発達障害者の新しい診断・治療法の開発に関する研究

文献情報

文献番号
200935006A
報告書区分
総括
研究課題名
発達障害者の新しい診断・治療法の開発に関する研究
課題番号
H19-こころ・一般-006
研究年度
平成21(2009)年度
研究代表者(所属機関)
奥山 眞紀子(国立成育医療センター こころの診療部)
研究分担者(所属機関)
  • 神尾 陽子(国立精神・神経センター 精神保健研究所 児童・思春期精神保健部)
  • 加我 牧子(国立精神・神経センター 精神保健研究所 )
  • 杉山 登志郎(あいち小児保健医療総合センター)
  • 山下 裕史朗(久留米大学医学部)
  • 田中 康雄(北海道大学大学院教育学研究院附属子ども発達臨床研究センター)
  • 小枝 達也(鳥取大学地域学部)
  • 井上 雅彦(鳥取大学大学院 医学系研究科 臨床心理学講座)
  • 辻井 正次(中京大学 社会学部)
  • 泉 真由子(横浜国立大学 教育人間科学部)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 こころの健康科学研究
研究開始年度
平成19(2007)年度
研究終了予定年度
平成21(2009)年度
研究費
19,400,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
対応する専門家が非常に少ない中、非専門家でも発達障害者を適切な時期に診断・支援できる診断・治療・支援法の確立を目的として研究を行った。
研究方法
非専門医への発達障害者の支援目的診断ツールとして作成した精神障害者保健福祉手帳改訂案を対象医30名に記入依頼し、一致度を確認し問題点を明確化。判定側の精神保健福祉センター長会と検討し、最終案を確定して記入要領案作成。M-CHAT施行児1457名のコホートで有効性を検討、大学生273名、PDD59名、他の精神障害者12名にSRS-Aを施行し信頼性、妥当性を検討。早期療育4種類で幼児50名に前後での客観的評価。持続遂行課題時に、事象関連電位測定をADHD12名、PDD8名に、NIRSをMPH投与前後のADHD児20名に施行。CogHealthRを小学生144名と夏季治療プログラム参加者21名に施行し有用性検討。ADHD治療の冊子作成。平成19年度に小1で読字障害スクリーニングした対象(小3)68名に検査して介入効果と見落としの有無を判定。家庭での読字障害PC治療の効果判定。幼児期発達検査施行383名コホートから書字習得予測因子を分析。新しいPDDへのSSTプログラム2種を作成施行し効果判定。教師用e-learning参加9名の効果を統制群7名と比較。
結果と考察
手帳改訂案の有用性と記入上の問題が明確化。最終改定案と記入要領案作成。M-CHATの有効性、SRS―Aの信頼性と妥当性が示され有用性示唆。早期療育では言語発達を認めるがPDD症状は改善は少。長期的効果判定が必要。持続課題遂行時の事象関連電位でADHDとPDDの相違が明確化、NIRSで投薬効果の予測可能性を提示。臨床応用への検討が必要。CogHealthRの有効性からADHD治療効果判定に有効。冊子「ADHDの総合的治療」作成。読字障害スクリーニングの見逃しはなく介入効果あり。スクリーニングが確立された。普及の必要あり。音韻認識と視知覚認識がひらがな書字に影響する可能性あり、引き続く検討必要。SSTプログラムは効果あり。e-learningは教師の自己肯定感をあげ、子どもの問題行動改善を認めた。いずれも普及が必要。
結論
M-CHAT、SRS-Aの有用性が確認でき、早期療育の予備的調査で効果がある程度示せた。持続遂行課題時の事象関連電位でADHDとPDDの鑑別、NIRSでMPHの効果予測の可能性が提示された。CogHealthRの有用性が提示され、ADHD総合的治療が提示された。読字障害スクリーニングが確立された。有効な二つのSSTプログラムが開発された。教師用e-learningの有効性が示せた。

公開日・更新日

公開日
2010-06-15
更新日
-

文献情報

文献番号
200935006B
報告書区分
総合
研究課題名
発達障害者の新しい診断・治療法の開発に関する研究
課題番号
H19-こころ・一般-006
研究年度
平成21(2009)年度
研究代表者(所属機関)
奥山 眞紀子(国立成育医療センター こころの診療部)
研究分担者(所属機関)
  • 神尾 陽子(国立精神・神経センター 精神保健研究所)
  • 加我 牧子(国立精神・神経センター 精神保健研究所)
  • 杉山 登志郎(あいち小児保健医療総合センター)
  • 山下 裕史朗(久留米大学 医学部)
  • 田中 康雄(北海道大学大学院 教育学研究院附属子ども発達臨床研究センター)
  • 小枝 達也(鳥取大学 地域学部)
  • 井上 雅彦(鳥取大学大学院 医学系研究科)
  • 辻井 正次(中京大学 社会学部)
  • 泉 真由子(横浜国立大学 教育人間学部)
  • 宮尾 益知(国立成育医療センター こころの診療部)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 こころの健康科学研究
研究開始年度
平成19(2007)年度
研究終了予定年度
平成21(2009)年度
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
専門家が少ない中、非専門家でも発達障害者を適切な時期に診断・支援できる診断・治療・支援法の確立を目的とした。
研究方法
非専門医でも発達障害者への支援目的診断が行えるツールとして精神障害者保健福祉手帳改訂案の作成を検討。PDDの各年齢で使えるスクリーニングツールの翻訳、信頼性・妥当性を検討。PDDの4種類の早期療育前後での客観的な効果判定。ADHDの持続遂行課題の特徴と事象関連電位、NIRSの応用を検討。ADHDの夏季治療プログラム(STP)と対象児を検討し、各種検査の有用性を検討。ADHD児家族と医療者に大型調査し、各年齢での治療の実態と期待を検討。小1での読字障害スクリーニングと介入法を開発し2学年に実行してスクリーニングの妥当性、介入の有効性、見逃しを検討。書字障害へのPC治療を開発して施行し、その有効性を検討し、e-learning立ち上げのため家庭での学習効果を確認。就学前の発達検査と就学後の書字能力の関係を検討。5種類のPDD用SSTプログラムを開発し試行して効果判定。教師の研修用e-learningを立ち上げその効果を判定。
結果と考察
精神障害者保健福祉手帳改訂案と記入要領を作成。有効な超早期から成人までのPDDスクリーニングツール(M-CHAT、SRS-P、 SRS、SRS-A)を提示。各種早期療育の客観的評価を始めて行い、言語発達に有効。ADHDのスクリーニングや治療効果判定のツールとしてSDQ、Brown ADD Scale、IRS、DN-CAS、CogHealthRの有効性を提示。持続遂行課題時の事象関連電位とNIRS測定でPDDとの鑑別およびMPH効果予測に有効な可能性を提示。生涯を通じたADHD治療として冊子「ADHDの総合的治療」が完成。読字障害スクリーニング法を確立。PCを用いた読字障害治療が開発され家庭での有用性を提示。就学前の一部の認知能力と就学後の書字能力の関連を提示。5種類の新しい有効なPDD用SSTプログラムを開発。効果が示された教師用e-learningを提示。本研究で提示された有効なツールやスクリーニング法や治療法、SSTプログラムおよびe-learning等を普及する必要性あり。ADHDの持続遂行課題を用いた診断法は臨床応用への検討が必要。早期療育の効果判定や書字障害のコホートは今後も引き続き検討が必要。
結論
ADHDおよび各年台のPDD診断補助ツールが提示され、読字障害スクリーニングが確立され、ADHDの客観的検査が開発された。始めて療育の効果判定がなされた。新しい読字障害治療法、SSTプログラム、教師へのe-learningが確立できた。

公開日・更新日

公開日
2010-06-15
更新日
-

行政効果報告

文献番号
200935006C

成果

専門的・学術的観点からの成果
海外で開発されたPDDスクリーニングツールを日本語訳し、信頼性・妥当性を示した。持続遂行課題時の事象関連電位測定でN200振幅の減衰がADHDに特徴的に優位でPDDおよび定型発達では認めないことを明らかにした。また、ADHD児におけるMPH投与前後の脳血流の変化より、多動症状の改善が著しいケース群(good-responders群)において内側前頭葉皮質に相当する部位のOxy-Hb濃度が投与前に比して投与2週間後において有意に上昇していることを発見した。
臨床的観点からの成果
非専門医でも発達障害への支援目的で診断が行えるツールを提示、各年齢層のPDDの有効なスクリーニングツールを提示、早期療育効果を始めて客観的に判定、新しいSSTプログラム5種を開発し効果を提示。ADHDへは、複数の検査法の妥当性・信頼性を提示、生物学的検査として持続遂行課題時の事象関連電位はPDDとの鑑別へ、NIRSはMPHの効果判定への有効性提示。ADHD総合治療冊子提示。読字障害スクリーニング法確立。PCを用いた読字障害超療法提示。教師へのe-learning有効性を提示。
ガイドライン等の開発
発達障害を診断しやすくするための精神障害者保健福祉手帳改訂案と記入要項案を作成した。各年齢層へのPDDスクリーニングツール(M-CHAT、SRS-P、 SRS、SRS‐A)提示。「ADHDの総合的治療」冊子作成。ディスレキシアスクリーニング法確立。
その他行政的観点からの成果
精神障害者保健福祉手帳改訂案は行政的に使用可能なところまで詰めて提示した。
その他のインパクト
特になし

発表件数

原著論文(和文)
48件
原著論文(英文等)
12件
その他論文(和文)
108件
その他論文(英文等)
18件
学会発表(国内学会)
46件
学会発表(国際学会等)
5件
その他成果(特許の出願)
0件
「出願」「取得」計0件
その他成果(特許の取得)
0件
その他成果(施策への反映)
0件
その他成果(普及・啓発活動)
0件

特許

主な原著論文20編(論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限る)

論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限ります。

原著論文1
辻井弘美 稲田尚子 神尾陽子
高機能自閉症スペクトラム幼児の早期診断についての実態調査-小児科医へのアンケート調査結果から-
精神保健研究 , 21 , 83-93  (2008)
原著論文2
Inada N Kamio Y Koyama T
Developmentalchronology of preverbal social behaviors in infancy using the M-CHAT: Baseline for early detection of atypical social development
Research in Autism Spectrum Disorders  (2010)
原著論文3
神尾陽子 辻井弘美 稲田尚子 他
対人応答性尺度 (Social Responsiveness Scale) 日本語版の妥当性検証:広汎性発達障害日本自閉症協会評定尺度 (PDD-Autism Society Japan Rating Scales: PARS) との比較
精神医学 , 51 , 1101-1109  (2009)
原著論文4
田中康雄
AD/HD 50年の流れと将来の展望
児童青年精神医学とその近接領域(特別記念号) , 50 , 137-144  (2009)
原著論文5
古谷奈央 井上雅彦 岡村寿代
特別支援教育におけるe-learning研修に関する教師の意識調査-問題行動への対応を中心として-
発達心理臨床研究 , 15 , 65-74  (2009)

公開日・更新日

公開日
2015-05-29
更新日
2017-05-23