文献情報
文献番号
200935034A
報告書区分
総括
研究課題名
心神喪失者等医療観察法制度における専門的医療の向上に関する研究
研究課題名(英字)
-
課題番号
H20-こころ・一般-011
研究年度
平成21(2009)年度
研究代表者(所属機関)
吉川 和男(国立精神・神経センター 精神保健研究所 司法精神医学研究部)
研究分担者(所属機関)
- 岡田 幸之(国立精神・神経センター 精神保健研究所 司法精神医学研究部)
- 菊池 安希子(国立精神・神経センター 精神保健研究所 司法精神医学研究部)
- 福井 裕輝(国立精神・神経センター 精神保健研究所 成人精神保健部)
- 安藤 久美子(国立精神・神経センター 精神保健研究所 司法精神医学研究部)
- 岩成 秀夫(神奈川県立精神医療センター)
- 平林 直次(国立療養所多磨全生園(国立精神・神経センター病院))
- 八木 深(東尾張病院)
- 松原 三郎(松原病院)
- 山口 しげ子(国立精神・神経センター病院)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 こころの健康科学研究
研究開始年度
平成20(2008)年度
研究終了予定年度
平成22(2010)年度
研究費
20,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-
研究報告書(概要版)
研究目的
本研究は、心神喪失等医療観察法による制度の運用状況を適正にモニタリングし、医療観察法制度を円滑に運用する上で有用な客観的な情報を関係機関に提供する。また、科学的に検証を経て開発された治療プログラムを関係機関に教育・普及させることによって、専門的医療の向上を図ることを目的とする。
研究方法
指定医療機関での通常業務で作成される診療記録中の情報等のうち氏名等の個人が特定されるものを除いた情報及び基本データ確認シートから得られた情報を、開発したデータベース・システムを用いて収集、管理、分析する。また、センター病院において治療プログラムを開発し、その効果を心理学、神経心理学、脳機能画像等、多角的な視点から検証する。
結果と考察
入院処遇では、平成17年7月15日から平成21年7月15日の4年間に調査に協力の得られた11の指定入院医療機関に入院し、登録された592例(全入院処遇者の約67%)について解析を行い、通院処遇では同じ期間の106の指定通院医療機関に通院し、登録された267例(全通院対象者の約45%)について解析を行った。対象者は統合失調症が大多数を占めるが、慢性の経過を辿っている者が少なくないことが分かった。さらに、物質使用障害や知的障害の診断を有する者が、治療および処遇の上で多くの課題を残した。通院処遇期間中の問題行動が報告された者は、全体の44%を占め、問題行動別の類型では、"医療への不遵守"、"暴力行動"、"アルコール・薬物関連問題"が目立った。脳機能画像を用いた研究では、暴力をともなう統合失調症患者、暴力をともなわない統合失調症患者、健常者を対象に、全脳における白質神経の構造を調べた結果、統合失調症患者に眼窩前頭前皮質内側部の障害が併存した場合、暴力行動をとるリスクが高まる可能性が示唆された。治療プログラムに関する研究では、医療観察法の統合失調症男性患者の攻撃性を変化させるためにターゲットとする要因が"衝動性"と"怒りを外に向ける傾向"であり、そのためには、"問題解決力"、"共感性"、"怒りの制御"を高める心理療法的介入が必要であるとの予備的結果が得られた。
結論
本研究により、医療観察法の制度上の課題が客観的に明らかとなり、他害行為を行う精神障害の病態解明を進めることで、他害行為を防止するための治療プログラムが開発され、それが関係機関に普及されることによって、医療観察法制度の専門的医療が向上される可能性が示唆された。
公開日・更新日
公開日
2010-08-31
更新日
-