効果的な集団精神療法の施行と普及および体制構築に資する研究

文献情報

文献番号
202317003A
報告書区分
総括
研究課題名
効果的な集団精神療法の施行と普及および体制構築に資する研究
課題番号
21GC1015
研究年度
令和5(2023)年度
研究代表者(所属機関)
藤澤 大介(慶應義塾大学 医学部)
研究分担者(所属機関)
-
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 障害者政策総合研究
研究開始年度
令和3(2021)年度
研究終了予定年度
令和5(2023)年度
研究費
7,477,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究報告書(PDF)

研究成果の刊行に関する一覧表
倫理審査等報告書の写し

公開日・更新日

公開日
2024-06-28
更新日
-

研究報告書(紙媒体)

文献情報

文献番号
202317003B
報告書区分
総合
研究課題名
効果的な集団精神療法の施行と普及および体制構築に資する研究
課題番号
21GC1015
研究年度
令和5(2023)年度
研究代表者(所属機関)
藤澤 大介(慶應義塾大学 医学部)
研究分担者(所属機関)
  • 菊地 俊暁(慶應義塾大学 医学部)
  • 中川 敦夫(聖マリアンナ医科大学)
  • 中島 美鈴(独立行政法人国立病院機構肥前精神医療センター 臨床研究部)
  • 岡田 佳詠(国際医療福祉大学成田看護学部)
  • 大嶋 伸雄(大阪河﨑リハビリテーション大学 大学院 リハビリテーション研究科)
  • 高橋 章郎(東京都立大学 人間健康科学研究科 作業療法科学域)
  • 岡島 美朗(自治医科大学 総合医学Ⅰ)
  • 佐藤 泰憲(慶應義塾大学 医学部)
  • 吉永 尚紀(宮崎大学医学部看護学科)
  • 耕野 敏樹(地方独立行政法人 岡山県精神科医療センター 医療部)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 障害者政策総合研究
研究開始年度
令和3(2021)年度
研究終了予定年度
令和5(2023)年度
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
集団精神療法は、対人関係の相互作用を用いて、精神・心理的問題の改善を図る治療法である。診療報酬の対象となっている集団精神療法には、様々な対象(診断や病態)、形態(時間・回数・提供方法など)、内容(認知行動療法、精神力動的精神療法など)が混在しており、その内容、エビデンスレベル、質は不明確である。本研究班では、精神医療における集団精神療法の位置づけを整理し、国内の実施実態と課題を明らかにし、エビデンスに基づいた介入プログラムの開発と効果検証を行い、普及のための研修プログラムの開発と実施可能性およびに効果の検証を行う。具体的には、以下の柱で研究を進めることとした。
1.集団精神療法のエビデンスの整理
2.集団精神療法の実態調査
3.研修と質担保の方法論の確立
4.集団認知行動療法のプログラムの作成と実証研究
研究方法
1.集団精神療法のエビデンスの整理:Common mental illness(うつ病、不安症、統合失調症、物質依存・行動嗜癖)の集団精神療法に関する国内外の研究知見を概観する。
2.集団精神療法の実態調査:全国の精神科医療機関、精神保健福祉センター、保健所を対象に、集団精神療法の実施状況や課題の調査を行う。並行して、海外情報を、専門家へのヒアリングを通じて収集する。
3.研修と質担保の方法論の確立:集団精神療法の質担保のために施行者に望まれる要素を明確化し、その評価法を開発し、研修(スーパービジョン)の方法を確立する。
4.集団認知行動療法のプログラムの作成と実証研究:集団認知行動療法のマニュアルを作成し、実証研究を行う。
結果と考察
1. 集団精神療法のエビデンスの整理:
①うつ病:コスト面から閾値下~中等症うつ病に対する初期治療として低強度治療の1つとして推奨されているもの、高齢者(60歳以上)の初期治療として、通常のケアに追加または単独で集団認知行動療法または回想法を推奨するものがあった。
②不安症:認知行動療法(曝露療法など関連する技法を含む)が推奨され、集団形式での実施が治療選択肢の一つに位置づけられていた。
③統合失調症:薬物療法などと複合しながら、患者のニーズに合わせて利用することが推奨されていた。
④行動嗜癖、物質使用障害:効果的な集団療法であるためには、対象者集団の治療ステージや重症度など一連の治療ステージの位置づけを考慮したプログラムが重要であること、また、医療資源の有限性を考慮すれば、集団療法と通常ケアの併用、他の治療や支援との組み合わせを考慮する必要があることが示された。
2.集団精神療法の実態調査:国内の精神科医療機関3734ヶ所、保健行政機関(精神保健福祉センター69ヶ所、保健所591ヶ所)を対象に実施状況や課題に関する調査を行なった。各機関において集団精神療法の対象や内容、コスト算定方法等の実施体制、地域での役割が異なることが明らかになり、集団精神療法の効率的な役割分担のあり方を検討する上での基礎データになると考えられた。
3.研修と質担保の方法論の確立:
①集団精神療法について、国際的な推奨のレビュー、国内アンケート調査結果に基づき、6時間研修とスーパービジョンの2本立てからなる集団認知行動療法の研修プログラムを作成した。多職種の医療従事者を対象にプログラム実施前・後・終了後6ヶ月後に評価を行い、実施者としての知識と実施の自信の向上を認め、実施可能性と効果が実証された。
②集団認知行動療法のスキルを評価する尺度(集団認知行動療法治療者評価尺度を開発し、信頼性と妥当性を実証した。
③マインドフルネス療法の基礎研修プログラム(合計3日間)を開発し、医療従事者を対象に研修を行なった。脱落率0%、プログラム継続率100%と十分な実施可能性が示された
4.集団認知行動療法のプログラムの作成と実証研究:
①米国精神医学会で推奨されているマニュアルを参考に、うつ病の集団認知行動療法プログラムを開発した。実施可能性検証を経て、単施設非盲検ランダム化比較検討試験で有効性を検証した。介入群は、介入プログラム終了時と介入終了6ヶ月後における抑うつ症状の改善、QOLの向上がみられた。また、同プログラムの患者用資材、スタッフ用資材を作成した。
②リカバリー指向認知行動療法(CT-R)の日本語版マニュアルを開発し、訪問看護師を対象とする研修プログラムを開発した。訪問看護師20名を対象に教育プログラム(週1回2時間×1ヶ月のワークショップ+半年間のコンサルテーション)を実施し、プログラム受講後に受講者の自己効力感の向上を認めた。
結論
国内外における各疾患に対する集団精神療法の位置づけ、国内の実態調査から、実施形態と課題が明らかになり、今後の施策への活用が期待される。
開発された各種プログラムは、今後、臨床実践、実施者育成に活用される。

公開日・更新日

公開日
2024-06-26
更新日
-

研究報告書(PDF)

公開日・更新日

公開日
2024-06-28
更新日
-

研究報告書(紙媒体)

行政効果報告

文献番号
202317003C

成果

専門的・学術的観点からの成果
国際ガイドラインのレビューを通じて主要な精神疾患の集団精神療法の位置づけを整理し、国内全精神科医療機関・精神保健福祉センター・保健所を対象とした実態調査を通じて集団精神療法の実態と課題を明らかにした。集団認知行動療法とマインドフルネス認知療法の研修プログラムを開発し、うつ病の集団認知行動療法とリカバリー指向認知療法の検証試験を行った、集団精神療法に関する包括的な研究である。
臨床的観点からの成果
本研究では、うつ病に対する集団認知行動療法プログラム、統合失調症に対するリカバリー指向認知療法プログラムを開発した。両疾患は精神科患者の多くを占めており、その恩恵を受けうる患者層は広いと考えられる。
本研究では集団認知行動療法とマインドフルネス認知療法の実践者を育成するプログラムや質評価尺度が開発しており、集団精神療法の質の担保・向上に資すると考えられる。
ガイドライン等の開発
本研究で開発した集団認知行動療法の実践者養成プログラムは、認知行動療法以外の集団精神療法に共通する要素を含んでおり、プログラムの一部を入れ替えることで、他の集団精神療法の研修にも応用可能である。本研究は集団精神療法の研修の一つのスキームを提供したと言える。
本研究で開発した集団認知行動療法実践者の質評価尺度は、集団認知行動療法の実践者の認定や学習目標基準として活用できる。
その他行政的観点からの成果
国内外のガイドラインを対比し、本邦が目指す方向性を示した点で行政的意義がある。集団精神療法の実態調査は、集団精神療法の実施上の課題と、効率的な役割分担を検討するための基礎データを提供した。
うつ病の集団認知行動療法に関する患者テキストと治療者マニュアルを開発しており、今後、ランダム化比較試験の結果が出れば、国内におけるうつ病の集団認知行動療法の普及と実装に直結する点で行政的意義がある。
その他のインパクト
リカバリー指向認知療法は、重篤なメンタルヘルス状態の人への有用性が海外で実証されており、国内の実施可能性が明らかになれば、統合失調症などの長期入院患者などの社会復帰等に寄与すると考えられる。
マインドフルネス心理療法は、エビデンスの実証があり全国の約20%の施設で実施されているが本邦では研修体制が確立していない。本研究で開発したマインドフルネス認知療法の研修法はその普及に寄与すると考えられる。

発表件数

原著論文(和文)
41件
原著論文(英文等)
42件
その他論文(和文)
7件
その他論文(英文等)
0件
学会発表(国内学会)
94件
学会発表(国際学会等)
9件
その他成果(特許の出願)
0件
その他成果(特許の取得)
0件
その他成果(施策への反映)
0件
その他成果(普及・啓発活動)
7件
一般市民向け書籍:7件

特許

主な原著論文20編(論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限る)

論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限ります。

原著論文1
田島美幸, 藤澤大介, 田村法子, 他
精神科医療機関における集団精神療法の実施状況に関する全国調査
精神療法  (2024)
原著論文2
Nakashima M, Matsunaga M, Otani M, et al.
Development and Preliminary Validation of the Group Cognitive Therapy Scale.
Psychiatry and Clinical Neurosciences Report.  (2023)
https://doi.org/10.1002/pcn5.128

公開日・更新日

公開日
2024-06-26
更新日
-

収支報告書

文献番号
202317003Z