慢性活動性 EBV 病の疾患レジストリ情報に基づく病型別根治療法の確立慢性活動性EBV病の疾患レジストリ情報に基づく病型別根治療法の確立

文献情報

文献番号
202310018A
報告書区分
総括
研究課題名
慢性活動性 EBV 病の疾患レジストリ情報に基づく病型別根治療法の確立慢性活動性EBV病の疾患レジストリ情報に基づく病型別根治療法の確立
研究課題名(英字)
-
課題番号
22FC1004
研究年度
令和5(2023)年度
研究代表者(所属機関)
大賀 正一(国立大学法人九州大学 医学研究院成長発達医学分野)
研究分担者(所属機関)
  • 新井 文子(聖マリアンナ医科大学 医学部血液・腫瘍内科)
  • 今留 謙一(国立研究開発法人国立成育医療研究センター研究所 高度感染症診断部)
  • 大島 孝一(久留米大学 医学部)
  • 森 毅彦(国立大学法人東京医科歯科大学 大学院医歯学総合研究科血液内科学)
  • 和田 泰三(国立大学法人金沢大学 医薬保健研究域)
  • 笹原 洋二(国立大学法人東北大学 大学院医学系研究科)
  • 伊藤 嘉規(愛知医科大学 医学部)
  • 村松 秀城(国立大学法人東海国立大学機構 名古屋大学医学部附属病院)
  • 坂口 大俊(国立研究開発法人国立成育医療研究センター 小児がんセンター移植・細胞治療科 )
  • 澤田 明久(地方独立行政法人大阪府立病院機構大阪母子保健総合医療センター 病院・血液・腫瘍科)
  • 平井 陽至(国立大学法人岡山大学 岡山大学病院皮膚科)
  • 小林 徹(国立研究開発法人国立成育医療研究センター 臨床研究センターデータサイエンス部門)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 難治性疾患政策研究
研究開始年度
令和4(2022)年度
研究終了予定年度
令和5(2023)年度
研究費
2,690,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
海外では慢性活動性EBV病と総称される慢性活動性EBV感染症 (CAEBV:小児慢性特定疾患に指定)と、EBV関連血球貪食性リンパ組織球症、種痘様水疱症および蚊刺過敏症は、日本の小児~若年成人を中心として報告されている希少難病である。この4病型の臨床像は異なるが、EBV感染T細胞・NK細胞の増殖から、臓器不全に至る予後不良なものが多い。
これまで難治性疾患政策研究事業において、CAEBVとその類縁疾患の研究班は以下の成果を上げてきた。平成26~28年度、本疾患群に対する診断体制を確立し、診断基準・診療ガイドラインを作成した(CAEBVとその類縁疾患の診療ガイドライン2016; 日本小児感染症学会監修)。平成29~令和元年度には4疾患のレジストリ・バイオバンクの基盤を構築し、この間に本疾患群の発症病理解明、診断法確立、新規治療法開発に努めた。これらを受け、令和2年~3年度には発刊後6年となる診療ガイドラインの改訂作業に着手した。しかし、改訂作業を通じ、改めて、診断に必須である感染細胞の迅速かつ汎用性の高い同定法の確立、予後因子や至適治療法に関するさらなるエビデンス創出の必要性が明らかになった。
具体的には、CAEBV以外の3病型の詳細な臨床像や、各病型間の移行に関して、未だ不明な点が多い。CAEBVは造血細胞移植が唯一の根治療法で、特異的治療薬はない。病態解明と至適治療法の開発は喫緊の課題である。一方、その他の3病型の至適治療法、特に造血幹細胞移植の適応を明確にする必要がある。
CAEBVと類縁疾患は病変が経過とともに全身に進展するため、特定の疾患領域/診療科での診療に帰属させにくい。また、患者年齢は幅広く小児からAYA世代、そして成人までを一体として研究・診療をすすめる体制が望まれる。患者は東アジアに集中していたが、2017年改訂のWHO造血器腫瘍分類に記載されて以降、世界的にも報告が増えてきた。日本をはじめとする東アジアに患者が多いため、私たちの情報発信と研究推進の意義は大きい。
本研究では、集積したCAEBVとその類縁疾患のレジストリ情報に基づいて、正確な診断と病型別の根治療法確立を目指して、① 診療ガイドラインの世界標準へ向けた改定(英文化)、②造血細胞移植の最適化を主眼とした治療指針のエビデンスの創出、③迅速なEBV感染細胞同定法の開発を目指す。
研究方法
a. 初版診療ガイドラインの内容を再検討し、改訂を完了して、英文化を開始する。
b. 疾患レジストリ登録を進めて、治療に関わる課題を抽出し解析を目的として討議を行う。
c. 汎用性の高い感染細胞同定法を開発し、開発中の新規診断薬開発を推進する。
d. 治療法確立に向けたシンポジウムと患者向けの公開講座を開催する。
結果と考察
診療指針が改訂され新規診断患者の登録も進んできたが、疾患重症度の多様性と類縁疾患への移行、遺伝性素因との関連、リンパ増殖性疾患から悪性リンパ腫などへの進行、が治療方針に大きく影響していること明確になってきた。これが診療に関わる各科でも共有されるようになった。一方で、これが適切な造血細胞移植の時期と方法の決定に関与し治療選択の難しさを象徴するものであることも集積症例の結果から示唆される。また指定難病の申請にあたって、日本医学会連合に属する日本血液学会(成人)および日本小児血液・がん学会に重症度分類および診断基準の学会承認を行った。(R5年末承認)
結論
EBV感染から炎症とリンパ増殖性疾患およびリンパ腫へと進展する本症の適切な治療介入の時期と方法の戦略を具体化するためのエビデンスが集積されてきている。疾患概念の国際化を進めて、根治のための造血細胞移植の至適化と同時に病勢制御の新規薬剤の開発を検討していくことが重要である

公開日・更新日

公開日
2025-07-02
更新日
-

研究報告書(PDF)

研究成果の刊行に関する一覧表
倫理審査等報告書の写し

公開日・更新日

公開日
2025-07-02
更新日
-

研究報告書(紙媒体)

文献情報

文献番号
202310018B
報告書区分
総合
研究課題名
慢性活動性 EBV 病の疾患レジストリ情報に基づく病型別根治療法の確立慢性活動性EBV病の疾患レジストリ情報に基づく病型別根治療法の確立
研究課題名(英字)
-
課題番号
22FC1004
研究年度
令和5(2023)年度
研究代表者(所属機関)
大賀 正一(国立大学法人九州大学 医学研究院成長発達医学分野)
研究分担者(所属機関)
  • 新井 文子(聖マリアンナ医科大学医学部)
  • 今留 謙一(国立研究開発法人 国立成育医療研究センター研究所)
  • 大島 孝一(久留米大学)
  • 森 毅彦(国立大学法人東京医科歯科大学)
  • 和田 泰三(国立大学法人金沢大学)
  • 笹原 洋二(国立大学法人東北大学)
  • 伊藤 嘉規(愛知医科大学)
  • 村松 秀城(国立大学法人東海)
  • 坂口 大俊(国立研究開発法人 国立成育医療研究センター)
  • 澤田 明久(地方独立行政法人大阪府立病院機構大阪母子保健総合医療センター)
  • 平井 陽至(国立大学法人岡山大学)
  • 小林 徹(国立研究開発法人 国立成育医療研究センター)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 難治性疾患政策研究
研究開始年度
令和4(2022)年度
研究終了予定年度
令和5(2023)年度
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
海外では慢性活動性EBV病と総称される慢性活動性EBV感染症 (CAEBV:小児慢性特定疾患に指定)と、EBV関連血球貪食性リンパ組織球症、種痘様水疱症および蚊刺過敏症は、日本の小児~若年成人を中心として報告されている希少難病である。この4病型の臨床像は異なるが、EBV感染T細胞・NK細胞の増殖から、臓器不全に至る予後不良なものが多い。
これまで難治性疾患政策研究事業において、CAEBVとその類縁疾患の研究班は以下の成果を上げてきた。平成26~28年度、本疾患群に対する診断体制を確立し、診断基準・診療ガイドラインを作成した(CAEBVとその類縁疾患の診療ガイドライン2016; 日本小児感染症学会監修)。平成29~令和元年度には4疾患のレジストリ・バイオバンクの基盤を構築し、この間に本疾患群の発症病理解明、診断法確立、新規治療法開発に努めた。これらを受け、令和2年~3年度には発刊後6年となる診療ガイドラインの改訂作業に着手した。しかし、改訂作業を通じ、改めて、診断に必須である感染細胞の迅速かつ汎用性の高い同定法の確立、予後因子や至適治療法に関するさらなるエビデンス創出の必要性が明らかになった。
具体的には、CAEBV以外の3病型の詳細な臨床像や、各病型間の移行に関して、未だ不明な点が多い。CAEBVは造血細胞移植が唯一の根治療法で、特異的治療薬はない。病態解明と至適治療法の開発は喫緊の課題である。一方、その他の3病型の至適治療法、特に造血幹細胞移植の適応を明確にする必要がある。
CAEBVと類縁疾患は病変が経過とともに全身に進展するため、特定の疾患領域/診療科での診療に帰属させにくい。また、患者年齢は幅広く小児からAYA世代、そして成人までを一体として研究・診療をすすめる体制が望まれる。患者は東アジアに集中していたが、2017年改訂のWHO造血器腫瘍分類に記載されて以降、世界的にも報告が増えてきた。日本をはじめとする東アジアに患者が多いため、私たちの情報発信と研究推進の意義は大きい。
本研究では、集積したCAEBVとその類縁疾患のレジストリ情報に基づいて、正確な診断と病型別の根治療法確立を目指して、① 診療ガイドラインの世界標準へ向けた改定(英文化)、②造血細胞移植の最適化を主眼とした治療指針のエビデンスの創出、③迅速なEBV感染細胞同定法の開発を目指す。
研究方法
a. 初版診療ガイドラインの内容を再検討し、改訂を完了して、英文化を進めた。
b. 疾患レジストリ登録を進めて、治療に関わる課題を抽出し解析を目的として討議を行う。
c. 汎用性の高い感染細胞同定法を開発し、開発中の新規診断薬開発を推進する。
d. 治療法確立に向けたシンポジウムと患者向けの公開講座を開催した。
結果と考察
・改訂作業を計画通り遂行し、R4年度内に出版予定である。HLH診療ガイドライン2020(資料4)、および種痘様水疱症リンパ増殖異常症(HV-LPD)と重症蚊刺アレルギー(SMBA)との整合性を検討した(R4年5-7月)。英文化作業を「CAEBV(担当:川田・木村)」と「HPV-LPDとSMBA(担当:平井・岩月)に分けそれぞれ発表した。
・2022年1-2023年12月に感染細胞同定(名古屋大学・成育医療センター・九州大学他)と病理診断(久留米大学)から各施設で診断した121例が登録され、累計239名が集積され、課題を抽出して解析計画会議を開始した。
・これまでに小児CAEBVの主たる感染細胞に基づく臨床的特徴や予後に関する明確な知見はまだ限られていたため、単一施設(九州大学)による後方視的解析を実施した。小児期発症のCAEBV 21名を対象とし、主たる感染細胞はCD4+T細胞 7名、CD8+T細胞 3名、γδT細胞 2名およびNK細胞 9名であった。CD8+T細胞、γδT細胞、およびNK細胞を主たる感染細胞とするCAEBVではHCT未施行でも長期生存例が存在した。一方で、CD4+T細胞を主たる感染細胞とするCAEBVは予後不良であり、早期移植の必要性が示唆された。
・造血細胞移植など治療の至適化に関するコンセンサス会議を令和5年3月に行い、これを継続している。
・新規診断・治療法の開発研究(①感染細胞同定と新規細胞治療標的の探索、②抗EBウイルス新規薬剤の効果検証)を進めている。
指定難病の申請にあたり日本医学会連合に属する日本血液学会(成人)および日本小児血液・がん学会に重症度分類および診断基準の学会承認を行った。
結論
EBV感染から炎症とリンパ増殖性疾患およびリンパ腫へと進展する本症の適切な治療介入の時期と方法の戦略を具体化するためのエビデンスが集積されている。疾患概念の国際化を進めて、根治のための造血細胞移植の至適化と同時に病勢制御の新規薬剤の開発を検討していくことが重要である。

公開日・更新日

公開日
2025-07-02
更新日
-

研究報告書(PDF)

公開日・更新日

公開日
2025-07-02
更新日
-

研究報告書(紙媒体)

行政効果報告

文献番号
202310018C

成果

専門的・学術的観点からの成果
「CAEBVとその類縁疾患」の患者登録を行い集積した情報を用いてエビデンス創出のための解析を行った。
臨床的観点からの成果
新規診断・治療法の開発研究(①感染細胞同定と新規細胞治療標的の探索、②抗EBウイルス新規薬剤の効果検証)を進めている。
ガイドライン等の開発
令和4年度に改訂診療ガイドラインを発行した。さらに令和5年度には改訂診療ガイドラインを英文化し国際誌に複数報告した。
その他行政的観点からの成果
指定難病の申請にあたって、日本医学会連合に属する日本血液学会(成人)および日本小児血液・がん学会に重症度分類および診断基準の学会承認を行った(令和5年末承認)。
その他のインパクト
「EBV関連疾患を標的とする核酸医薬」、「慢性活動性Epstein-Barrウイルス感染症(CAEBV)の検出方法」の2件の特許を出願中

発表件数

原著論文(和文)
9件
原著論文(英文等)
61件
その他論文(和文)
15件
その他論文(英文等)
0件
学会発表(国内学会)
51件
学会発表(国際学会等)
10件
その他成果(特許の出願)
2件
その他成果(特許の取得)
0件
その他成果(施策への反映)
2件
指定難病の申請にあたり日本医学会連合に属する日本血液学会(成人)および日本小児血液・がん学会に重症度分類および診断基準の学会承認を行った(令和5年末承認)
その他成果(普及・啓発活動)
1件
一般(患者)向け講演会を開催

特許

特許の名称
EBV関連疾患を標的とする核酸医薬
詳細情報
分類:
特許番号: PCT/JP2022/048097
出願年月日: 20231227
特許の名称
慢性活動性Epstein-Barrウイルス感染症(CAEBV)の検出方法
詳細情報
分類:
特許番号: PCT/JP2023/11650
出願年月日: 20230323

主な原著論文20編(論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限る)

論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限ります。

原著論文1
Hirai Y, Asada H, Hamada T, Kawada JI, et al
Diagnostic and disease severity determination criteria for hydroa vacciniforme lymphoproliferative disorders and severe mosquito bite allergy
J Dermatol , 50 (7) , e198-e205  (2023)
10.1111/1346-8138.16842
原著論文2
Kawada JI, Ito Y, Ohshima K et al.
Updated guidelines for chronic active Epstein-Barr virus disease
Int J Hematol , 118 (5) , 568-578  (2023)
10.1007/s12185-023-03660-5
原著論文3
Park S, Sonoda M, Eguchi K, et al
Epstein-Barr virus monitoring for preemptive re-hematopoietic cell transplantation in CD3δ-deficient siblings
Pediatr Blood Cancer , 71 (3) , e31119-  (2024)
10.1002/pbc.31119.

公開日・更新日

公開日
2025-05-23
更新日
-

収支報告書

文献番号
202310018Z
報告年月日

収入

(1)補助金交付額
3,497,000円
(2)補助金確定額
3,497,000円
差引額 [(1)-(2)]
0円

支出

研究費 (内訳) 直接研究費 物品費 2,197,012円
人件費・謝金 0円
旅費 57,480円
その他 436,577円
間接経費 807,000円
合計 3,498,069円

備考

備考
実支出額に研究分担者である坂口大俊の自己資金¥381ならびに小林徹の自己資金¥688を含む。

公開日・更新日

公開日
2024-09-30
更新日
-