代替医療の実態と有効性の科学的評価

文献情報

文献番号
200934010A
報告書区分
総括
研究課題名
代替医療の実態と有効性の科学的評価
課題番号
H19-免疫・一般-010
研究年度
平成21(2009)年度
研究代表者(所属機関)
岡本 美孝(千葉大学 大学院医学研究院)
研究分担者(所属機関)
  • 花澤 豊行(千葉大学 大学院医学研究院)
  • 堀口 茂俊(千葉大学 大学院医学研究院)
  • 河野 陽一(千葉大学 大学院医学研究院)
  • 大久保 公裕(日本医科大学)
  • 藤枝 重治(福井大学 医学部)
  • 岡野 光博(岡山大学 大学院医歯薬学総合研究科)
  • 黒野 祐一(鹿児島大学 大学院医歯学総合研究科)
  • 山本 正二(千葉大学 医学部附属病院)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 免疫アレルギー疾患等予防・治療研究
研究開始年度
平成19(2007)年度
研究終了予定年度
平成21(2009)年度
研究費
32,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
国内のアレルギー疾患に対する代替医療の実態と、代替医療が持つ有用性について検証を行う。
研究方法
研究班で作成したアンケート用紙による代替医療の実態調査と、有効性を検討しやすいアレルギー性鼻炎患者を対象に評価を継続して行った。
結果と考察
1.代替医療の実態調査:①食物アレルギー患児での代替医療の受療率は19%で漢方薬(医師の処方によらない)、乳酸菌食品、プロポリスが上位を占め、年齢が上がるにつれ受療率は上昇した。②全国の成人アレルギー性鼻炎患者7,401名の代替医療受療率は19.3%で、女性に高く、小児アレルギー性鼻炎患者3,170名の受療率は7.1%であった。③代替医療への高額支出者の受療理由は、副作用が少ない、標準治療の副作用の危惧と効果の少なさを挙げる患者が多いのが特徴であった。
2.代替医療の科学的評価:①通年性アレルギー性鼻炎患者を対象に甜茶の症状改善効果をプラセボを対照二重盲検試験で検討したが、用いた投与量(400mg/日)4週間ではプラセボ群と比較して有意差は明らかではなかった。②マウスを用いた乳酸菌の検討で樹状細胞に抗原と共に投与することで、CCR7、PD-L2の発現亢進を誘導し、感作マウスの口腔粘膜下投与することで、感作マウスのIgEの主な産生部位である頸部リンパ節でのTh2サイトカインの選択的な抑制を示した。このような作用は抗RD-L2抗体の前処置により消失した。③スギ花粉症へのスギ花粉エキスを用いた舌下免疫療法に対し、乳酸菌の口内錠がアジュバントとして有効かどうかについてプラセボ口内錠を対照に二重盲検試験で検討したところ、症状改善効果、特異的Th2サイトカイン産生抑制効果が認められた。④海綿抽出糖脂質と抗原で刺激した樹状細胞を、口腔粘膜に投与することで、抗アレルギー作用が感作マウスでみられた。⑤鼻閉改善のプラセボ効果を条件付けた被験者でfunctional MRIで脳賦活化を可視化することが可能であった。また、臨床試験参加者を対象に、プラセボ投与によって改善効果発現者の性格調査を行ったが、社会適応性、情緒安定性が高い症例が有意に高い結果であった。
結論
様々な代替医療が用いられているが、受療者の解析、プラセボ効果の検討からは患者満足度の高い治療の提供が求められていることを反映する結果であった。代替医療の多くは有効性の確認が容易ではないが、検討の継続が期待されるものもみられる。

公開日・更新日

公開日
2010-05-19
更新日
-

文献情報

文献番号
200934010B
報告書区分
総合
研究課題名
代替医療の実態と有効性の科学的評価
課題番号
H19-免疫・一般-010
研究年度
平成21(2009)年度
研究代表者(所属機関)
岡本 美孝(千葉大学 大学院医学研究院)
研究分担者(所属機関)
  • 花澤 豊行(千葉大学 大学院医学研究院)
  • 堀口 茂俊(千葉大学 大学院医学研究院)
  • 河野 陽一(千葉大学 大学院医学研究院)
  • 大久保 公裕(日本医科大学)
  • 藤枝 重治(福井大学 医学部)
  • 岡野 光博(岡山大学 大学院医歯薬学総合研究科)
  • 黒野 祐一(鹿児島大学 大学院医歯学総合研究科)
  • 山本 正二(千葉大学 医学部附属病院)
  • 中山 俊憲(千葉大学 大学院医学研究院)
  • 増山 敬祐(山梨大学 医学部)
  • 石川 和夫(秋田大学 大学院医学系研究科)
  • 堤 裕幸(札幌医科大学 )
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 免疫アレルギー疾患等予防・治療研究
研究開始年度
平成19(2007)年度
研究終了予定年度
平成21(2009)年度
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
国内のアレルギー疾患に対する代替医療の実態を明らかにすると同時に、科学的評価により代替医療が持つ有用性についても検証を行い、新たな治療戦略としての可能性を示す。
研究方法
1.統一したアンケート調査票を用いた実態調査(30,136名を対象に実施)
2.有効性の科学的評価を行いやすいアレルギー性鼻炎患者を対象に、アロマ療法、鼻孔開大テープについては鼻腔抵抗値、functional MRIによる解析により、また、乳酸菌カプセル摂取、甜茶カプセル内服、乳酸菌口内錠の有効性は2重盲検試験により検討した。さらに代替医療との関連からプラセボ効果について検討した。
結果と考察
1.実態調査・代替医療の受療率は6?30%で喘息でやや低く、また疾患の少ない地域で低い傾向・女性の割合が高い・小児では低い・内容は多彩だが、ヨーグルト含む乳酸菌食品はすべての疾患、年齢で多く、アレルギー性鼻炎では甜茶、アトピー性皮膚炎では温泉療法が多いのが特徴・同じ医療機関群での6年前の調査と比較では受療率は上昇し、内容として乳酸菌食品が増加・代替医療の受療理由として、副作用が少ない、安価、医療機関受診が面倒なため、が上位を占めた・代替医療を受けた患者の効果についての評価は多くは30%以下・副作用は皮疹増悪、腹部症状が中心・代替医療に対して約20%が10万円以上出費・医療機関で未治療患者は代替医療の受療の割合が高い可能性といった結果であった。
2.有効性の科学的評価 ・乳酸菌カプセル連日摂取によるスギ花粉症症状改善効果、発症予防効果は明らかではなかった。・乳酸菌の樹状細胞の分化への影響は株により違いが大きいが、CCR7発現、PD-L2発現が抗アレルギー作用の誘導に関与・甜茶1日400mg ,4週間の摂取はアレルギー性鼻炎症状の改善効果は不明。・乳酸菌口内投与、海綿抽出糖脂質は舌下免疫療法のアジュバント効果が期待・アロマの吸入、鼻孔拡張テープは一定の条件下で鼻閉改善・・ヒノキ入浴剤の効果は不明・詳細な花粉飛散予報の提供、マスクや眼鏡使用の有効性には一定の条件が必要であった。
3.矢田部-ギルフォード性格検査から検討すると、プラセボ効果を示す患者群ではむしろ情緒安定性、社会適応性因子が有意に高い・MRIにて鼻閉に関するプラセボ効果の可視化が可能であった。
結論
様々な代替医療が用いられている。多くは臨床効果は明らかではなかったが、今後の検討の継続が期待されるものもみられた。最終的には標準治療の意義についての情報提供、治療満足度をより図る必要性を示す結果であった。

公開日・更新日

公開日
2010-05-19
更新日
-

行政効果報告

文献番号
200934010C

成果

専門的・学術的観点からの成果
アレルギー疾患の代替医療の実態調査については、約3万人というこれまで報告のない多数例を対象に検討して実態を明らかに出来た。代替医療の科学的評価としては、厚生労働省の臨床試験の指針に基づいたプラセボを対照としたランダム化比較試験の実施、鼻腔抵抗測定やfunctional MRIによる客観的評価法を用いた検討を行って意義や問題点を明らかにし、また、口腔粘膜の粘膜免疫の特殊性についてin vitro, in vivoで詳細な解析を行い代替医療の新たな展開の可能性を示した。
臨床的観点からの成果
3万人の代替医療の実態調査から代替医療の背景には標準治療の副作用に対する不安、標準治療の効果に対する不満足があることが明らかになり、ガイドラインの活用を広げることの重要性を示した。科学的評価から、代替医療でも効果が期待できるものがあり、特に乳酸菌や海綿抽出物の口腔粘膜への投与で直接口腔粘膜の樹状細胞を刺激する意義を示した。特に抗原と抱き合わせての投与による症状改善効果が高いという結果は、舌下免疫療法の有効なアジュバントとなり得ることが期待される。
ガイドライン等の開発
なし
その他行政的観点からの成果
 本研究成果の一部は、厚生労働省のホームページの「花粉症の民間医療について」に掲載され、民間医療の説明、主に花粉症に対する民間治療の実態、問題点がわかりやすく記載されて花粉症を有する患者の理解に役立っている。
その他のインパクト
「わが子を花粉症からこう守る』サンデー毎日、毎日新聞社 2009年3月15日、
千葉大学大学院医学研究院耳鼻咽喉科:岡本美孝
 高校保健ニュース「花粉症の知識と対策」少年写真新聞、第358号、2010年、
千葉大学大学院医学研究院耳鼻咽喉科:岡本美孝
「アレルギーに対する乳酸菌を用いた新規の免疫治療」韓国放送公社(KBS)、2010年3月7日
韓国全国でテレビ放送

発表件数

原著論文(和文)
6件
原著論文(英文等)
19件
その他論文(和文)
22件
その他論文(英文等)
4件
学会発表(国内学会)
31件
学会発表(国際学会等)
7件
その他成果(特許の出願)
0件
「出願」「取得」計2件
その他成果(特許の取得)
0件
乳酸菌および抗原物質を含み口腔内に投与されることを特徴とする抗アレルギー剤(2009-198957号) BCGによる花粉症治療効果の予測法(2007-178938)
その他成果(施策への反映)
0件
その他成果(普及・啓発活動)
2件
厚生労働省ホームページ:「花粉症に民間医療について」に掲載中 千葉大学大学院医学研究院耳鼻咽喉科ホームページに掲載中 「アレルギーに対する乳酸菌を用いた免疫治療」韓国放送公社2010年3月放送

特許

主な原著論文20編(論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限る)

論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限ります。

原著論文1
Yonekura S,Okamoto Y,Okawa T 他
Effects of daily intake of Lactobacillus paracasei strain KW3110 on Japanese cedar pollinoisis.
Allergy and Asthma Proceedings ,  (30) , 397-405  (2009)
原著論文2
Okamoto Y,Horiguchi S,Yonekura S 他
Present situation of cedar pollinosis in Japan and its immune responses.
Allergology International ,  (58) , 152-162  (2009)
原著論文3
Horiguchi S,Okamoto Y,Yonekura S 他
A randomized controlled trial of sublingual immunotherapy for Japanese cedar pollinosis.
Internarional Archives of Allergy and Immunology ,  (146) , 76-84  (2008)
原著論文4
Yamashita M,Kuwahara M,Suzuki A 他
Bmil regulates memory CD4 T cell survival via repression of the Noxa gene.
Journal of Experimental Medicine ,  (205) , 1109-1120  (2008)
原著論文5
Miki H T,Hasegawa A,Iwamura C 他
CD69 contorols the pathogenesis of allergic airway inflammation.
Journal of Immunology ,  (183) , 8203-8215  (2009)
原著論文6
Suzuki Y, Hattori S, Mashimo Y, Funamizu M 他
CD14 and IL4R gene polymorphisms modify the effect of day care attendance on serum IgE Levels.
Journal of Allergy and Clinical Immunology ,  (123) , 1408-1411  (2009)
原著論文7
Fujimura T,Okamoto Y
Antigen-specific immunotherapy against allergic rhinitis:The state of the art.
Allergology International ,  (59) , 21-31  (2010)
原著論文8
鈴木洋一、真下陽一、井上寛規 他
小学生のヨーグルト・乳酸菌飲料摂取とアレルギー感作・アレルギー疾患との関係
アレルギー ,  (57) , 37-45  (2008)
原著論文9
Fujimura T, Yonekura S, Taniguchi Y 他
The induced regulatory T-cell level, defined as the proportion of IL10+Foxp3+ cells among CD25+CD4+ leukocytes, is an available therapeutic biomarker for sublingual immunotherapy.
Int. Arch. Allergy .Immunol  (2010)
原著論文10
Muradil, M, Okamoto Y, Yonekura,S 他
Reevaluation of pollen quantitation by an automatic pollen counter.
Allergy  and Asthma Proceedings  (2010)

公開日・更新日

公開日
2015-06-30
更新日
-