文献情報
文献番号
202316001A
報告書区分
総括
研究課題名
療養場所の違いに応じた認知症者のエンドオブライフケア充実に向けての調査研究-COVID-19流行の影響も踏まえて-
課題番号
21GB1001
研究年度
令和5(2023)年度
研究代表者(所属機関)
三浦 久幸(国立研究開発法人国立長寿医療研究センター 病院在宅医療・地域医療連携推進部)
研究分担者(所属機関)
- 葛谷 雅文(名鉄病院)
- 会田 薫子(東京大学 大学院人文社会系研究科)
- 大河内 二郎(社会医療法人 若弘会 介護老人保健施設 竜間之郷)
- 平原 佐斗司(東京ふれあい医療生活協同組合 研修・研究センター)
- 山中 崇(東京大学 医学部附属病院)
- 平川 仁尚(あいち健康の森健康科学総合センター)
- 石山 麗子(国際医療福祉大学大学院 医療福祉学研究科)
- 斎藤 民(国立長寿医療研究センター 老年社会科学研究部)
- 高梨 早苗(国立長寿医療研究センター 在宅医療・地域医療連携推進部)
- 島田 千穂(佐久大学 人間福祉学部)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 認知症政策研究
研究開始年度
令和3(2021)年度
研究終了予定年度
令和5(2023)年度
研究費
5,492,000円
研究者交替、所属機関変更
-
研究報告書(概要版)
研究目的
当研究は、エビデンスに基づき、最期の療養の場の違い(病院、在宅、介護保険施設)に応じた認知症者へのエンドオブライフ・ケアの指針・手引きを作成することを目的とした。
エンドオブライフ・ケアについては療養の場の違いにより、提供可能な医療処置や介護サービスの内容・量共に異なるため、療養の場ごとの指針や手引きが必要である。
本研究では、これまで各研究で行ってきた、認知症者のエンドオブライフ・ケア(最多の死因である肺炎を含む)に関しての文献的エビデンス抽出、認知症者の意思決定支援を進める上での課題抽出、高齢者における意思決定支援推進に関わるこれまでの実績を基に、当該研究計画を立案した。
調査・手引き書作成においてはCOVID-19流行の影響を踏まえた。
療養の場の違いに応じたエンドオブライフ・ケアの手引きは国内では初めてである。
エンドオブライフ・ケアについては療養の場の違いにより、提供可能な医療処置や介護サービスの内容・量共に異なるため、療養の場ごとの指針や手引きが必要である。
本研究では、これまで各研究で行ってきた、認知症者のエンドオブライフ・ケア(最多の死因である肺炎を含む)に関しての文献的エビデンス抽出、認知症者の意思決定支援を進める上での課題抽出、高齢者における意思決定支援推進に関わるこれまでの実績を基に、当該研究計画を立案した。
調査・手引き書作成においてはCOVID-19流行の影響を踏まえた。
療養の場の違いに応じたエンドオブライフ・ケアの手引きは国内では初めてである。
研究方法
認知症者の緩和ケア技術評価ワーキンググループ、意思決定プロセス評価ワーキンググループとも医療・介護専門職向け指針を作成
1.指針案作成
2.査読後指針案確定
3.指針案出版調整
1.指針案作成
2.査読後指針案確定
3.指針案出版調整
結果と考察
【疼痛評価方法の標準化】
分担研究者の平原は、前年度までに評価を行った全般的な苦痛評価法である「日本版アビー痛みスケール」に加え、呼吸困難を在宅でも評価可能なように「日本語版modRDOS-4」を開発した。これらの評価スケールを標準的疼痛評価法として「指針」内に明記した。
【療養場所別課題・対応の明確化】
1.療養場所別のFGI(令和3年度)、実態調査(令和4年度)を基に、緩和ケア実践や意思決定支援の療養場所別の課題を明確化できた。
2.療養場所別のアドバンス・ケア・プランニングの文献的評価については、分担研究者の葛谷らがナラティブレビューをまとめた(葛谷ら、日老医誌2023)。
【指針内項目の確定・指針案策定】
令和3年度に行った専門職、認知症の家族に対するフォーカスグループ・インタビュー(FGI)結果と令和4年度に行った実態調査により、病院、在宅、介護保険施設それぞれの現場における疼痛評価、緩和ケア技術、意思決定支援の現状を把握したことで、療養場所別の課題と共通する課題につき網羅的に把握できた。
令和4年度の実態調査により、認知症者の療養場所別の緩和ケア実施や意思決定支援上の課題が明確となった。緩和ケア技術については苦痛評価の実施や多職種でのBPSD評価など、療養場所別に特有の課題が認められた。一方、意思決定支援については特に施設や療養病床では家族中心の意思決定支援が行われており、認知症者本人の意思決定が必ずしも徹底されていない状況が示唆された。このため令和5年度に作成した指針には療養場所別の緩和ケアに関するunmet needsに対応するための手引き的な方策提示や療養場所に共通して「認知症者本人を中心とした意思決定支援」の方向性を強く示した。
本研究により最も期待できる効果は、医療・介護現場の認知症の緩和ケア技術と本人の意向を尊重した意思決定支援技術の向上である。
分担研究者の平原は、前年度までに評価を行った全般的な苦痛評価法である「日本版アビー痛みスケール」に加え、呼吸困難を在宅でも評価可能なように「日本語版modRDOS-4」を開発した。これらの評価スケールを標準的疼痛評価法として「指針」内に明記した。
【療養場所別課題・対応の明確化】
1.療養場所別のFGI(令和3年度)、実態調査(令和4年度)を基に、緩和ケア実践や意思決定支援の療養場所別の課題を明確化できた。
2.療養場所別のアドバンス・ケア・プランニングの文献的評価については、分担研究者の葛谷らがナラティブレビューをまとめた(葛谷ら、日老医誌2023)。
【指針内項目の確定・指針案策定】
令和3年度に行った専門職、認知症の家族に対するフォーカスグループ・インタビュー(FGI)結果と令和4年度に行った実態調査により、病院、在宅、介護保険施設それぞれの現場における疼痛評価、緩和ケア技術、意思決定支援の現状を把握したことで、療養場所別の課題と共通する課題につき網羅的に把握できた。
令和4年度の実態調査により、認知症者の療養場所別の緩和ケア実施や意思決定支援上の課題が明確となった。緩和ケア技術については苦痛評価の実施や多職種でのBPSD評価など、療養場所別に特有の課題が認められた。一方、意思決定支援については特に施設や療養病床では家族中心の意思決定支援が行われており、認知症者本人の意思決定が必ずしも徹底されていない状況が示唆された。このため令和5年度に作成した指針には療養場所別の緩和ケアに関するunmet needsに対応するための手引き的な方策提示や療養場所に共通して「認知症者本人を中心とした意思決定支援」の方向性を強く示した。
本研究により最も期待できる効果は、医療・介護現場の認知症の緩和ケア技術と本人の意向を尊重した意思決定支援技術の向上である。
結論
「認知症の緩和ケア実践ガイドライン」と「認知症を有する人のためのエンドオブライフ・ケア:最期までの意思の形成・表出・実現を支えるための支援ガイド」を策定した。これらの指針の普及・啓発を目的に、この2つの指針の内容を1冊の著書にまとめ、「認知症支援ガイド 最期まで本人の意思を酌み取ったケアを実現するために」(日経BP)を出版した。本年度はさらに令和3年度に行ったFGIの情報を基に、COVID-19流行が認知症診療に及ぼした影響について検討し、論文発表した。
公開日・更新日
公開日
2024-06-03
更新日
-