アレルギー疾患の層別化解析、生活環境が与える影響の解明に向けた疫学研究

文献情報

文献番号
202312011A
報告書区分
総括
研究課題名
アレルギー疾患の層別化解析、生活環境が与える影響の解明に向けた疫学研究
課題番号
23FE2001
研究年度
令和5(2023)年度
研究代表者(所属機関)
伊藤 靖典(地方独立行政法人長野県立病院機構 長野県立こども病院 小児アレルギーセンター)
研究分担者(所属機関)
  • 小池 由美(長野県立こども病院 アレルギー科)
  • 吉田 幸一(東京都立小児総合医療センター アレルギー科)
  • 高橋 亨平(独立行政法人国立病院機構相模原病院 小児科)
  • 松原 優里(自治医科大学 地域医療学センター 公衆衛生学部門)
  • 田中 暁生(広島大学大学院 医系科学研究科 皮膚科学)
  • 福家 辰樹(国立研究開発法人国立成育医療研究センター アレルギーセンター 総合アレルギー科)
  • 木村 孔一(北海道大学 大学病院)
  • 高橋 雅和(山口大学 大学院技術経営研究科)
  • 加藤 泰輔(富山大学 附属病院)
  • 徳永 舞(長野県立こども病院 総合小児科・アレルギー科)
  • 野上 和剛(札幌医科大学 医学部小児科学講座)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 免疫・アレルギー疾患政策研究
研究開始年度
令和5(2023)年度
研究終了予定年度
令和7(2025)年度
研究費
11,230,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
環境要因が発症に関連するアレルギー疾患では有病率等の疫学調査を永続的に調査していくことは国の施策として極めて重要である。R3年、4年度に都道府県アレルギー疾患医療拠点病院を活用した全国のアレルギー疾患有病率を調査し、全年齢層の各アレルギー疾患の網羅的な有病率調査手法を前疫学研究班(アレルギー疾患の多様性、生活実態を把握するための疫学研究:研究代表者 足立雄一)が確立したが、母集団の選択バイアスや質問表の妥当性の検討、年次推移を評価する手法が必要である。また、変化するアレルギー疾患の発症や悪化について生活実態や環境因子との関連性の検討が必要である。
また、R5年4月に、政府において「花粉症に関する関係閣僚会議」が発足し、花粉症対策の周知や普及のさらなる推進が必要であるが、花粉症は医療機関を受診しない人も存在し現状が明らかになっていない。そのため現在の我が国における花粉症患者の実態、症状や治療、アンメットメディカルニーズ等についての調査を実施し、花粉症対策の解決に向けた基礎的資料を作成が必要である。
研究方法
1.インターネット調査によるアレルギー疾患有病率調査
拠点病院調査で用いた質問票を用いて、インターネット調査会社のアンケートモニターに対して同様の調査を実施し、拠点病院とは別の母集団の有病率を評価し、拠点病院調査との比較検討を行い、外的妥当性の検証をおこなう。
2.令和3年度、令和4年度拠点病院調査のデータ解析
前研究班で調査した疫学データを解析し、経時的な評価するために必要な年齢調整有症率などの解析を行い、今後の拠点病院調査の解析手法を確立する。
3. アレルギー疾患の発症や悪化における生活・環境因子との因果関係の検討
アレルギー疾患の発症・増悪に関連した生活・環境因子について現在のアレルギー疾患の現状を背景に抽出を行い、その中から本研究班で実施可能な調査を検討する。
4. 花粉症患者のアンメットメディカルニーズについての調査、舌下免疫療法実施している方への症状や治療に関する調査
インターネットリサーチ会社のアンケートモニターに対しスギ花粉症に関する調査を実施する。
1)スギ花粉症を有する人を対象とした症状、治療内容、アンメットメディカルニーズに関する調査
2)スギ花粉症の舌下免疫療法を施行している方への調査
結果と考察
1.インターネット調査
令和5年12月にインターネット調査のアンケートモニターに対して、調査をおこない0歳から80歳以上の19355名のデータを収集した。年齢調整有症率を算出したところ、各アレルギー疾患の有症率は10万人あたり気管支喘息6488人、アトピー性皮膚炎8106人、アレルギー性鼻炎33202人、アレルギー性結膜炎10637人、食物アレルギー9964人、金属アレルギー2438人、薬剤アレルギー3206人、アナフィラキシー1987人であった。年齢調整をした場合、各アレルギー疾患において拠点病院調査結果とほぼ同等の有症率であったが、アレルギー性結膜炎および薬剤アレルギーが拠点病院調査においてやや多い傾向にあった。
2.R3年度、4年度拠点病院調査のデータ解析
解析対象者はR3年18706人からR4年24444人に増えたが、アレルギー疾患を有すると回答した割合はR3年が62.1%、R4年が63%で差はなかった。年齢調整有症率を算出し、今後年齢調整した有症率で経年的な評価をすることが可能となった。
3. 生活実態や環境因子との関連性の検討
近年急増し令和5年3月に特定原材料にも新規に加わったクルミアレルギーについて、食物アレルギー児における感作の有無と生活環境に関するアンケート調査を立案し調査を2024年1月より開始した。
4−1.スギ花粉症を有する人を対象とした症状、治療内容、アンメットメディカルニーズに関する調査
成人スギ花粉症5000人のデータを収集した。スギ花粉症を自覚する人において医療機関で診断されていたのは58%であった。また、舌下免疫療法を知らないと回答した人も42%存在した。
4−2.スギ花粉症の舌下免疫療法を施行している方への調査
舌下免疫療法を実施している成人1000人に調査を実施した。
スギ花粉舌下免疫療法を実施前の重症度で最重症・重症で62.8%であったが、治療後の現在では30.6%に減少しており、特に最重症は74%に重症度の改善が見られていた。
結論
アレルギー疾患医療拠点病院を活用した我が国における大規模なアレルギー疾患有病率調査について外的妥当性が評価できた。また、年齢調整を行うことで経年的な比較も今後可能である。
スギ花粉症を有する方、および舌下免疫療法を実施している方の現状について重症度、治療内容、生活への影響などアンメットメディカルニーズを明らかにすることができた。今後の政策に資する基礎的資料となりうる。

公開日・更新日

公開日
2024-11-14
更新日
-

研究報告書(PDF)

公開日・更新日

公開日
2024-11-14
更新日
-

研究報告書(紙媒体)

収支報告書

文献番号
202312011Z
報告年月日

収入

(1)補助金交付額
13,580,000円
(2)補助金確定額
13,580,000円
差引額 [(1)-(2)]
0円

支出

研究費 (内訳) 直接研究費 物品費 3,486,426円
人件費・謝金 111,000円
旅費 653,400円
その他 6,979,174円
間接経費 2,350,000円
合計 13,580,000円

備考

備考
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公開日・更新日

公開日
2024-11-14
更新日
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