軽度認知障害の人における進行予防と精神心理的支援のための手引き作成と介入研究

文献情報

文献番号
202316003A
報告書区分
総括
研究課題名
軽度認知障害の人における進行予防と精神心理的支援のための手引き作成と介入研究
課題番号
21GB1003
研究年度
令和5(2023)年度
研究代表者(所属機関)
櫻井 孝(国立研究開発法人 国立長寿医療研究センター 研究所)
研究分担者(所属機関)
  • 島田 裕之(国立研究開発法人国立長寿医療研究センター 研究所老年学・社会科学研究センター)
  • 大塚 礼(国立研究開発法人 国立長寿医療研究センター 研究所 老化疫学研究部)
  • 大沢 愛子(国立研究開発法人 国立長寿医療研究センター リハビリテーション科部)
  • 山田 実(筑波大学 人間系)
  • 藤原 佳典(地方独立行政法人東京都健康長寿医療センター 東京都健康長寿医療センター研究所)
  • 清家 理(立命館大学 スポーツ健康科学部)
  • 木下 文恵(名古屋大学 医学部附属病院)
  • 山下 真里(東京都健康長寿医療センター研究所 自立促進と精神保健研究チーム)
  • 鈴木 宏幸(地方独立行政法人東京都健康長寿医療センター(東京都健康長寿医療センター研究所) 社会参加とヘルシーエイジング研究チーム)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 認知症政策研究
研究開始年度
令和3(2021)年度
研究終了予定年度
令和5(2023)年度
研究費
11,432,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
軽度認知障害(MCI)は、認知症のハイリスク群であり、認知症への進行を予防するため、ライフスタイルの改善や精神的支援が必要である。アルツハイマー型認知症の病態修飾薬は開発されたものの、実際は進行遅延のための十分な指導を受けず、置き去りにされているケースがみられる。そこで本研究班は、MCIの効果的な支援方法を確立するために以下の2つの研究を行う。①手引きの作成:MCIの進行予防・心理的支援について文献調査を行い、エビデンスに基づいた手引きを作成する、②手引きを用いた介入研究:MCIの人に対する手引きに沿った指導を12か月間行う介入研究により、手引きによる啓発と支援の実現可能性および介入の効果を明らかにする。
研究方法
本年度前半(4月~8月)は前年度に開始された介入研究を継続した。研究への参加に同意が得られたMCI高齢者38名のうち34名(89.4%)が12か月間(全24セッション)の介入を完遂した。
結果と考察
研究期間中1回以上の教室に参加したもの(Full analyses set:N=37、年齢79.2±4.2歳、男性16名)を対象者とした解析において、主要評価項目であるMoCA-Jの変化量はプラス1.2点(介入前:21.9点、介入後:23.3点)であり、介入前後において統計学的有意な改善を認めた(p=0.007)。外部対照群と傾向スコアマッチングした集団を用いた解析(介入群N=18, 対照群N=18)においても、介入群は外部対照群と比較して有意なMoCA-Jの改善を認めた(P<0.001)。手引きを用いた介入を実施する中で合計99件の質問が参加者や家族、教室を運営した補助スタッフ等から寄せられ、班員で分担して回答を作成した。介入終了後(9月~)はこれらを反映させた手引きの第2版を作成した。
MCIは、認知症の前段階であると考えられ、ライフスタイルの改善や精神的支援による進行予防が必要である。一方、MCI当事者、家族、支援者(地域包括支援センターや医療者)などが参照しやすい形で進行予防のためのエビデンスが体系だってまとめられた前例がなく、MCIの方が十分な指導を受けず、置き去りにされているケースが少なくなかった。本研究が広く普及することで、全国のMCI高齢者の進行予防に大きく寄与すると考えられる。
また、本研究では研究補助員(非専門家)が手引きを活用することで実際にMoCA-Jの点数が改善することを示した。介護予防教室等ではMCI高齢者を適切に指導できるインストラクターは貴重であるが、本研究で作成された手引きを活用することで全国の介護予防教室の質の向上にも寄与できると考えられる。
結論
本研究では、MCI進行予防のための実践的な支援方法を提案すべく、①手引きの作成と②手引きを用いた介入の効果判定を2つの柱として遂行した。3年計画の3年目にあたる本年度は介入研究により手引きを用いたMCI高齢者に対する支援の実現可能性と認知機能に与える効果を検証した。また、蓄積された改訂のポイントをもとに手引きの第2版を完成させた。当事者や家族のリテラシー向上に大きく寄与するとともに、本研究の成果をwebや冊子などの様々な媒体や、全国で実施されている認知症予防教室を通して広く展開することで、MCIの当事者やその支援者に対する効果的な支援が全国的に普及することが期待される。

公開日・更新日

公開日
2024-06-03
更新日
-

研究報告書(PDF)

公開日・更新日

公開日
2024-06-03
更新日
-

研究報告書(紙媒体)

文献情報

文献番号
202316003B
報告書区分
総合
研究課題名
軽度認知障害の人における進行予防と精神心理的支援のための手引き作成と介入研究
課題番号
21GB1003
研究年度
令和5(2023)年度
研究代表者(所属機関)
櫻井 孝(国立研究開発法人 国立長寿医療研究センター 研究所)
研究分担者(所属機関)
  • 島田 裕之(国立研究開発法人国立長寿医療研究センター 研究所老年学・社会科学研究センター)
  • 大塚 礼(国立研究開発法人 国立長寿医療研究センター 研究所 老化疫学研究部)
  • 大沢 愛子(国立研究開発法人 国立長寿医療研究センター リハビリテーション科部)
  • 山田 実(筑波大学 人間系)
  • 藤原 佳典(地方独立行政法人東京都健康長寿医療センター 東京都健康長寿医療センター研究所)
  • 清家 理(立命館大学 スポーツ健康科学部)
  • 木下 文恵(名古屋大学 医学部附属病院)
  • 山下 真里(東京都健康長寿医療センター研究所 自立促進と精神保健研究チーム)
  • 鈴木 宏幸(地方独立行政法人東京都健康長寿医療センター(東京都健康長寿医療センター研究所) 社会参加とヘルシーエイジング研究チーム)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 認知症政策研究
研究開始年度
令和3(2021)年度
研究終了予定年度
令和5(2023)年度
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
軽度認知障害(MCI)は、認知症のハイリスク群であり、認知症への進行を予防するため、ライフスタイルの改善や精神的支援が必要である。アルツハイマー型認知症の病態修飾薬は開発されたものの、実際は進行遅延のための十分な指導を受けず、置き去りにされているケースがみられる。そこで本研究班は、MCIの効果的な支援方法を確立するために以下の2つの研究を行う。①手引きの作成:MCIの進行予防・心理的支援について文献調査を行い、エビデンスに基づいた手引きを作成する、②手引きを用いた介入研究:MCIの人に対する手引きに沿った指導を12か月間行う介入研究により、手引きによる啓発と支援の実現可能性および介入の効果を明らかにする。
研究方法
研究目的に記載した2つの研究実施事項に即して経過を記載する。
①手引きの作成:研究開始時~令和4年度前半にかけ、1.当事者へのインタビューや専門家会議を通じたPatient Questionの策定、2.班員による第一稿の執筆、3.Clear Communication Indexを活用した改訂、と手順を踏んで手引きの初版を得た。令和4年9月から令和5年8月に実施された介入研究にて手引きを活用した教室を運営することで、MCI当事者らからの意見を集積し、99か所の改訂ポイントを同定した。介入研究終了後(令和5年8月~)より第2版(最終版)の作成に向けて改訂を実施した。
②手引きを用いた介入研究:研究デザインは多機関共同単群介入試験である。MCI高齢者を対象に12か月間のグループ教室(集団運動と手引きを用いた講話・グループワーク)と日常生活のモニタリングからなる介入を実施し、その前後で認知機能(MOCA-J)を取得した。令和4年4月より準備を進め、同年9月から愛知と東京の2つのフィールドで合計38名を対象者として介入を提供した。
結果と考察
一連の研究によって、①手引き、②生活ノート、③簡易版手引き、④WEB版手引き、⑤アブストラクトテーブル、⑤CBTガイドブックを完成させた。
手引きを用いた介入研究は令和5年8月までに34名(89.4%)の参加者が全24セッションを完遂した。主要評価項目である解析対象者(N=37)のMoCA-Jの変化量は1.2点(介入前:21.9点、介入後:23.3点)であり、統計学的有意な改善を認めた(p=0.007)。外部対照群と傾向スコアマッチングした対象を用いた解析においても、介入群は外部対照群と比較して有意なMoCA-Jの改善を認めた(P<0.001)。

本研究では、MCI進行予防のための実践的な介入方法を提案すべく、「手引きの作成」と「手引きを用いた介入の効果判定」を2つの柱として遂行した。3年計画の3年目にあたる本年度は手引きを用いた介入によりMCI高齢者の認知機能に与える効果を検証した。また、手引きの第2版(最終版)を完成させた。
MCIは、認知症の前段階であると考えられ、ライフスタイルの改善や精神的支援による進行予防が必要である。一方、MCI当事者、家族、支援者(地域包括支援センターや医療者)などが参照しやすい形で進行予防のためのエビデンスが体系だってまとめられた前例がなく、MCIの方が十分な指導を受けず、置き去りにされているケースが少なくなかった。本研究が広く普及することで、全国のMCI高齢者の進行予防に大きく寄与すると考えられる。
また、本研究では研究補助員(非専門家)が手引きを活用することで実際にMoCA-Jの点数が改善することを示した。介護予防教室等ではMCI高齢者を適切に指導できるインストラクターは貴重であるが、本研究で作成された手引きを活用することで全国の介護予防教室の質の向上にも寄与できると考えられる。
結論
本研究により、MCI進行予防のための手引きが完成した。当事者や家族のリテラシー向上に大きく寄与するとともに、全国で実施されている認知症予防教室のために活用されることが期待される。

公開日・更新日

公開日
2024-06-03
更新日
-

研究報告書(PDF)

公開日・更新日

公開日
2024-06-03
更新日
-

研究報告書(紙媒体)

行政効果報告

文献番号
202316003C

成果

専門的・学術的観点からの成果
軽度認知障害(MCI)は認知症の高リスク群であり、認知症への進行を予防するためにはライフスタイルの改善や精神的支援が必要とされている。しかし、MCIに対する簡便かつ費用対効果に優れた予防的介入の方策は明らかにされてこなかった。本研究では、認知症予防に必要な科学的エビデンスをまとめた『MCIハンドブック』を作成し、12か月間の非専門家による介入を実施した。その結果、参加者の認知機能(MoCA-Jスコア)が改善することが初めて明らかになった(介入前:21.9点、介入後:23.3点;p=0.007)。
臨床的観点からの成果
これまで、MCIに対する指導や介入方法は定まっておらず、認知症専門医がエビデンスを統合して実施する必要があったため、簡便性や費用対効果の面から普及しにくい状態にあった。本研究では、『MCIハンドブック』を用いることで非専門家でも質の高い介入が提供できることが明らかになり、一般臨床での看護師や理学療法士、地域での健康教室などでの活用可能性が示された。
ガイドライン等の開発
特になし
その他行政的観点からの成果
高齢者人口の増加に伴い、認知症患者の増加とそれによる医療介護費の増大は全国的に大きな問題となっている。本研究により作成された『MCIハンドブック』はその効果も検証されており、自治体が主催する健康教室等で応用可能である。また、ハンドブックに記載された内容は地域包括支援センターの職員など、地域の認知症リスクを有する高齢者に対応する多くの職員にとって有用な情報となる。
その他のインパクト
本研究により作成された『MCIハンドブック』は厚労省および国立長寿医療研究センターのウェブページに掲載された。掲載後、多くの企業や一般住民、海外の研究機関から問い合わせがあり、各方面からの期待が高いことがうかがえる。また、本研究の主要結果は英語論文として投稿準備が進んでいる。

発表件数

原著論文(和文)
2件
原著論文(英文等)
61件
その他論文(和文)
1件
その他論文(英文等)
0件
学会発表(国内学会)
70件
学会発表(国際学会等)
3件
その他成果(特許の出願)
0件
その他成果(特許の取得)
2件
その他成果(施策への反映)
0件
その他成果(普及・啓発活動)
1件
ホームページ 1件

特許

特許の名称
Petit茶論
詳細情報
分類:
特許番号: 第6607582号(商願2021-149661)
発明者名: 国立研究開発法人国立長寿医療研究センター
権利者名: 国立研究開発法人国立長寿医療研究センター
出願年月日: 20211201
取得年月日: 20211201
特許の名称
Petit笑店
詳細情報
分類:
特許番号: 第6578305号(商願2021-149662)
発明者名: 国立研究開発法人国立長寿医療研究センター
権利者名: 国立研究開発法人国立長寿医療研究センター
出願年月日: 20211201
取得年月日: 20211201

主な原著論文20編(論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限る)

公開日・更新日

公開日
2024-06-12
更新日
-

収支報告書

文献番号
202316003Z