小児四肢疼痛発作症における疼痛指標を含む重症度分類および診療体制の構築に関する研究

文献情報

文献番号
202310020A
報告書区分
総括
研究課題名
小児四肢疼痛発作症における疼痛指標を含む重症度分類および診療体制の構築に関する研究
研究課題名(英字)
-
課題番号
22FC1006
研究年度
令和5(2023)年度
研究代表者(所属機関)
高橋 勉(秋田大学 大学院医学系研究科)
研究分担者(所属機関)
  • 野口 篤子(秋田大学医学部小児科)
  • 原田 浩二(京都大学 大学院医学研究科)
  • 手塚 徹(京都大学 医学研究科・医学教育・国際化推進センター)
  • 吉田 健司(京都大学 大学院医学研究科 発達小児科学)
  • 秋岡 親司(京都府立医科大学大学院医学研究科小児科学)
  • 天谷 文昌(京都府立医科大学 大学院医学研究科)
  • 奥田 裕子(京都大学大学院 医学研究科 疼痛疾患創薬科学)
  • 白石 秀明(北海道大学病院)
  • 衞藤 薫(東京女子医科大学 附属足立医療センター 小児科 医学部)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 難治性疾患政策研究
研究開始年度
令和4(2022)年度
研究終了予定年度
令和5(2023)年度
研究費
1,350,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
小児四肢疼痛発作症は、乳幼児期に始まり小児期中心に四肢疼痛発作を繰返す遺伝性疼痛疾患である(Okuda et al. PLoS One、2016)。
本年度は前年に準備した「小児の疼痛指標を含んだ重症度分類」作成のための調査研究を実施し、また可能な範囲で成人患者の評価を行い、難病要件の適合性について評価を予定した。
研究方法
1.疼痛疾患の特性に基づいた「小児の疼痛指標を含んだ重症度分類」の作成
前全国疫学調査で把握された患者において、小児四肢疼痛発作症の重症度分類を創案し、疼痛疾患としてその特性に合った重症度を作成するため、本疾患の特性を拾い上げた重症度分類を作成する。候補となる疼痛評価尺度を選定し、全国疫学調査(2次)での患者レジストリ164名のうち10名前後を対象としてパイロット調査を実施し、回答の困難さなどがないことを確認した上で全国へ配布する。
2.非典型例(成人例)に対する国内調査
前研究国内調査で登録された164名のうち、明らかとなった非典型例(疼痛成人期移行群)に対して、成人期の臨床症状の調査を実施する。令和5年度は、実際の調査を実施し、データを集計して成人期の現状を明らかとする。
3.疾患啓発と患者会設立支援
前研究で作成した疾患ホームページ公開の更新、疾患ハンドブックとパンフレットを用いた学会や学校生活支援団体などへの疾患啓発、患者会の設立支援や講演会開催支援など行う。
4.研究班会議の開催予定
研究代表者の所属施設事務局として、年2回の研究班会議をWeb開催する。疼痛評価を含んだ重症度分類の作成については、担当者間が相互連絡を取りながら実施する。
結果と考察
1.「小児の疼痛指標を含んだ重症度分類」の作成 
令和5年度は、昨年度に準備した調査書類をこれまでに遺伝学的評価の依頼をうけて解析した患者の主治医へ郵送し、患者より直接研究事務局へ回答を返送してもらい、小児患者29名(調査時年齢は3.7―18.5歳(平均8.9歳))から回答を得た。重症度分類を暫定的に規定するにあたり、これらをスコア化しほぼ1/3ずつ軽症・中等症・重症となるよう分類したところ、今回の回答群は各8名・14名・7名に仕分けされ、作成した重症度スコアを使用すると全体症例が極度に偏ることなく三分されることが伺えた。
2.疼痛成人期移行群に対する調査研究
令和5年度は上述の調査書類をこれまでに遺伝学的評価の依頼をうけて解析した患者の主治医へ郵送し、患者より直接研究事務局へ回答を返送してもらい、成人24名から回答を得た。成人期にも症状残存していえる例が21名(87%)と多数であり、平均 発作回数は4.6回/月 (0.3-20回/月)、強い発作時のNRSは平均8.1(2-10)、一般的な発作時NRSは平均5.1(2-8)であり、またPDAS(慢性疼痛の指標)スコアは平均39.5点と高値であった。一方HADSスコアに関しては不安尺度の平5.3、抑うつ尺度の平均5.1点であり、有意な精神衛生上の問題点は存在しないも、社会生活へは依然影響が残存することが示された。
3.疾患啓発と患者会設立支援
前研究で作成した疾患ホームページを引継ぎ運用し、随時患者や各医療機関からの問い合わせを受け、一部は患者居住地域近くの共同研究機関への紹介・受診につながった。また患者会準備委員会が運営するSNS立ち上げに関し医学的な見地からサポートし、令和5年度も12/20にオンラインセミナーを開催し、「遺伝」、および「痛み」をテーマにした班員の講演(秋岡親司医師、吉田健二医師)とその後の患者・班員間の交流会の二部構成とした。
4. 遺伝学的検査の提供体制の整備
全国的に本疾患の認知度が高まりつつあり、遺伝学的検査のニーズは常に存在するようになったため、かずさDNA研究所での遺伝学的検査受託を依頼、2022年11月から実施可能となった。SCN11A, SCN10A, SCN9Aの3遺伝子をNGSで解析し、以後これまでに全国から48例の遺伝学的評価の依頼があり、データに関する評価支援を実施した。
結論
本疼痛疾患の特性・客観的な指標に基づいた「小児の疼痛指標を含んだ重症度分類」作成のための調査研究を実施し、また並行して成人患者の臨床の現状評価を行い、難病要件の適合性について評価をするための基礎データを蓄積した。これらの全国臨床調査を実施したことで国内患者の臨床の実態が把握され、またAMEDとの連携により、希少疾患ではあるも継続的な患者発掘と啓蒙、治験へのリクルート活動を完遂した。AMED研究はR4年度で終了となったが、かずさDNA研究所での検査体制が整備されたことで継続的に国内患者への遺伝学的検査の提供が可能となり、また以前からの研究班ホームページからの情報発信の継続、患者交流会などの活動により、小児四肢疼痛発作症の診療体制構築の進歩に寄与した。

公開日・更新日

公開日
2025-05-30
更新日
-

研究報告書(PDF)

公開日・更新日

公開日
2025-05-30
更新日
-

研究報告書(紙媒体)

文献情報

文献番号
202310020B
報告書区分
総合
研究課題名
小児四肢疼痛発作症における疼痛指標を含む重症度分類および診療体制の構築に関する研究
研究課題名(英字)
-
課題番号
22FC1006
研究年度
令和5(2023)年度
研究代表者(所属機関)
高橋 勉(秋田大学 大学院医学系研究科)
研究分担者(所属機関)
  • 野口 篤子(秋田大学医学部小児科)
  • 原田 浩二(京都大学 大学院医学研究科)
  • 手塚 徹(京都大学 医学研究科・医学教育・国際化推進センター)
  • 吉田 健司(京都大学 大学院医学研究科 発達小児科学)
  • 秋岡 親司(京都府立医科大学大学院医学研究科小児科学)
  • 天谷 文昌(京都府立医科大学 大学院医学研究科)
  • 奥田 裕子(京都大学大学院 医学研究科 疼痛疾患創薬科学)
  • 白石 秀明(北海道大学病院)
  • 衞藤 薫(東京女子医科大学 附属足立医療センター 小児科 医学部)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 難治性疾患政策研究
研究開始年度
令和4(2022)年度
研究終了予定年度
令和5(2023)年度
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
これまでの患者レジストリ構築の過程において本疾患の重症度の多様性の存在、そして成人期にも症状が持続する症例が存在することが判明した。疾患の実態をさらに明確とし患者の医療ニーズを把握すること、また成人患者の難病要件の適合性について検討するための疫学・臨床実体の把握を目的として、調査を行った。
研究方法
1.「小児の疼痛指標を含んだ重症度分類」の作成 
最初に小児四肢疼痛発作症の重症度分類を創案した。疾患特性に合った重症度を作成するため、一般的に認知・使用されている疼痛指標であるFRS(Facial Rating Scale)、PedsQLなどを参照し、本研究の対象が小児であるため症状を的確に言語化できないこと、痛み以外に客観的な指標がないこと、疼痛が発作性であること、などの特殊性を考慮し、主にPedsQLの内容を包含した重症度分類案を作成した。
2.疼痛成人期移行群に対する調査研究
成人期の有症状頻度、疼痛の特徴、QOL調査のため、その調査項目と調査計画について審議し、倫理委員会承認を得た。既存の評価尺度としてHADS、PDASを採用し、調査票に含めた。
3.疾患啓発と患者会設立支援
前研究で作成した疾患ホームページを引継ぎ運用し、随時患者や各医療機関からの問い合わせを受けた。一部は患者居住地域近くの共同研究機関への紹介・受診につながった。また患者会準備委員会が運営するSNS立ち上げに関し医学的な見地からサポートした。疾患啓発の一環として令和4年度末にオンラインセミナーを開催し、班員の講演(手塚徹氏、野口篤子)、患者交流会も含め多くの参加を得た。令和5年度も12/20にオンラインセミナーを開催し、「遺伝」、および「痛み」をテーマにした班員の講演(秋岡親司医師、吉田健二医師)とその後の患者・班員間の交流会の二部構成とした。
4.AMED研究(CiCLE課題045:家族性小児四肢疼痛発作症に対する新規治療薬の開発研究)との連携
 令和4年度は、年度中に判明した新規患者のレジストリ登録を行いAMED研究と連携した。
5. 遺伝学的検査の提供体制の整備
本研究の期間前半はAMED研究との連携によって遺伝学的検査提供を行ってきた。徐々に全国的に本疾患の認知度が高まりつつあり、その連携が終了したあとも遺伝学的検査のニーズは常に存在するようになったため、かずさDNA研究所での遺伝学的検査受託を依頼、2022年11月から実施可能となった。SCN11A, SCN10A, SCN9Aの3遺伝子をNGSで解析し、データの評価支援は当研究班員が担当することとした。以後これまでに全国から48例の遺伝学的評価の依頼があり、データに関する評価支援を実施した。
6. 診断基準の策定とその評価
研究班で蓄積した臨床情報および遺伝学的情報をもとにexpert opinionとして一旦暫定臨床診断基準を作成し、これまでのレジストリ症例における一致率を検証した。
結果と考察
前研究(令和元年度厚生科研「新規の小児期の疼痛疾患である小児四肢疼痛発作症の診断基準の確立と患者調査」) を踏まえ、本疾患の特性と客観的な指標に基づいた「小児の疼痛指標を含んだ重症度分類」作成のための小児疼痛評価法の作成、生活/発達状況、QOLを含めた調査を実施した。
臨床情報に関する質問紙を、これまでに遺伝学的評価の依頼をうけて解析した患者の主治医へ郵送し、外来で患者へ手渡しいただいた。その後患者自身が直接回答の上で研究事務局へ郵送していただいた。1)小児の重症度分類に関してはその内容を各項目(①月の発作回数、②体育やスポーツ活動への影響、③睡眠への影響、④日常生活制限の有無、⑤他臓器症状の有無、⑥薬物使用状況、⑦疼痛の程度(NRS表記)ごとに点数でスコア化し、総計を三分することで軽症・中等症・重症に分けることを試みた。
2)成人の臨床調査では、成人期の症状残存の有無、ある場合は疼痛発作誘因、月の発作回数、疼痛の強さ(NRS表記)、日常生活への影響、薬物使用状況、PDASスコア、HADSスコアについて回答を得た。成人の87%が成人後も何らかの症状残存を呈しており、慢性疼痛のスコアPDASも平均39点と高値であることが判明した。小児期ほどではないが育児や就労を始めとしたQOLの低下、社会生活への影響が残存することが示された。
またかずさDNA研究所の検査体制が整備され、継続的に国内患者への遺伝学的検査提供が可能となった。
結論
全国臨床調査を実施したことで国内患者の臨床の実態が把握されてきた。またAMEDとの連携により、希少疾患ではあるも継続的な患者発掘と啓蒙、治験へのリクルート活動を完遂した。AMED研究はR4年度で終了となったが、かずさDNA研究所での検査体制が整備されたことで継続的に国内患者への遺伝学的検査の提供が可能となった。

公開日・更新日

公開日
2025-05-30
更新日
-

研究報告書(PDF)

公開日・更新日

公開日
2025-05-30
更新日
-

研究報告書(紙媒体)

行政効果報告

文献番号
202310020C

収支報告書

文献番号
202310020Z
報告年月日

収入

(1)補助金交付額
1,755,000円
(2)補助金確定額
1,315,000円
差引額 [(1)-(2)]
440,000円

支出

研究費 (内訳) 直接研究費 物品費 427,640円
人件費・謝金 0円
旅費 98,810円
その他 383,550円
間接経費 405,000円
合計 1,315,000円

備考

備考
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公開日・更新日

公開日
2024-09-19
更新日
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