脳脊髄液減少症の診断・治療の確立に関する研究

文献情報

文献番号
200935021A
報告書区分
総括
研究課題名
脳脊髄液減少症の診断・治療の確立に関する研究
課題番号
H19-こころ・一般-022
研究年度
平成21(2009)年度
研究代表者(所属機関)
嘉山 孝正(山形大学医学部附属病院 脳神経外科)
研究分担者(所属機関)
  • 三國 信啓(京都大学医学部附属病院 脳神経外科)
  • 吉峰 俊樹(大阪大学医学部附属病院 脳神経外科)
  • 高安 正和(愛知医科大学病院 脳神経外科)
  • 宇川 義一(福島県立医科大学附属病院 神経内科)
  • 馬場 久敏(福井大学医学部附属病院 整形外科)
  • 有賀 徹(昭和大学医学部附属病院 救急医学講座)
  • 喜多村 孝幸(日本医科大学附属病院 脳神経外科)
  • 深尾 彰(山形大学大学院医学系研究科 公衆衛生・予防医学講座)
  • 細矢 貴亮(山形大学医学部附属病院 放射線診断科)
  • 畑澤 順(大阪大学医学部 生体情報医学講座)
  • 篠永 正道(国際医療福祉大学熱海病院 脳神経外科)
  • 佐藤 慎哉(山形大学医学部附属病院 脳神経外科)
  • 西尾 実(名古屋市立大学医学部附属病院 脳神経外科)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 こころの健康科学研究
研究開始年度
平成19(2007)年度
研究終了予定年度
平成21(2009)年度
研究費
25,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
 本研究は、(1)まず文献的考察から脳脊髄液減少症とされた臨床概念を検証し、その臨床像を規定する。(2)近年発達してきたMRI画像所見と脳脊髄液減少症のこれまで髄液漏の根拠とされていた画像診断所見の疾患特異性、髄液漏と症状の因果関係を検討することによって、脳脊髄液減少症の科学的根拠に基づく診断基準を作成、新たな診断基準による本症の原因疾患別患者割合、さらに特に問題となっている「むち打ち症患者の中で脳脊髄液減少症患者の占める頻度の把握」、不確実な診断・治療による合併症発生の回避を目的としている。
研究方法
 (1)まず本症の診断に関する文献レビューを行い、臨床像を検討し、診断プロトコールを作成する。(2)次に、作成した新たな診断プロトコールによる前方視的解析を行い、診断基準を確立する。(3)その後、新たな診断基準による原因疾患別患者割合と治療法の検討をおこない、診療ガイドラインを作成する。
結果と考察
 平成21年度は、前年の2倍の48例の登録が得られ、平成22年2月末現在72例が登録されている。登録症例70例の段階での登録症例のプロフィールをまとめると、起立性頭痛を訴えて受診し本研究にご協力いただいた患者さんの内、約50%は交通外傷の既往があった。また25%は特に誘因が無かった。発症から受診までの期間は数日から20年と極めて幅広い。体位変換による頭痛の変化は、概ね5?15分以内生ずるものが多いようであるが、2時間以上の場合もあった。原因別に頭痛の性質やその他の症状の出現割合を検討したが、原因により異なる可能性が示唆された。これらのデータは、あくまで起立性頭痛を主訴に登録された患者さんに関する集計であり、髄液漏れが確認されているわけではないことには注意が必要である。今後、登録症例が100例に達した時点で、各種検査所見との比較検討を行い、髄液漏が確認された症例を集計して初めて脳脊髄液減少症の病態を知ることが可能となる。
結論
 脳脊髄液減少症は、「緊急に実態を把握し対策を講ずべき疾患」であり、臨床研究完遂のため、平成22年度厚生労働科学研究費補助金への新規申請を行った。今後、新規の研究経費が認められれば、臨床研究の継続が可能となり、新規申請した研究期間内には、目的の成果を得られることが期待される。

公開日・更新日

公開日
2010-06-15
更新日
-

文献情報

文献番号
200935021B
報告書区分
総合
研究課題名
脳脊髄液減少症の診断・治療の確立に関する研究
課題番号
H19-こころ・一般-022
研究年度
平成21(2009)年度
研究代表者(所属機関)
嘉山 孝正(山形大学医学部附属病院 脳神経外科)
研究分担者(所属機関)
  • 三國 信啓(京都大学医学部附属病院 脳神経外科)
  • 吉峰 俊樹(大阪大学医学部附属病院 脳神経外科)
  • 高安 正和(愛知医科大学病院 脳神経外科)
  • 宇川 義一(福島県立医科大学附属病院 神経内科)
  • 馬場 久敏(福井大学医学部附属病院 整形外科)
  • 有賀 徹(昭和大学医学部附属病院 救急医学講座)
  • 喜多村 孝幸(日本医科大学附属病院 脳神経外科)
  • 深尾 彰(山形大学大学院医学系研究科 公衆衛生・予防医学講座)
  • 細矢 貴亮(山形大学医学部附属病院 放射線診断科)
  • 畑澤 順(大阪大学医学部 生体情報医学講座)
  • 篠永 正道(国際医療福祉大学熱海病院 脳神経外科)
  • 佐藤 慎哉(山形大学医学部附属病院 脳神経外科)
  • 西尾 実(名古屋市立大学医学部附属病院 脳神経外科)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 こころの健康科学研究
研究開始年度
平成19(2007)年度
研究終了予定年度
平成21(2009)年度
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
 脳脊髄液減少症(低髄圧症候群)は、50年以上も前に提唱された疾患であるが、未だ科学的な診断基準がなく、交通事故の後遺障害との関係が法廷で争われるなど、社会問題化している。その大きな理由は、医師の間での診断基準が科学的でなく、独自の診断基準を使っているためである。本研究は、脳脊髄液減少症の科学的根拠に基づく診断基準を作成、新たな診断基準による本症の原因疾患別患者割合の把握と不確実な診断・治療による合併症発生の回避を目的としている。
研究方法
(1)まず本症の診断に関する文献レビューを行い、臨床像を検討し、診断プロトコールを作成する。(2)次に、作成した新たな診断プロトコールによる前方視的解析を行い、診断基準を確立する。
(3)その後、新たな診断基準による原因疾患別患者割合と治療法の検討をおこない、診療ガイドラインを作成する。
結果と考察
(1)平成19年度に文献検索の結果をもとに、臨床研究のためのプロトコールを作成した。(2)各研究者所属施設の倫理委員会の審議を経て症例登録を開始、第一例が平成20年5月に登録され、現在まで72例が登録されている(平成22年2月末現在)。今後、登録症例100例の段階で、途中解析を行い最終的な登録症例数も含めた研究計画の見直しを行う予定である。
 当初の計画に比して研究の進行が遅れた主たる理由は、(1)臨床研究プロトコールの倫理委員会承認に時間を要したこと、(2)病態の本質を検討するため、登録対象を撹乱因子の少ない未治療例に限定したことなどがあげられる。これらの問題点に関して、種々の登録症例増加対策が功を奏し、登録数は確実に増加している。今後このペースで登録症例が確保できれば、2年余で当初の目標を達成できるものと考えられ、平成22年度厚生労働科学研究費補助金への新規申請を行った。
結論
 脳脊髄液減少症に関して、平成16年末には、患者やその支援者等が保険適用を求める約10万人の署名を厚生労働省に提出、また47都道府県全ての議会で病態解明・研究の推進を求める決議がなされ、本年度も国に対して研究の進捗状況に関する複数回の国会質問がなされている。このように、脳脊髄液減少症は「緊急に実態を把握し対策を講ずべき神経・筋疾患」である。従って、その病態を解明し、診断・治療法を確立することは直接的にも、間接的にも社会に大きく貢献できることが期待される。

公開日・更新日

公開日
2010-06-15
更新日
-

行政効果報告

文献番号
200935021C

成果

専門的・学術的観点からの成果
 過去に脳脊髄液減少症とされた臨床概念を検証し、その臨床像を規定、さらに髄液漏の根拠とされていた画像診断所見の疾患特異性、髄液漏と症状の因果関係を検討することによって、脳脊髄液減少症の科学的根拠に基づく診断が可能となる。
臨床的観点からの成果
 これまでに得られている知見だけでは、種々の疾病が脳脊髄液減少症とされるものに含まれている可能性があり、現在、過剰医療や見逃し医療が行われている可能性がある。現在の混乱の多くは、”いわゆる「むち打ち症」の不定愁訴がほとんど本病態と考える医師”と”全く「むち打ち症」の中には本疾患は無いと考える医師”が存在し、科学的根拠によらず自説を曲げないことにある。従って本研究の成果は、これらの混乱を科学的に解明し、過剰医療や見逃し医療を回避できることから、臨床的意義は大である。
ガイドライン等の開発
 本研究は、基本診療科である日本脳神経外科学会、日本整形外科学会、本症に関連のある日本頭痛学会、日本神経外傷学会、日本脊椎脊髄病学会、日本脊髄障害医学会から正式に研究者を推薦いただき、更に診断に関連のある放射線核医学及び神経放射線診断医学の専門家、統計解析担当として公衆衛生学の専門家を加えた研究班で行われている。そのため、策定されるガイドラインは、これまで公表されてきたものとは異なり「学会間の垣根を取り払い、誰がみても納得できる診療指針」となることが期待される。
その他行政的観点からの成果
 脳脊髄液減少症(低髄圧症候群)は、50年以上も前に提唱された疾患であるが、近年、本症が頭頸部外傷後に続発すると報告されたことに端を発し、あたかも「むち打ち症」の患者の全てが脳脊髄液減少症であるかのごとく誤解され、交通事故の後遺障害として法廷で争われるなど、社会問題化している。このように、脳脊髄液減少症は「緊急に実態を把握し対策を講ずべき神経・筋疾患」である。従って、その病態を解明し、診断・治療法を確立することは直接的にも、間接的にも社会に大きく貢献することが期待される。
その他のインパクト
 近年、我が国では「脳脊髄液減少症」と交通外傷の因果関係をめぐり法廷で数多く争われるなど種々の社会問題を起こし、その臨床研究の必要性が国会でも取り上げられてきた。脳脊髄液減少症に関して、平成16年末には、患者やその支援者等が保険適用を求める約10万人の署名を厚生労働省に提出、また47都道府県全ての議会で病態解明・研究の推進を求める決議がなされ、本年度も国に対して研究の進捗状況に関する複数回の国会質問がなされている。

発表件数

原著論文(和文)
20件
原著論文(英文等)
1件
その他論文(和文)
20件
その他論文(英文等)
0件
学会発表(国内学会)
12件
学会発表(国際学会等)
0件
その他成果(特許の出願)
0件
「出願」「取得」計0件
その他成果(特許の取得)
0件
その他成果(施策への反映)
0件
その他成果(普及・啓発活動)
1件
日本脳神経外科学会総会にてシンポジウム開催

特許

主な原著論文20編(論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限る)

論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限ります。

原著論文1
佐藤慎哉,嘉山孝正
脳脊髄液減少症の画像診断と臨床.
臨床放射線 , 54 (6) , 726-735  (2009)
原著論文2
篠永正道
RI脳槽シンチグラフィーで髄液漏出を呈した交通外傷による外傷後症候群の症状とMRI所見の検討.
脊椎脊髄ジャーナル , 22 (4) , 369-377  (2009)
原著論文3
喜多村孝幸,戸田茂樹,寺本明
脳脊髄液減少症の診断と治療.
日本医師会雑誌 , 136 (10) , 2014-2016  (2008)
原著論文4
Nishio M,Yamada
Spontaneous leakage of cerebrospinal fluid causing orthostatic headache: Diagnosis and treatment based on radionuclide cisternography.
Nagoya Medical Journal , 49 (1) , 61-70  (2007)
原著論文5
馬場久敏
外傷性頸部症候群の病態の多様性.
脊椎脊髄 , 20 (4) , 14-15  (2007)
原著論文6
土肥謙二,有賀 徹,阿部俊昭,他
頭部外傷に伴う低髄液圧症候群」に関するアンケート調査結果について.
神経外傷 , 30 , 14-20  (2007)
原著論文7
篠永正道
低髄液圧症候群.
神経内科 , 66 , 287-292  (2007)

公開日・更新日

公開日
2015-05-29
更新日
2017-05-23