粘膜系自然・獲得免疫によるアレルギー制御

文献情報

文献番号
200934003A
報告書区分
総括
研究課題名
粘膜系自然・獲得免疫によるアレルギー制御
課題番号
H19-免疫・一般-003
研究年度
平成21(2009)年度
研究代表者(所属機関)
清野 宏(東京大学医科学研究所 感染・免疫部門 炎症免疫学分野)
研究分担者(所属機関)
  • 審良 静男(大阪大学微生物病研究所 自然免疫学)
  • 川内 秀之(島根大学医学部 耳鼻咽喉科学教室)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 免疫アレルギー疾患等予防・治療研究
研究開始年度
平成19(2007)年度
研究終了予定年度
平成21(2009)年度
研究費
29,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
粘膜免疫を基盤とした新世代アレルギー予防・治療戦略構築への基盤確立を目指し、腸管粘膜における腸内フローラ形成、宿主側因子ターゲティング分子の作製、抗原提示細胞機能解析、自然免疫シグナルとアレルギー症状の関連について検討を行った。
研究方法
1) 16S rRNAクローンライブラリ法とFISH法により腸内細菌ゲノム情報を基盤にした腸内フローラ構成・分布解析を行い、パイエル板樹状細胞による腸内細菌取り込みの免疫学的影響について検討した。2)マウスGP2特異抗体を作製し、Whole mount染色法により腸管組織における反応性を確認した。3)マウス腸管粘膜固有層細胞由来CD11c+細胞サブセットのCX3CR1の発現をFACSにて検討した。4) 正常およびTLR欠損マウスにOVAおよびLPSを投与し、アレルギー性鼻炎を誘導した。
結果と考察
1)パイエル板および樹状細胞内にAlcaligenesが優勢的・普遍的に存在していた。また無菌マウス由来樹状細胞にAlcaligenesを作用させると、IgA産生増強サイトカインIL-6の産生が亢進し、腸内フローラによる粘膜免疫系誘導・制御における影響とアレルギー制御の可能性が示された。2)抗GP2抗体によりパイエル板M細胞のGP2分子の発現解析が可能となり、パイエル板M細胞を標的とした経口免疫寛容を利用したアレルギー粘膜免疫療法の開発への発展が期待された。3) 腸管粘膜固有層のCD11cintCD11bintマクロファージはCX3CR1を特異的に発現し、 IL-10を産生することにより誘導型制御性T細胞を誘導した。管腔抗原の取り込み経路として、上記GP2発現パイエル板M細胞を介する経路とCX3CR1+マクロファージを介する経路が示唆された。4)アレルギーモデルマウスへのLPSの点鼻投与により、TLR4依存的にアレルギー症状が増悪した。抗原の取り込み経路の違いから生じるTLRを介した自然免疫応答の差異とアレルギー疾患の関連について、今後さらなる解明が必要と考えられる。
結論
1)パイエル板の内部にAlcaligenesが優勢的に存在していた。2) パイエル板M細胞特異的分子GP2が同定された。3) CX3CR1+マクロファージが制御性T細胞誘導能を有していた。4) 細菌由来TLRリガンドがアレルギー反応の憎悪に関与する可能性が示唆された。

公開日・更新日

公開日
2010-10-19
更新日
-

文献情報

文献番号
200934003B
報告書区分
総合
研究課題名
粘膜系自然・獲得免疫によるアレルギー制御
課題番号
H19-免疫・一般-003
研究年度
平成21(2009)年度
研究代表者(所属機関)
清野 宏(東京大学医科学研究所 感染・免疫部門 炎症免疫学分野)
研究分担者(所属機関)
  • 審良 静男(大阪大学微生物病研究所 自然免疫学分野)
  • 川内 秀之(島根大学医学部 耳鼻咽喉科学教室)
  • 南野 昌信(株式会社ヤクルト本社中央研究所 基礎研究Ⅰ部)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 免疫アレルギー疾患等予防・治療研究
研究開始年度
平成19(2007)年度
研究終了予定年度
平成21(2009)年度
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
粘膜免疫を基盤とした新世代アレルギー予防・治療戦略構築への基盤確立を目指し、腸管粘膜における腸内フローラ形成、宿主側因子ターゲティング分子、抗原提示細胞機能、自然免疫シグナルとアレルギー症状の関連について検討を行った。
研究方法
1) 腸内細菌ゲノム情報を基盤にした腸内フローラ構成・分布解析を行い、パイエル板樹状細胞による腸内細菌取り込みの免疫学的影響について検討した。2)マウスGP2特異抗体を作製し、腸管組織における反応性を確認した。3)マウス腸管粘膜固有層細胞由来CD11c+細胞サブセットのCX3CR1の発現を解析した。4) 正常およびTLR欠損マウスにOVAとLPSを投与し、アレルギー性鼻炎を誘導した。5)食事量制限下での気道炎症反応を解析した。
結果と考察
1)パイエル板樹状細胞内にAlcaligenesが優勢的に存在していた。また無菌マウス由来樹状細胞にAlcaligenesを作用させると、IgA産生増強サイトカインIL-6の産生が亢進し、腸内フローラによる粘膜免疫系誘導・制御における影響とアレルギー制御の可能性が示された。2)抗GP2抗体によりパイエル板M細胞のGP2分子の発現解析が可能となり、パイエル板M細胞を標的とした経口免疫寛容を利用したアレルギー粘膜免疫療法の開発への発展が期待された。3) 腸管粘膜固有層のCD11cintCD11bintマクロファージはCX3CR1を特異的に発現し、 IL-10を産生することにより誘導型制御性T細胞を誘導した。管腔抗原取り込み経路として、上記GP2+パイエル板M細胞を介する経路とCX3CR1+マクロファージを介する経路が示唆された。4)アレルギーモデルマウスへのLPS投与によりTLR4依存的にアレルギー症状が増悪した。各抗原の取り込み経路のTLRを介した自然免疫応答の差異とアレルギー疾患の関連についてさらに解明が必要である。5) 食餌量制限により気道炎症誘導マウスの肺組織浸潤好酸球減少・血清IgE抑制が認められた。
結論
1)パイエル板内部にAlcaligenesが優勢的に存在していた。2) パイエル板M細胞特異的分子GP2が同定された。3) CX3CR1+マクロファージが制御性T細胞誘導能を有していた。4) 細菌由来TLRリガンドのアレルギー反応憎悪への関与が示唆された。5)食餌量制限がアレルギー発症を予防する可能性が示された。

公開日・更新日

公開日
2010-10-19
更新日
-

行政効果報告

文献番号
200934003C

成果

専門的・学術的観点からの成果
パイエル板特異的細菌Alcaligenesが、IgA産生応答により腸管内の恒常性維持に寄与している可能性が示唆された。また、GP2と呼ばれる分子がパイエル板M細胞に特異的に発現していることをマイクロアレイ解析で見いだし、同分子に対するモノクローナル抗体の作製に成功した。腸管粘膜国有層マクロファージは誘導型制御性T細胞を誘導することも明らかになった。これらの結果は、免疫の発達における腸内フローラの影響とアレルギー発症との関連において新たな機軸からの免疫制御を示唆する興味深いものである。
臨床的観点からの成果
アレルギー性鼻炎マウスモデルを用いてアレルギー反応相におけるLPSの同時点鼻投与によりアレルギー性鼻炎症状が増悪することを明らかにした。また、rIL-15の点鼻投与は、アレルギー性鼻炎のサイトカイン療法のひとつとなりうるものと考えられた。食餌量の制限がアレルゲン特異的Th2細胞クローンの過剰な増殖を抑え、アレルゲンによるIL-4産生誘導を抑えることから、アレルギー発症を予防する可能性を示した。
ガイドライン等の開発
本研究により、腸内細菌と自然免疫を介して粘膜免疫との相互作用に関して基盤となる研究成果があり、将来的に腸内フローラからの視点からの食物アレルギーに関するガイドラインに参考となる。
その他行政的観点からの成果
近年食物アレルギーの増加にともない、その原因と予防・治療に向けて、腸管を中心とした自然免疫と粘膜免疫の重要性を裏付ける結果が得られており、その基礎成果を元に、新しい視点での予防・治療戦略への貢献が期待できる。
その他のインパクト
「飲むワクチン」「吸うワクチン」など痛くないワクチンとしてIgA産生応答誘導およびアレルギー応答抑制誘導する経口ワクチンおよび経鼻ワクチンなどの粘膜ワクチン開発につながる基盤研究として本研究成果が紹介された。
毎日新聞朝刊平成21年11月9日
毎日新聞朝刊平成21年12月22日
読売新聞朝刊平成22年1月13日

発表件数

原著論文(和文)
0件
原著論文(英文等)
8件
その他論文(和文)
21件
その他論文(英文等)
52件
学会発表(国内学会)
32件
学会発表(国際学会等)
258件
その他成果(特許の出願)
0件
「出願」「取得」計7件
その他成果(特許の取得)
0件
その他成果(施策への反映)
0件
その他成果(普及・啓発活動)
0件

特許

主な原著論文20編(論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限る)

論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限ります。

原著論文1
Obata T, GotoY,Kiyono H et al.
Indigenous opportunistic bacteria inhabit mammalian gut-associated lymphoid tissues and share a mucosal antibody-mediated symbiosis.
Proc. Natl.Acad.Sci.U.S.A. , 107 , 7419-7424  (2009)
原著論文2
Fujihashi K and Kiyono H.
Mucosal immunosenescence: new developments and vaccines to control infectious diseases.
Trends Immunolo. , 30 , 334-343  (2009)
原著論文3
Kawagoe T, Tsujimura T,Akira S. et al.
TANK is a negative regulator of Toll-like receptor signaling and is critical for the prevention of autoimmune nephritis.
Nat. Immunol. , 10 , 965-972  (2009)
原著論文4
Terahara K, Yoshida M,Kiyono H et al.
Expression of newly identified secretory CEACAM1(a) isoforms in the intestinal epithelium.
Biochem Biophys Res Commun , 383 , 340-346  (2009)
原著論文5
Chang SY,Kiyono H,Kweon MN et al.
Colonic patches direct the cross-talk between systemic compartments and large intestine independently of innate immunity.
J. Immunol. , 180 , 1609-1618  (2008)
原著論文6
Uematsu S, Kiyono H, Akira S et al.
Regulation of humoral and cellular gut immunity by lamina propria dendritic cells expressing Toll-like receptor 5.
Nat. Immunol. , 9 , 769-776  (2008)
原著論文7
Kunisawa J, Gohda M, Kiyono H et al.
Sphingosine 1-phosphate-dependent trafficking of peritoneal B cells requires functional NFkappaB-inducing kinase in stromal cells.
Blood. , 111 , 4646-4652  (2008)
原著論文8
Nochi T, Yuki Y, Kiyono H et al.
A novel M cell-specific carbohydrate-targeted mucosal vaccine effectively induces antigen-specific immune responses.
J Exp Med. , 204 , 2789-2796  (2007)

公開日・更新日

公開日
2015-06-30
更新日
-