抗リウマチ薬の時間薬物療法の確立

文献情報

文献番号
200934047A
報告書区分
総括
研究課題名
抗リウマチ薬の時間薬物療法の確立
課題番号
H20-免疫・若手-027
研究年度
平成21(2009)年度
研究代表者(所属機関)
藤 秀人(長崎大学 病院)
研究分担者(所属機関)
  • 井田 弘明(長崎大学 病院 )
  • 家入 一郎(九州大学大学院 薬学研究院)
  • 小柳 悟(九州大学大学院 薬学研究院)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 免疫アレルギー疾患等予防・治療研究
研究開始年度
平成20(2008)年度
研究終了予定年度
平成22(2010)年度
研究費
9,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
本研究では、RA治療における第一選択薬であるMTXに着目し、MTXの投薬時刻の違いによる治療効果への影響について臨床試験を実施した。また、RAモデル動物を対象にRA発症前後における種々の生体リズムの解析を試みた。
研究方法
臨床研究では、年齢20歳以上でRAと診断されDAS28が3.2以上であり、現在RAに対する治療にてMTXを投薬されている患者を被験者とした。MTXは、被験者が投薬されていた既存の投与方法を基準とし、1週間における総投与量及び投薬回数は変更せず、時間治療型MTX投薬レジメンでは、1日1回寝る前投薬とし、時間治療開始後3ヶ月間評価した。主要評価項目の有効性にはEULAR改善基準及びDAS28による疾患活動性及びMHAQを、有害事象については白血球減少を評価した。また、動物実験では、MRL/lprマウスを対象に任意の6時点に脾臓または血漿を採取し、種々の生体成分を測定した。また、形成された概日リズムの機序を明らかにするために、各種サイトカインmRNA発現量測定およびルシフェラーゼレポーターアッセイなどを行った。
結果と考察
臨床研究では、時間治療開始時と比較し時間治療開始後3ヶ月で有意にDAS28は減少した。MTXを寝る前に投薬する時間治療によって、臨床的寛解に17名中4名 (23.5%) が到達し、有効性が17例中7例 (41.2%)で認められた。機能障害の指標であるMHAQも3ヶ月間の時間治療によって顕著に機能障害が改善された。一方、試験期間中、重篤な副作用は認められなかった。動物実験では、MRL/lprマウスにおいてRA発症後、炎症の指標であるSAAや血中TNF-α濃度は明期に増加することが明らかとなった。また、TNF-αが特定の時間帯にピークを示す現象には、RA症状の進行と共に発現量の上昇および概日リズムの形成を示したLT-αとLT-βが関与している可能性が示唆された。
結論
臨床研究では、投与量や投薬回数を変更することなく、MTXの服用タイミングを寝る前に変更することでMTXの薬物治療は、安全かつ効果的にRA治療を実践できる可能性が示唆された。また、動物実験では、炎症性サイトカインの明瞭な概日リズムは、RA発症前では認められずRA発症後に発現したことから、炎症性サイトカインの概日リズムを制御する因子の同定は新たなRA療法を考える上で非常に重要であると考えられる。本研究では、TNF-α発現の抑制因子であるLT-αとLT-βの概日リズムがTNF-αの概日リズムの形成に関与している可能性が明らかとなった。

公開日・更新日

公開日
2010-05-19
更新日
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