テーラーメイド治療を目指した肝炎ウイルスデータベース構築に関する研究

文献情報

文献番号
200933013A
報告書区分
総括
研究課題名
テーラーメイド治療を目指した肝炎ウイルスデータベース構築に関する研究
課題番号
H19-肝炎・一般-013
研究年度
平成21(2009)年度
研究代表者(所属機関)
田中 靖人(公立大学法人名古屋市立大学 大学院医学研究科)
研究分担者(所属機関)
  • 徳永 勝士(東京大学 大学院医学系研究科)
  • 五條堀 孝(国立遺伝学研究所 生命情報・DDBJ研究センター)
  • 溝上 雅史(国立国際医療センター国府台病院 肝炎・免疫研究センター )
  • 本多 政夫(金沢大学 医薬保健研究域保健学系)
  • 黒崎 雅之(武蔵野赤十字病院)
  • 長尾 由実子(久留米大学 医学部)
  • 新井 理(公立大学法人名古屋市立大学 大学院医学研究科)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 肝炎等克服緊急対策研究
研究開始年度
平成19(2007)年度
研究終了予定年度
平成21(2009)年度
研究費
45,864,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
肝炎ウイルス感染に対する応答性や薬剤応答性の個人差に関わるヒト及びウイルス両方の遺伝子要因を同一個体内で明らかにし、これらのデータを網羅的に収集する組織作りを行い、統合的にデータベース化し解析することにより、ヒト側要因とウイルス側要因の両方を考慮した知見を得ることを目的とする。
研究方法
全国24施設より検体及び付帯情報を収集。90万種のSNPタイピングを行い、患者群を病態および薬剤応答性に応じてサブグループに分類してゲノムワイド関連分析を行った。肝炎テーラーメイド治療を目指した各種要因の解明のため、21年度はPEG-IFN/RBV併用療法の治療抵抗性因子としてSNPsやウイルス因子などを検討した。最終的に、肝炎ウイルス統合データベースとして、SNPデータ、ゲノムワイド関連解析結果、検体に付随する臨床情報を統一的に管理し、解析に供することのできるデータベースを構築する。
結果と考察
1) PEG-IFN/RBV併用療法の治療無効例と有効例でゲノムワイド関連分析を行った結果、IL28B遺伝子周辺に治療無効に関連する有意なSNPを発見した。2) 治療無効を予測する因子を同定するために、各種因子を加えてデータマイニング解析を行った結果、IL28Bが最も効率的な予測因子であった。3) IL28B minor群ではInterferon stimulated geneを高発現しているケースが多く、IL28B major群では低発現でありIFN療法の反応が良好である傾向が認められた。4) 重複癌発生に関わる因子は、Stage IV、HCV抗体陽性、70歳以上の年齢層であった。5) 患者SNPs情報を、その臨床的背景情報とともに管理、解析するデータベースを構築し、収集したデータの登録を行った。
結論
ウイルス遺伝子情報、SNP情報、臨床情報を統合し肝炎ウイルス統合データベースのプロトタイプは完成したので、早期公開を目指す。今後は遺伝子発現データとの統合、さらにはデータマイニング解析によりウイルス、宿主、臨床情報の各因子を統合して解析することが可能となる。患者SNPsとウイルス変異の組み合わせから病態進展の予測及びハイリスク群の抽出が可能となり、テーラーメイド治療への展開ができる。

公開日・更新日

公開日
2011-06-02
更新日
-

文献情報

文献番号
200933013B
報告書区分
総合
研究課題名
テーラーメイド治療を目指した肝炎ウイルスデータベース構築に関する研究
課題番号
H19-肝炎・一般-013
研究年度
平成21(2009)年度
研究代表者(所属機関)
田中 靖人(公立大学法人名古屋市立大学 大学院医学研究科)
研究分担者(所属機関)
  • 徳永 勝士(東京大学 大学院医学系研究科)
  • 五條堀 孝(国立遺伝学研究所 生命情報・DDBJ研究センター)
  • 溝上 雅史(国立国際医療センター国府台病院 肝炎・免疫研究センター )
  • 本多 政夫(金沢大学 医薬保健研究域保健学系)
  • 黒崎 雅之(武蔵野赤十字病院)
  • 長尾 由実子(久留米大学 医学部)
  • 新井 理(公立大学法人名古屋市立大学 大学院医学研究科 )
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 肝炎等克服緊急対策研究
研究開始年度
平成19(2007)年度
研究終了予定年度
平成21(2009)年度
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
肝炎ウイルス感染に対する応答性や薬剤応答性の個人差に関わるヒト及びウイルス両方の遺伝子要因を同一個体内で明らかにし、これらのデータを網羅的に収集する組織作りを行い、統合的にデータベース化し解析することにより、ヒト側要因とウイルス側要因の両方を考慮した知見を得ることを目的とする。
研究方法
全国24施設より検体及び付帯情報を収集し、慢性ウイルス性肝疾患患者から合計1,756検体を得た。健常対照者200検体及び肝疾患群641検体について90万種のSNPタイピングを終了し、各SNPのアリル頻度、遺伝子型頻度等について健常者群、患者群、肝炎亜型患者群の間でゲノムワイド関連分析を行った。肝炎テーラーメイド治療を目指した各種要因の解明のため、B型肝炎やC型肝炎の病態進展に寄与する因子及びPEG-IFN/RBV併用療法の治療抵抗性因子としてSNPsやウイルス因子などを検討した。最終的に、肝炎ウイルス統合データベースとして、SNPデータ、ゲノムワイド関連解析結果、検体に付随する臨床情報を統一的に管理し、解析機能を有するデータベースを構築する。
結果と考察
1) B型肝炎キャリア化に関連するHLA-DPA1、HLA-DPB1遺伝子を含む遺伝子領域に有意なSNPマーカーを検出した。2) PEG-IFN/RBV併用療法の治療無効例と有効例でゲノムワイド関連分析を行った結果、IL28B遺伝子周辺に治療無効に関連する有意なSNPを発見した。3) 治療無効を予測する因子を同定するために、各種因子を加えてデータマイニング解析を行った結果、IL28Bが最も効率的な予測因子であった。4) IL28B minor群ではInterferon stimulated geneを高発現しているケースが多く、IL28B major群では低発現でありIFN療法の反応が良好である傾向が認められた。5) 重複癌発生に関わる因子は、Stage IV、HCV抗体陽性、70歳以上の年齢層であった。6) 患者SNPs情報を、その臨床的背景情報とともに管理、解析するデータベースを構築し、収集したデータの登録を行った。
結論
ウイルス遺伝子情報、SNP情報、臨床情報を統合し肝炎ウイルス統合データベースのプロトタイプは完成したので、早期公開を目指す。今後は遺伝子発現データとの統合、さらにはデータマイニング解析によりウイルス、宿主、臨床情報の各因子を統合して解析することが可能となる。患者SNPsとウイルス変異の組み合わせから病態進展の予測及びハイリスク群の抽出が可能となり、テーラーメイド治療への展開ができる。

公開日・更新日

公開日
2011-06-02
更新日
-

行政効果報告

文献番号
200933013C

成果

専門的・学術的観点からの成果
C型肝炎に対するペグインターフェロン+リバビリン(PEG-IFN/RBV)併用療法に対する応答性を規定するIL28B遺伝子多型に加えて、副作用としての貧血や血小板減少に関連するITPA遺伝子多型を同定した。成果はNature Geneticsなどに掲載され、国内外から大きな反響があった。これまで得られたSNP情報、ウイルス遺伝子情報、臨床情報に加えて遺伝子発現情報を統合し、肝炎ウイルス統合データベースのプロトタイプは完成した。現在、データベースの公表に向けて準備を進めている。
臨床的観点からの成果
IL28B遺伝子検査は現在先進医療に承認され、治療前の効果予測因子として臨床応用されている。さらに、本データベースを参照することにより、患者SNPsとウイルス変異の組み合わせから病態進展の予測及びハイリスク群の抽出が可能となり、テーラーメイド治療への展開が期待される。従って、適切な治療法の選択および新たな治療法の開発で患者の予後を改善するのみならず、肝硬変・肝癌という高度な医療が必要な患者数を減らすことにより、医療費の低減に繋がり、社会の福祉に寄与することができる。
ガイドライン等の開発
「1型高ウイルス量症例でIFN+Ribavirin併用療法を開始にあたってのホスト側の因子(IL28B)およびウイルス側の因子(ISDR及びCore aa70)からみた治療適応」として、平成23年度B型C型慢性肝炎・肝硬変治療ガイドラインに明記された。現在、実際の臨床においても、IL28B遺伝子検査は簡便で実用性が高い検査として活用されている。
その他行政的観点からの成果
「IL28Bの遺伝子型測定によるインターフェロン治療効果予測」として先進医療にも認可され、肝疾患連携拠点病院を中心に臨床応用されている。測定により治療の前に根治の見込める患者群を選別し、無効な人にとっては無用な苦痛、出費から免れることができ、医療費の削減にも繋がる。今後、保険収載されることで、一般臨床においても広く活用される事が期待できる。
その他のインパクト
2009年9月の名古屋市立大学HPに続き、名古屋市立大学病院、肝疾患センターHP(http://www.med.nagoya-cu.ac.jp/kanen/index.html)においても「先進医療」IL28B遺伝子検査として掲載され、一般国民への普及・啓発活動を行っている。平成22年度中には第45回欧州肝臓学会、第61回米国肝臓学会議などの国際学会においてIL28B SNP関連の研究成果を発表し情報提供ができた。

発表件数

原著論文(和文)
1件
原著論文(英文等)
12件
その他論文(和文)
0件
その他論文(英文等)
0件
学会発表(国内学会)
8件
学会発表(国際学会等)
18件
その他成果(特許の出願)
0件
「出願」「取得」計0件
その他成果(特許の取得)
0件
その他成果(施策への反映)
1件
「IL28Bの遺伝子型測定によるインターフェロン治療効果予測」として先進医療にも認可
その他成果(普及・啓発活動)
1件
名古屋市立大学病院肝疾患センターHP(http://www.med.nagoya-cu.ac.jp/kanen/index.html)にて「先進医療」IL28B遺伝子検査として掲載

特許

主な原著論文20編(論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限る)

論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限ります。

原著論文1
Tanaka Y, Tokunaga K, Mizokami M. et al.
Genome-wide association of IL28B with response to pegylated interferon-alpha and ribavirin therapy for chronic hepatitis C.
Nature Genetics. , 41 (10) , 1105-1109  (2009)
原著論文2
Sugiyama M, Tanaka Y, Mizokami M. et al.
Direct Cytopathic Effects of Particular Hepatitis B Virus Genotypes in uPA/SCID Mouse with Human Hepatocytes.
Gastroenterology , 136 (2) , 652-662  (2009)
原著論文3
Tanaka Y, Sugiyama M, Mizokami M. et al.
Characteristics of hepatitis B virus genotype G coinfected with genotype H in Chimeric Mice Carrying Human Hepatocytes.
Virology. , 376 (2) , 408-415  (2008)
原著論文4
Kurosaki M, Tanaka Y,Mizokami M. et al.
Pretreatment Prediction of Response to Pegylated-Interferon Plus Ribavirin for Chronic Hepatitis C using Genetic Polymorphism in IL28B and Viral Factors.
J Hepatol. , 54 (3) , 439-448  (2011)
原著論文5
Sakamoto N, Tanaka Y, Mizokami M, Watanabe M. et al.
ITPA gene variant protects against anemia induced by pegylated interferon-α and ribavirin therapy for Japanese patients with chronic hepatitis C.
Hepatol Res. , 40 (11) , 1063-1071  (2010)
原著論文6
Honda M, Tanaka Y, Tokunaga K, Mizokami M, Kaneko S. et al.
Hepatic ISG expression is associated with genetic variation in interleukin 28B and the outcome of IFN therapy for chronic hepatitis C.
Gastroenterology , 139 (2) , 499-509  (2010)

公開日・更新日

公開日
2015-06-03
更新日
-