文献情報
文献番号
202315008A
報告書区分
総括
研究課題名
LIFEで収集された情報を用いた介護保険事業(支援)計画の進捗管理に資する研究
課題番号
23GA1002
研究年度
令和5(2023)年度
研究代表者(所属機関)
荒井 秀典(国立研究開発法人 国立長寿医療研究センター 理事長室)
研究分担者(所属機関)
- 島田 裕之(国立研究開発法人国立長寿医療研究センター 研究所老年学・社会科学研究センター)
- 土井 剛彦(国立研究開発法人国立長寿医療研究センター 老年学・社会科学研究センター 予防老年学研究部 健康増進研究室)
- 斎藤 民(国立長寿医療研究センター 老年社会科学研究部)
- 堤本 広大(国立長寿医療研究センター 研究所 老年学・社会科学研究センター)
- 大寺 祥佑(国立研究開発法人国立長寿医療研究センター)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 長寿科学政策研究
研究開始年度
令和5(2023)年度
研究終了予定年度
令和7(2025)年度
研究費
10,650,000円
研究者交替、所属機関変更
-
研究報告書(概要版)
研究目的
本研究の目的は、科学的介護情報システム(LIFE)で収集された情報を用いて、介護保険事業支援計画の進捗管理に有効な指標の選定やその有用性等について検討を行うこととする。高齢者の機能予後予測に有益なLIFEデータの特定を行うため、介護保険総合データベースを用いた解析を行うための準備を進めることを目指した。また、LIFEの搭載項目等、改良に向けて更なる議論を行うため、介護施設入所者におけるQuality of life(QOL)、Activity of daily living(ADL)および要介護度の変化の関連要因に関する文献レビューを実施した。
研究方法
介護保険総合データベースの利用申請を行った。また、介護保険総合データベースの構造を確認し、データベース構築と解析計画の検討を進めた。介護施設入所者におけるQOL変化に関する縦断的研究については、英文論文のシステマティックレビューを、ADL変化に関する縦断的研究については、近年発行されたシステマティックレビュー2本に最新論文を加えた英文論文のアンブレラレビューを実施した。同じく介護施設入所者における要介護度変化については、英論文と和論文を対象とし、探索的レビューを行った。
結果と考察
介護保険総合データベースの利用に関する申出について、事前相談、審査、定型データセットの提供を受けた。提供後、データを保存し、必要なデータ処理を行いながらデータベースへのインポートを進めた。さらにデータの絞り込み、PostgreSQLによるデータベース構築も行った。解析計画の検討では、公開データや欠損値集計の結果を参照し、要介護度の悪化に関連する項目選定のための変数抽出とデータ源の検討を実施した。
QOLの変化については、最終的に16本が適格基準をみたした。すべて多施設デザインを用い、追跡期間は1か月から5年間であった。アウトカムとして使用される尺度は多様であり、メタアナリシスは困難であった。抽出された関連要因は、認知機能、生活機能や尿失禁等の個人レベルの関連要因だけではなく、認知症に配慮した建築環境や、食事の充実感の高さなど、施設や社会関係に関する要因も抽出された。ADLの変化については、新規に1本を加えた計49本を対象とした。追跡期間はほとんどの研究では1年間から3年間であった。ADLの評価方法は、Minimal Data SetやKatz、Barthel Indexが中心であった。入所期間やベースラインの生活機能などの個人的要因の他、老年医学専門医の不在、入所者一人当たり看護時間の短さ、ケアの質の低さなどの施設要因が悪化の関連要因として報告された。要介護度の変化については、該当論文は2本のみであり、介護レセプトデータを活用した分析が行われていた。ユニット型の施設や、都市部の施設、正看護師が全看護師に占める割合が高い施設等で悪化リスクが低かった。また入所者レベルでの加算である短期集中リハビリテーション加算や入所前後訪問指導加算等、施設レベルでの在宅復帰支援機能加算、栄養管理体制加算等が悪化リスクの低さに関連していた。
QOLの変化については、最終的に16本が適格基準をみたした。すべて多施設デザインを用い、追跡期間は1か月から5年間であった。アウトカムとして使用される尺度は多様であり、メタアナリシスは困難であった。抽出された関連要因は、認知機能、生活機能や尿失禁等の個人レベルの関連要因だけではなく、認知症に配慮した建築環境や、食事の充実感の高さなど、施設や社会関係に関する要因も抽出された。ADLの変化については、新規に1本を加えた計49本を対象とした。追跡期間はほとんどの研究では1年間から3年間であった。ADLの評価方法は、Minimal Data SetやKatz、Barthel Indexが中心であった。入所期間やベースラインの生活機能などの個人的要因の他、老年医学専門医の不在、入所者一人当たり看護時間の短さ、ケアの質の低さなどの施設要因が悪化の関連要因として報告された。要介護度の変化については、該当論文は2本のみであり、介護レセプトデータを活用した分析が行われていた。ユニット型の施設や、都市部の施設、正看護師が全看護師に占める割合が高い施設等で悪化リスクが低かった。また入所者レベルでの加算である短期集中リハビリテーション加算や入所前後訪問指導加算等、施設レベルでの在宅復帰支援機能加算、栄養管理体制加算等が悪化リスクの低さに関連していた。
結論
本年度は、介護DBデータ利用申請と取得、匿名LIFE情報のデータベース構築、統計解析で用いる変数とデータ源の検討を実施し、今後の研究基盤データの整備と統計解析に向けた基盤を整備することができた。次年度は統計解析計画を精緻化し、LIFE情報以外のデータを加えたデータベースの構築、統計解析の実施を予定している。レビューを行ったいずれのアウトカムにおいても、研究ごとの個別性が高く統合的解析は困難であった。そのなかでは心理社会的要因も含むいくつかの個人的関連要因、施設関連要因が予後改善の可能性がある要因として抽出された。今後、在宅要介護者を対象とし、更なるレビューを実施予定である。
公開日・更新日
公開日
2024-05-28
更新日
-