スプライシングを利用した筋強直性ジストロフィーの治療

文献情報

文献番号
200935040A
報告書区分
総括
研究課題名
スプライシングを利用した筋強直性ジストロフィーの治療
課題番号
H20-こころ・一般-017
研究年度
平成21(2009)年度
研究代表者(所属機関)
石浦 章一(東京大学 大学院総合文化研究科)
研究分担者(所属機関)
  • 西野一三(国立精神・神経医療研究センター神経研究所)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 こころの健康科学研究
研究開始年度
平成20(2008)年度
研究終了予定年度
平成22(2010)年度
研究費
12,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
筋強直性ジストロフィー(DM)は常染色体優性遺伝疾患で、筋強直、筋力低下、心伝導障害、耐糖能異常、白内障などを呈する全身性の疾患で、CTGまたはCCTGという塩基リピートが伸長することが原因で発症する。実際は、伸長したリピートRNAに、スプライシング因子MBNL1が結合し、塩素チャネル、インスリン受容体、心筋トロポミオシンなどの遺伝子が正常にスプライシングできないことが症状につながると考えられている。本年度、塩素チャネルミニ遺伝子を用いてスプライシング・アッセイ系を構築し、スプライシング調節活性を持つMBNL1の標的配列を明らかにしたのち、その配列を指標に、塩素チャネルのスプライシングを正常化することを目的として、アンチセンス配列を検討した。
研究方法
塩素チャネルミニ遺伝子(エキソン6、7a、7でできている短い遺伝子)を用いて、エキソン7aがない成人(正常)型とエキソン7aを含む幼若(異常)型の発現比率を培養細胞系で検討した。正常筋では圧倒的に前者が多く、DM筋では後者が増えていることは以前に報告した。そこで、私たちが同定したMBNL1結合部位(下の記号で0?6)近辺の配列で作成した2-O-メチルアンチセンスオリゴ投与によって、どの程度スプライシングを正常化させることができるかをRT-PCRで定量した。
結果と考察
まず、エキソン7aの最初の塩基を1として、-15?10、0?25、26?50、51?75、76?+21をコードする各アンチセンスの効果を見たところ、エキソン7aの0?25に対するアンチセンスを投与したときに7a含有型の割合が約50%から10%に低下した。この抑制結果は、以前報告のあったアンチセンスより高く、筋強直の治療に使えるものと考えられた。次に、2-O-メチルアンチセンスオリゴの代わりに生体内への保持能力の高いモルフォリノアンチセンスオリゴを使って同じ実験を行った結果、より効率のよいエキソン7aのスキッピングが検出された。
結論
MBNL1結合部位付近に作ったアンチセンスが、最も効率よくエキソンスキッピングを誘導し、正常化スプライシングに成功した。本研究では、スプライシング機能を正常化する新規DM治療法の開発を目指し、動物実験の手前まで行くことができた。

公開日・更新日

公開日
2010-09-01
更新日
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