関節リウマチ上肢人工関節開発に関する研究

文献情報

文献番号
200934008A
報告書区分
総括
研究課題名
関節リウマチ上肢人工関節開発に関する研究
課題番号
H19-免疫・一般-008
研究年度
平成21(2009)年度
研究代表者(所属機関)
三浪 明男(北海道大学 大学院医学研究科医学専攻 機能再生医学講座 整形外科学分野)
研究分担者(所属機関)
  • 加藤 博之(信州大学 医学部 整形外科)
  • 砂川 融(広島大学 大学院保健学研究科)
  • 村瀬 剛(大阪大学 大学院医学系研究科 整形外科)
  • 岩崎 倫政(北海道大学病院 整形外科)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 免疫アレルギー疾患等予防・治療研究
研究開始年度
平成19(2007)年度
研究終了予定年度
平成21(2009)年度
研究費
13,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
関節リウマチ(RA)により高度に犯された上肢関節(肩、肘、手、指関節)に対する人工関節置換術は短・中期成績であっても安定しておらず、上肢関節の人工関節開発は急務ということができる。日本人にフィットした新しい上肢人工関節が開発されることにより患者のQOL、ADLが向上し、介護の割合の低下が期待される。
研究方法
1.肩関節:広範囲腱板断裂を伴ったRA肩に対する人工肩関節の開発を三次元有限要素法を用いた。2.肘関節:非拘束型人工肘関節置換術後の生体内三次元動態解析を行い、新しい人工肘関節の摺動面デザインを検討した。3.手関節:新たに作成した人工手関節を用いた医師主導型臨床治験を行っている。4.指関節:母指CM関節および指MP関節の正常可動域測定を行うことにより新しいタイプの人工指関節開発を行った。
結果と考察
1.肩関節:人工関節肩甲骨関節窩上方に作成したフードの短いもの(10mm)が応力分析の平均分布が得られ、将来的なゆるみ発生を防止できると考えられた。また、75°程度の可動域が得られた。2.肘関節:挿入したコンポーネントの位置によりインサートの接触領域は狭くなり、線接触が生じていた。3.手関節:新たに作成した人工手関節の臨床治験を行っている。4.指関節:正常関節可動域が測定し、日常生活に有用な可動域を推定した。
結論
人工肩関節および人工肘関節については新しい考えに基づいたプロトタイプを作製する予定である。また、新しく作成した人工手関節については医師主導型臨床治験を行っている。人工関節ステム表面に糖鎖工学的手法により生物活性物質をコーティングしてセメントあるいは骨との生物学的結合を図る目的での基礎的研究を行っている。

公開日・更新日

公開日
2010-10-19
更新日
-

文献情報

文献番号
200934008B
報告書区分
総合
研究課題名
関節リウマチ上肢人工関節開発に関する研究
課題番号
H19-免疫・一般-008
研究年度
平成21(2009)年度
研究代表者(所属機関)
三浪 明男(北海道大学 大学院医学研究科医学専攻 機能再生医学講座 整形外科学分野)
研究分担者(所属機関)
  • 加藤 博之(信州大学 医学部 整形外科)
  • 砂川 融(広島大学 大学院保健学研究科)
  • 村瀬 剛(大阪大学 大学院医学系研究科 整形外科)
  • 岩崎 倫政(北海道大学病院 整形外科)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 免疫アレルギー疾患等予防・治療研究
研究開始年度
平成19(2007)年度
研究終了予定年度
平成21(2009)年度
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
関節リウマチ(RA)により高度に犯された下肢関節に対する人工関節置換術はほぼ確立した治療法として患者のQOLおよびADL向上に多大な福音をもたらしている。それに対して上肢関節(肩、肘、手関節)に対する人工関節置換術は中期成績であっても安定しておらず、上肢関節の人工関節開発は急務ということができる。日本人にフィットした新しい上肢人工関節が開発されることにより患者のQOL、ADLが向上し、介護の割合の低下が期待される。
研究方法
各施設で行った上肢関節人工関節の中期成績を分析し改めて問題点を分析した。1.肩関節:三次元有限要素法にて広範囲腱板断裂を模して肩甲骨関節窩への人工関節の応力について分析した。また、その形状について検討し、プロトタイプを作成して屍体肩での可動域を計測した。2.肘関節:CTを用いたin vivo動態分析法により上腕骨および尺骨髄腔計測を行い、より髄腔にフィットしたプロトタイプの人工肘関節を作成した。3.手関節:新たに作成した本格的な人工手関節の医師主導型臨床治験を20例を目標に現在実施中である。
結果と考察
1.肩関節:関節窩の上方にフードを有した全く新しい人工関節を作成することにより広範囲腱板断裂においても関節窩人工関節への応力の上方集中を防ぎ応力の均一化を図ることが可能となった。2.肘関節:RA患者における上腕骨および尺骨の髄腔計測に基づいて作成したプロトタイプの人工肘関節を作成し、コンピュータ上での動作解析を行い良好な髄腔占拠率と可動域を得た。3.手関節:新たに作成した人工手関節の医師主導型臨床治験を実施中である。
結論
人工肩関節および人工肘関節については新しい考えに基づいたプロトタイプを作製し、屍体に挿入し、可動域計測、破砕試験、耐久試験を行う予定である。新しく作成した人工手関節については現在医師主導型臨床治験を行っている。人工関節の耐久性を抑制しているゆるみを防止すべく、人工関節のステム表面に糖鎖工学的手法により生物学的活性物質をコーティングしてセメントあるいは骨との生物学的結合を図る目的での基礎的研究を行っている。

公開日・更新日

公開日
2010-10-19
更新日
-

行政効果報告

文献番号
200934008C

成果

専門的・学術的観点からの成果
関節リウマチ(RA)に強く犯された上肢関節に対する人工関節の開発研究を行った。上肢関節はRAにより長期間にわたり、かつ高頻度に犯されているにもかかわらず、下肢関節に対する人工関節置換術に比べて、上肢関節に対する人工関節の多くは、未開拓の分野である。肩関節、肘関節、手関節に対する全く新しいコンセプトに基づくプロトタイプの人工関節が開発され、既に人工手関節については医師主導型臨床治験が開始されたところである。
臨床的観点からの成果
RAにより犯された上肢関節(肩、肘、手関節)に対する人工関節の開発を行った。下肢関節に対する人工関節置換術は確立した手技の一つである。それに対して上肢関節に対する人工関節の中長期成績は必ずしも満足すべき成績ではない。今回、開発された人工肩関節については肩甲骨関節窩上方にフードを有するデザインとしたこと、人工肘関節については従来の機種と比べてより髄腔にフィットしたデザインとしたこと、人工手関節については本邦初の本格的なデザインの機種がPMDAにての審査が通り臨床治験が開始された。
ガイドライン等の開発
具体的なガイドラインの作製には至っていないが、従来の学会でのRA治療のガイドラインでは人工肩関節置換術および人工肘関節置換術においては「症例を選べば良好な結果も期待できる手術」のカテゴリーに入っており、人工手関節置換術は「現時点では安定した成績が期待できない手術」のカテゴリーに入れられている。今後、本研究にて開発した上肢関節に対する人工関節が多施設において臨床応用(治験)されて、ガイドラインの上方修正という改訂がなされることが期待される。
その他行政的観点からの成果
下肢は身体の位置移動という機能が主なものであるのに対して上肢は目的物に手指を届かせるというリーチ機能と、手指の把持機能と巧緻運動機能を有している。従って上肢関節が犯されると、洗面、洗顔、洗髪、トイレッティングなどの人間としての尊厳維持にかかわる機能が障害され、QOL、ADL機能が著しく障害される。本研究により日本人にフィットした上肢人工関節が開発されたならば上肢機能が著明に改善し、QOL,ADLが向上し、介護の割合の低下が期待することができる。
その他のインパクト
人工関節の重要な晩期合併症の一つとして術後の人工関節のゆるみがある。ゆるみの主たる原因は骨・セメント界面およびセメント・インプラント界面での磨耗により発生したデブリスにより発生すると考えられている。本研究では上肢人工関節の開発研究とともに人工関節のゆるみを防止すべくステム表面に糖鎖工学的手法により生物活性物質などをコーティングしてセメントあるいは骨との界面での生物学的結合を図る目的での基礎的研究を行い、関連技術ではあるが特許を出願、取得している。

発表件数

原著論文(和文)
9件
原著論文(英文等)
21件
その他論文(和文)
0件
その他論文(英文等)
0件
学会発表(国内学会)
22件
学会発表(国際学会等)
24件
その他成果(特許の出願)
0件
「出願」「取得」計5件
その他成果(特許の取得)
0件
その他成果(施策への反映)
0件
その他成果(普及・啓発活動)
0件

特許

主な原著論文20編(論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限る)

論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限ります。

原著論文1
岩崎倫政、松橋智弥、瓜田淳、他
糖鎖による軟骨細胞機能制御の可能性―軟骨変性に伴う N-結合型糖鎖の変化より―
遺伝子医学MOOK 別冊“ますます重要になる細胞周辺環境の最新科学技術” , 55-59  (2009)
原著論文2
石川淳一、岩崎倫政、三浪明男
新たな人工手関節―開発状況と問題点―
関節外科 , 29 , 70-76  (2010)
原著論文3
石垣範雄、加藤博之、内山茂晴、他
RA肘における上腕骨遠位端骨折後骨欠損に対してTEAを施行した1例
日本肘関節学会雑誌 , 14 , 106-108  (2007)
原著論文4
加藤博之、内山茂晴、山崎宏、他
RAによる指ボタン穴変形の治療
関節外科 , 27 , 58-63  (2008)
原著論文5
石垣範雄、加藤博之、他
リウマチ肘の上腕骨遠位端関節内粉砕骨折に対し人工肘関節置換術を施行した2例
関節の外科 , 35 , 29-32  (2008)
原著論文6
中村順之、木村貞治、加藤博之、他
関節リウマチ肘の屈曲伸展運動における肘周囲筋の筋放電積分値の解析
日本肘関節学会雑誌 , 15 , 88-90  (2008)
原著論文7
加藤博之、岩崎倫政、三浪明男、他
関節リウマチ肘に対するKudo-5人工肘関節置換術の成績 33肘平均7年経過観察
日本肘関節学会雑誌 , 15 , 34-36  (2008)
原著論文8
山崎秀、浦野房三、加藤博之、他
長野県におけるリウマチネットワークの活動状況と課題
臨床リウマチ , 21 , 434-438  (2009)
原著論文9
Moritomo H, Murase T, Arimitsu S, et al.
The in vivo isometric point of the lateral ligament of the elbow.
J Bone Joint Surg Am. , 89 , 2011-2017  (2007)
原著論文10
Arimitsu S, Murase T, Hashimoto J, et al.
A three-dimensional quantitative analysis of carpal deformity in rheumatoid wrists.
J Bone Joint Surg Br. , 89 , 490-494  (2007)
原著論文11
Kitamura T, Hashimoto J, Murase T, et al.
Radiographic study of joint destruction patterns in the rheumatoid elbow.
Clin Rheumatol. , 26 , 515-519  (2007)
原著論文12
Yoshikawa H, Tamai N, Murase T, et al.
Interconnected porous hydroxyapatite ceramics for bone tissue engineering.
J R Soc Interface. , 6 , 341-348  (2009)
原著論文13
Murase T, Oka K, Moritomo H, et al.
Correction of severe wrist deformity following physeal arrest of the distal radius with the aid of a three-dimensional computer simulation.
Arch Orthop Trauma Surg. , 129 (11) , 1465-1471  (2009)
原著論文14
Goto A, Murase T, Hashimoto J, et al.
Morphologic analysis of the medullary canal in rheumatoid elbows.
J Shoulder Elbow Surg. , 18 (1) , 33-37  (2009)
原著論文15
Arimitsu S, Murase T, Hashimoto J, et al.
Three-dimensional kinematics of the rheumatoid wrist after partial arthrodesis.
J Bone Joint Surg Am. , 91 (9) , 2180-2187  (2009)
原著論文16
Takahata M, Iwasaki N, Nakagawa H, et al.
Sialylation of cell surface glycoconjugates is essential for osteoclastgenesis.
Bone. , 41 , 77-86  (2007)
原著論文17
Matsuhashi T, Iwasaki N, Nakagawa H, et al.
Alteration of N-glycans related to articular cartilage deterioration after anterior cruciate ligament transaction in rabbits.
Osteoarthritis Cartilage. , 16 , 772-778  (2008)
原著論文18
Masuko T, Iwasaki N, Ishikawa J, et al.
Radiolunate fusion with distraction using corticocancellous bone graft for minimizing decrease of wrist motion in rheumatoid wrists.
Hand Surg. , 14 , 15-21  (2009)

公開日・更新日

公開日
2015-06-30
更新日
-