精神障害にも対応した地域包括ケアシステムの構築を推進する政策研究

文献情報

文献番号
202317044A
報告書区分
総括
研究課題名
精神障害にも対応した地域包括ケアシステムの構築を推進する政策研究
課題番号
22GC2003
研究年度
令和5(2023)年度
研究代表者(所属機関)
藤井 千代(国立研究開発法人 国立精神・神経医療研究センター 精神保健研究所)
研究分担者(所属機関)
  • 野口 正行(岡山県精神保健福祉センター)
  • 来住 由樹(岡山県精神科医療センター)
  • 椎名 明大(千葉大学社会精神保健教育研究センター)
  • 佐竹 直子(国立研究開発法人国立国際医療研究センター 国府台病院)
  • 杉山 直也(国立研究開発法人 国立精神・神経医療研究センター 精神保健研究所地域精神保健・法制度研究部)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 障害者政策総合研究
研究開始年度
令和4(2022)年度
研究終了予定年度
令和6(2024)年度
研究費
29,308,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
本研究の目的は、精神障害にも対応した地域包括ケアシステムの構築を推進するうえで必要な精神保健医療福祉サービスのあり方について、エビデンスに基づく具体的かつ実現可能な政策提言を行うことである。
研究方法
精神障害にも対応した地域包括ケアシステム(「にも包括」)の構築推進に関する課題について、以下の分担班で課題の検討状況を共有しつつ、調査研究を実施した。
自治体における包括的ケアの推進に関する研究(野口正行)
地域における精神科医療機関の役割に関する研究(来住由樹)
地域における危機介入のあり方に関する研究(椎名明大)
総合病院精神科の機能に関する研究(佐竹直子)
精神科救急医療体制に関する研究(杉山直也)
精神障害者の権利擁護に関する研究(藤井千代)
結果と考察
自治体における包括的ケアの推進に関する研究では、市区町村における相談支援体制および精神保健福祉相談員に求められる役割等に関する調査の分析を行った。その結果を踏まえて、精神保健福祉相談員養成に係る講習会で習得すべき内容を抽出した。市区町村の精神保健相談支援体制については、各自治体の支援体制やリソースの違いを考慮に入れた相談支援体制の類型について検討を行った。これらの研究成果については、厚労省が実施した「市町村における精神保健に係る相談支援体制整備の推進に関する検討チーム」に資料として提出した。地域における精神科医療機関の役割に関する研究では、「にも包括」に貢献するための入院機能について検討した。入院早期から退院後の地域生活を考慮して、多職種、多機関連携による包括ケアを提供している精神科病院2機関について、入院患者の属性、入院中および退院後のケア内容、退院後の1年の転帰を検討した。1医療機関については、5年後転帰について調査を行い、退院後の包括ケアにより、入退院を繰り返しつつも徐々に地域定着が進むことが示された。精神科病棟において、多職種による包括的ケアの実施が可能となるようスタッフの加配を行い、退院後も地域連携を重視した包括的ケアを実施することにより、退院後の地域定着が促進される可能性が示唆された。地域における危機介入のあり方に関する研究では、措置入院制度運用における精神保健指定医の役割に着目し、昨年度実施した措置診察研修を改訂し、研修会を実施した。事前学習と参加型研修の組み合わせによる措置診察の研修パッケージは、受講者にはなじみやすく、また高いモチベーションを持って受け入れられることが期待できると示唆された。総合病院精神科(GHP)の機能に関する研究では、再企図防止に果たすGHPの役割として、精神科医による精神症状の評価、治療介入とソーシャルワーカーによる受療調整や、地域サービスの紹介が重要と考えられた。周産期メンタルヘルスにおいては、ハイリスクアプローチの視点では、緊急対応、ポピュレーションアプローチの視点では、リエゾン、コンサルテーション、スクリーニングで陽性になった場合の対応、地域での教育活動などのGHPが果たす役割が明らかになった。意思決定支援においては、様々な領域において、多職種連携チームにより意思決定支援が行われている実態が明らかとなった。精神科救急医療体制に関する研究では、精神科救急・急性期医療入院料(高規格病棟)を算定する全国の精神科医療機関を対象として、新規に高規格病棟に入院する患者の属性や状態像、高規格病棟の必要性等に関する調査を実施した。2,064名分のデータを解析し、高規格病棟の必要性を決定する上では、診断名よりも、患者の臨床プロフィール(状態像)や医学的管理(ケア目的)に関する項目である可能性が判明した。また、精神科救急医療体制整備事業の運用状況に関してのモニタリングを実施し、自治体の精神科救急担当者を対象とした研修会を実施した。精神障害者の権利擁護に関する研究では、精神医療審査会に関する調査において、退院や処遇改善請求は年々増加し、2015(平成27)年以降は、書類審査の増加率を上回っていること、代理人弁護士による請求の増加もあって、請求棄却以外の裁定結果も漸増傾向にあることが示された。精神科アドボケイトに関する課題については、法改正により新設された入院者訪問支援事業の実務を担う、訪問支援員養成研修を完成させた。各自治体が活用できるよう、講義部分は動画資料を作成し、演習プログラムと演習に使用する教材を作成し、実際に研修を実施した。また、事務局運営に関する研修資料を作成し、厚労省の実施する研修で活用された。
結論
研究はほぼ計画通り進行しており、「にも包括」構築のための提言につなげることができると思われる。

公開日・更新日

公開日
2024-08-02
更新日
-

研究報告書(PDF)

研究成果の刊行に関する一覧表
倫理審査等報告書の写し

公開日・更新日

公開日
2024-08-02
更新日
-

研究報告書(紙媒体)

収支報告書

文献番号
202317044Z