に評価した。
結果と考察
これまでの化合物合成法を再検討し、大量合成の条件設定を行った。特にイノシトール誘導体を原料とする新合成法による製造の見通しがついた。またシャペロンNOVと変異β-グルコシダーゼの分子結合強度シミュレーション実験により、ライソゾームで結合が弱くなり複合体が解離することを確認した。さらに二種のシャペロンの効果を検討した。NOEVは検査対象の26%に、MTD118は30%の変異に有効であった。効果重複例も含めた両者のシャペロン効果は45%で、共通変異の存在を考慮すると全患者の60-70%に有効であると予測した。MTD118は経口投与でも疾患モデルマウスに酵素活性を誘導した。NOEVのマウス長期投与では、これまでの投与量の30%で疾患モデルマウス10%に有効性を確認した。ゴーシェ病については、4種の化合物が、β-グルコシダーゼの4種の変異に有意なシャペロン効果を示した。
結論
分子・細胞・個体のレベルでシャペロン効果の多面的な解析を行った。シャペロン治療に伴う細胞内分子動態の詳細が明らかになった。動物個体実験で統計的に有意な臨床効果を認め、少量の投与で有効な薬剤開発の可能性を示した。新しいシャペロンの開発により、治療の適応症例が増加すると予測した。ミスセンス変異の大多数に治療ができるであろう。今後、非臨床試験から臨床試験に進む予定である。来年度は国際的な患者情報の収集を開始する。この研究が、細胞内分子反応のパラドックス(シャペロン効果)解析、新しい分子治療のコンセプト提唱、そして神経遺伝病の経口薬開発という3つの学問的側面を持った研究プロジェクトであることを強調したい。

公開日・更新日

公開日
2010-08-31
更新日
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