文献情報
文献番号
202310057A
報告書区分
総括
研究課題名
希少難治性消化器疾患の長期的QOL向上と小児期からのシームレスな医療体制構築
研究課題名(英字)
-
課題番号
23FC1028
研究年度
令和5(2023)年度
研究代表者(所属機関)
田口 智章(学校法人福岡学園 福岡医療短期大学 )
研究分担者(所属機関)
- 田尻 達郎(国立大学法人九州大学 大学院医学研究院)
- 松藤 凡(聖路加国際大学 聖路加国際病院)
- 川久保 尚徳(国立大学法人九州大学 大学院医学研究院 小児外科学分野)
- 下島 直樹(国立成育医療研究センター 小児外科系専門診療部外科)
- 武藤 充(鹿児島大学 鹿児島大学病院 周産母子センター)
- 中島 淳(横浜市立大学 大学院医学研究科 肝胆膵消化器病学)
- 曹 英樹(川崎医科大学 医学部 小児外科)
- 永田 公二(九州大学 大学病院)
- 渡辺 稔彦(東海大学 医学部 外科学系)
- 小野 滋(京都府立医科大学・医学(系)研究科(研究院))
- 家入 里志(鹿児島大学 学術研究院 医歯学域医学系)
- 井上 幹大(藤田医科大学 医学部 小児外科)
- 小幡 聡(福岡大学 医学部 呼吸器・乳腺内分泌・小児外科)
- 内田 恵一(三重県立総合医療 センター 小児外科)
- 松本 主之(岩手医科大学医学部 内科学講座消化器内科消化管分野)
- 梅野 淳嗣(九州大学 九州大学病院 )
- 水落 建輝(久留米大学 医学部 小児科)
- 加藤 聖子(九州大学 大学院医学研究院 生殖病態生理学)
- 木下 義晶(新潟大学 大学院医歯学総合研究科 小児外科)
- 浅沼 宏(慶應義塾大学 医学部)
- 宮田 潤子(秋吉 潤子)(九州大学 大学院医学研究院)
- 菱木 知郎(千葉大学 大学院医学研究院)
- 藤野 明浩(慶應義塾大学 医学部)
- 野坂 俊介(独立行政法人 国立成育医療研究センター 放射線診療部 放射線診断科)
- 加治 建(久留米大学医学部 小児外科)
- 奥山 宏臣(国立大学法人大阪大学 大学院医学系研究科 小児成育外科学)
- 和田 基(東北大学 大学院医学系研究科 小児外科学分野)
- 松浦 俊治(国立大学法人九州大学 大学院医学研究院)
- 増本 幸二(国立大学法人筑波大学 医学医療系 臨床医学域 小児外科)
- 文野 誠久(京都府立医科大学 大学院医学研究科 小児外科学)
- 臼井 規朗(地方独立行政法人大阪府立病院機構 大阪母子医療センター 小児外科)
- 藤代 準(東京大学 医学部附属病院)
- 上原 秀一郎(日本大学 医学部 外科学系小児外科学分野)
- 渕本 康史(学校法人国際医療福祉大学 医学部小児外科)
- 内田 広夫(国立大学法人東海国立大学機構 名古屋大学大学院医学系研究科 小児外科学)
- 廣瀬 龍一郎(福岡大学 医学部外科学講座 呼吸器・乳腺内分泌・小児外科)
- 尾花 和子(埼玉医科大学 大学病院 小児外科)
- 浮山 越史(杏林大学 医学部 小児外科学教室)
- 窪田 満(国立研究開発法人 国立成育医療研究センター 総合診療部)
- 吉住 朋晴(九州大学 大学院医学研究院)
- 桐野 浩輔(国立成育医療研究センター 臨床研究センター データサイエンス部門)
- 米田 光宏(国立研究開発法人国立成育医療研究センター 小児外科系専門診療部)
- 大賀 正一(国立大学法人九州大学 大学院医学研究院 成長発達医学分野)
- 盛一 享徳(国立成育医療研究センター 研究所 小児慢性特定疾病情報室)
- 小田 義直(九州大学 大学院医学研究院 形態機能病理学)
- 義岡 孝子(国立研究開発法人 国立成育医療研究センター 病理診断部)
- 要 匡(国立成育医療研究センター ゲノム医療研究部)
- 孝橋 賢一(大阪公立大学 大学院医学研究科)
- 松尾 忠行(福岡医療短期大学 歯科衛生学科)
- 小林 徹(国立成育医療研究センター 臨床研究センター データサイエンス部門)
- 猪股 裕紀洋(労働者健康安全機構 熊本労災病院)
- 岡 暁子(福岡歯科大学 口腔歯学部)
- 米田 雅裕(福岡歯科大学 口腔歯学部)
- 吉住 潤子(小野 潤子)(福岡歯科大学 口腔歯学部 口腔外科)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 難治性疾患政策研究
研究開始年度
令和5(2023)年度
研究終了予定年度
令和7(2025)年度
研究費
27,100,000円
研究者交替、所属機関変更
-
研究報告書(概要版)
研究目的
先行研究班(H23, H24-H25, H26-28, H29-31, R2-4厚労科研難治性疾患等政策研究事業)による継続的な活動により、ヒルシュスプルング病類縁疾患の重症3疾患、ヒルシュスプルング病の重症型、乳幼児肝巨大血管腫、非特異性多発性小腸潰瘍、総排泄腔外反症・遺残の8疾患が指定難病と小慢に、仙尾部奇形腫、短腸症が小慢に認定された。
本研究班の研究目的は、上記研究班での実績を生かし、1)指定難病および小慢の認定、2)診断法の開発と整備、3)レジストリと長期フォローアップ体制の構築、4)疾患の啓蒙活動、5)コンサルテーションシステムの構築、である。
本研究班の研究目的は、上記研究班での実績を生かし、1)指定難病および小慢の認定、2)診断法の開発と整備、3)レジストリと長期フォローアップ体制の構築、4)疾患の啓蒙活動、5)コンサルテーションシステムの構築、である。
研究方法
先行研究班の対象疾患を絞り、また一部は分割や統合を図り、より実質的に動きやすい11疾患グループを構築する。グループ毎に必要な課題解決に向けて調査や情報収集を行う。既に指定難病に認定されている疾患は、診断基準や重症度の適宜改訂、疾患レジストリおよび長期フォローアップ体制の構築、コンサルテーションシステムの構築、ガイドラインの作成や改訂を進める。指定難病の認定をめざす疾患は、エビデンスの蓄積、診断基準・重症度分類の作成と日本医学会分科会の学会の承認を得るプロセスを進める。小慢に認定されていない疾患は小慢申請に向けた準備を進める。また、疾患横断的な11のグループが情報提供や検証を行い、臨床研究の質を向上させる(組織図参照)。以下、具体的に体制と計画を提示する。疾患別の当該年度(令和5年、6年、7年)の具体的な研究計画・方法は表および流れ図にまとめた。また診断精度の向上のためゲノム診断と中央病理診断の構築を進める。
結果と考察
現在、小児慢性特定疾病や指定難病に認定されていない疾患については、そのゴールの設定に関して議論を繰り返し、コンセンサスに至った。その結果、3疾患を小児慢性特定疾患に申請し、そのなかで「先天性食道閉鎖症」が指定される見通しとなった。
ガイドラインの改訂が必要な疾患に関しては、あらたに全国調査が必要な疾患としてヒルシュスプルング病類縁疾患3疾患と重症型ヒルシュスプルング病が抽出され、今年度はその準備を行った。次年度調査を開始する予定である。
移行期・成人期を含む長期フォローアップについてはすべての疾患で共通の課題であるが、移行期成人期を、小児診療科が診るべきか成人診療科が診るべきかはまだ議論を重ねる必要がある。日本小児外科学会から発信された「外科疾患を有する児の成人期以降についてのガイドブック」は1つの指針となっている。
レジストリ構築は、単回のアンケート調査ではなく繰り返し情報収集が可能なデータベース構築がいくつかの疾患で求められているが、「どのような項目を」「どの施設が」「どのように」収集・保持していくのか、たびたび議論したが、コストを含めて問題点が多い。しかし共通の観察項目を繰り返し長期間にわたり観察していくという理念こそが、長期フォローアップの問題解決にも必要であり、並行して議論していく必要がある。
今回の研究班の目玉ともいえるゲノム診断体制の構築、中央病理診断の構築は、それぞれ進捗がみられた。MMIHS疑診例でゲノム解析により ACTG2 の病的バリアントが見出され、MMIHSの早期診断となり、速やかな治療対応へと結びついた症例が抽出された。中央病理診断はデジタルパソロジーを用いたシステム構築を開始した。また、小児歯科・成人歯科からの難病対策として、歯科のフォローアップ調査が開始された。
疾患の啓発活動や患者会との連携は、リンパ管腫と総排泄腔グループにおいて活発な成果がみられた。
ASEAN諸国への啓発活動もコロナ禍が明けてスタートした。
ガイドラインの改訂が必要な疾患に関しては、あらたに全国調査が必要な疾患としてヒルシュスプルング病類縁疾患3疾患と重症型ヒルシュスプルング病が抽出され、今年度はその準備を行った。次年度調査を開始する予定である。
移行期・成人期を含む長期フォローアップについてはすべての疾患で共通の課題であるが、移行期成人期を、小児診療科が診るべきか成人診療科が診るべきかはまだ議論を重ねる必要がある。日本小児外科学会から発信された「外科疾患を有する児の成人期以降についてのガイドブック」は1つの指針となっている。
レジストリ構築は、単回のアンケート調査ではなく繰り返し情報収集が可能なデータベース構築がいくつかの疾患で求められているが、「どのような項目を」「どの施設が」「どのように」収集・保持していくのか、たびたび議論したが、コストを含めて問題点が多い。しかし共通の観察項目を繰り返し長期間にわたり観察していくという理念こそが、長期フォローアップの問題解決にも必要であり、並行して議論していく必要がある。
今回の研究班の目玉ともいえるゲノム診断体制の構築、中央病理診断の構築は、それぞれ進捗がみられた。MMIHS疑診例でゲノム解析により ACTG2 の病的バリアントが見出され、MMIHSの早期診断となり、速やかな治療対応へと結びついた症例が抽出された。中央病理診断はデジタルパソロジーを用いたシステム構築を開始した。また、小児歯科・成人歯科からの難病対策として、歯科のフォローアップ調査が開始された。
疾患の啓発活動や患者会との連携は、リンパ管腫と総排泄腔グループにおいて活発な成果がみられた。
ASEAN諸国への啓発活動もコロナ禍が明けてスタートした。
結論
本研究班では、完成したガイドラインの普及やガイドライン完成に向けた作業、ガイドライン改定に向けた方針策定、全国調査の準備、診断や分類に関する提言、現状調査や長期フォローアップデータの収集とおよび問題点の抽出、疾患の啓発活動や患者会との連携といったそれぞれの疾患の置かれた状況に応じた着実な進捗を果たすことができた。
小児慢性特定疾病への申請は「胃食道逆流症」「先天性食道閉鎖症」「高位・中間位鎖肛」の3疾患を対象に申請を行った。その結果、「先天性食道閉鎖症」が新たに小児慢性特定疾病に選定される見通しとなった。
ゲノム診断の構築、中央病理診断の構築も予定した進捗がみられた。
小児慢性特定疾病への申請は「胃食道逆流症」「先天性食道閉鎖症」「高位・中間位鎖肛」の3疾患を対象に申請を行った。その結果、「先天性食道閉鎖症」が新たに小児慢性特定疾病に選定される見通しとなった。
ゲノム診断の構築、中央病理診断の構築も予定した進捗がみられた。
公開日・更新日
公開日
2025-05-30
更新日
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