HCV感染における宿主応答の分子機構の解析と新規創薬標的の探索

文献情報

文献番号
200933011A
報告書区分
総括
研究課題名
HCV感染における宿主応答の分子機構の解析と新規創薬標的の探索
課題番号
H19-肝炎・一般-011
研究年度
平成21(2009)年度
研究代表者(所属機関)
松浦 善治(大阪大学 微生物病研究所)
研究分担者(所属機関)
  • 考藤 達哉(大阪大学医学研究科)
  • 竹内  理(大阪大学微生物病研究所)
  • 藤田 尚志(京都大学ウイルス研究所)
  • 池田 正徳(岡山大学大学院医歯学総合研究科)
  • 土方  誠(京都大学ウイルス研究所)
  • 小原 道法(東京都臨床研)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 肝炎等克服緊急対策研究
研究開始年度
平成19(2007)年度
研究終了予定年度
平成21(2009)年度
研究費
35,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
C型肝炎ウイルス(HCV)による自然免疫や獲得免疫の回避機構を解析し、これらの成果を新しい治療法の開発に資することを目的とする。
研究方法
1) CD44の発現プロファイルをReal-time PCR法で測定した。2) C型慢性肝炎患者および非感染者の末梢血よりMDCを分離し、TLR/RIG-Iの発現を検討した。3) LGP2欠損マウスとLGP2ATPase活性欠失マウスを作出し、LGP2の役割を検討した。4) 自然免疫のアダプター分子群の発現をsiRNAで抑制した。5) 任意の時期にHCV遺伝子をスイッチング発現することができる遺伝子改変マウスの樹立を試みた。
結果と考察
1) CD44の発現がHCVの複製依存的に亢進されており、CD44とTLR2を介したIP-10の発現亢進機序が、肝炎慢性化に重要な役割を演じている可能性が示唆された。2) HCVの排除にはDCの活性化が重要であり、MDCのTLR3-TRIF-TRAF6の伝達経路が免疫制御治療の標的となる可能性が示された。3) LGP2がRIG-IやMDA5によるIFN産生を正に制御していることが明らかとなった。4) 中空糸を用いた初代肝細胞培養を用いて患者血清由来HCVの増殖系の糸口が見えてきた。5) スイッチング発現システムにより、急性肝炎、慢性肝炎、肝硬変、そして、肝細胞がんを発症できるモデルマウスを樹立した。
結論
1) CD44とTLR2を介したIP-10の発現亢進が肝炎慢性化に重要である可能性が示唆された。2)ペグIFNα/リバビリン併用療法におけるHCV排除に、PDC頻度やDC機能の回復の関与が示唆された。3) LGP2がRIG-Iファミリーの活性化に必要な分子であることが明らかとなった。4) 患者血清由来HCVの培養系の可能性が示唆された。5) スイッチング発現システムにより自然感染に近い免疫反応の解析が可能となった。

公開日・更新日

公開日
2011-06-06
更新日
-

文献情報

文献番号
200933011B
報告書区分
総合
研究課題名
HCV感染における宿主応答の分子機構の解析と新規創薬標的の探索
課題番号
H19-肝炎・一般-011
研究年度
平成21(2009)年度
研究代表者(所属機関)
松浦 善治(大阪大学 微生物病研究所)
研究分担者(所属機関)
  • 考藤 達哉(大阪大学医学研究科)
  • 竹内  理(大阪大学微生物病研究所)
  • 藤田 尚志(京都大学ウイルス研究所)
  • 池田 正徳(岡山大学大学院医歯学総合研究科)
  • 土方  誠(京都大学ウイルス研究所)
  • 小原 道法(東京都臨床研)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 肝炎等克服緊急対策研究
研究開始年度
平成19(2007)年度
研究終了予定年度
平成21(2009)年度
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
C型肝炎ウイルス(HCV)による自然免疫や獲得免疫の回避機構を解析し、これらの成果を新しい治療法の開発に資することを目的とする。
研究方法
1) CXCR3とCD44の発現プロファイルを測定した。2) C型慢性肝炎患者および非感染者の末梢血よりMDCを分離し、TLR/RIG-Iの発現を検討した。3) RIG-I欠損細胞にHCV遺伝子を導入しRIG-Iの役割を検討した。また、LGP2欠損マウスとLGP2ATPase活性欠失マウスを作出した。4) 自然免疫のアダプター分子群の発現をsiRNAで抑制した。5) 任意の時期にHCV遺伝子を発現することができるマウスを樹立した。
結果と考察
1) CD44の発現がHCVの複製依存的に亢進されており、CD44とTLR2を介したIP-10の発現亢進機序が、肝炎慢性化に重要な役割を演じている可能性が示唆された。2) C型慢性肝炎患者においてミエロイド樹状細胞ではTLR2、TLR4、RIG-Iの発現は非感染者より高値であったが、TLR3、MDA5は同等であった。HCVの排除にはDCの活性化が重要であり、MDCのTLR3-TRIF-TRAF6の伝達経路が免疫制御治療の標的となる可能性が示された。3) RIG-IとMDA5がそれぞれ、短鎖、長鎖の二本鎖RNAを認識し、LGP2がRIG-IやMDA5によるIFN産生を正に制御していることが明らかとなった。4)病態の異なる患者由来NS3/4AはIPS-1を切断するが、TRIFは切断しないことが示された。5) 中空糸を用いた初代肝細胞培養を用いて患者血清由来HCVの増殖系の糸口が見えてきた。6) スイッチング発現システムにより、急性肝炎、慢性肝炎、肝硬変、そして、肝細胞がんを発症できるモデルマウスを樹立した。
結論
1) CD44とTLR2を介したIP-10の発現亢進が肝炎慢性化に重要である可能性が示唆された。2)ペグIFNα/リバビリン併用療法におけるHCV排除に、PDC頻度やDC機能の回復の関与が示唆された。3) LGP2がRIG-Iファミリーの活性化に必要な分子であることが明らかとなった。4) ヒトの肝臓ではIRF7がIFN産生に機能することが示唆された。5) 患者血清由来HCVの培養系の可能性が示唆された。6) スイッチング発現システムにより自然感染に近い免疫反応の解析が可能となった。

公開日・更新日

公開日
2011-06-06
更新日
-

研究報告書(紙媒体)

公開日・更新日

公開日
2011-02-16
更新日
-

行政効果報告

文献番号
200933011C

成果

専門的・学術的観点からの成果
IP-10の発現亢進機序が肝炎慢性化に重要な役割を演じている可能性が示唆された。HCVの排除にはDCの活性化が重要であり、MDCのTLR3-TRIF-TRAF6の伝達経路が免疫制御治療の標的となる可能性が示された。RIG-IとMDA5がそれぞれ、短鎖、長鎖の二本鎖RNAを認識しIFN産生を正に制御していることが明らかとなった。中空糸を用いた初代肝細胞培養を用いて患者血清由来HCVの増殖系の糸口が見えてきた。スイッチング発現システムにより肝細胞がんを発症できるモデルマウスを樹立した。
臨床的観点からの成果
本研究事業により、効率は低いものの血清由来のHCVを分離可能な細胞培養系の光明が見えてきた。これにより全く新しい抗HCV剤のスクリーニングが可能になると考えられる。また、IFN誘導遺伝子群の発現パターンに注目した治療プロトコールは、副作用を低減させるとともに、高いウイルス排除効果を期待できる。慢性C型肝炎に対する抗ウイルス剤の開発に新しい展開をもたらすことができれば、肝臓癌への進展を改善することが可能となり、C型肝炎患者にとって大きな福音になるものと思われる。
ガイドライン等の開発
該当なし。
その他行政的観点からの成果
該当なし。
その他のインパクト
該当なし。

発表件数

原著論文(和文)
0件
原著論文(英文等)
54件
その他論文(和文)
0件
その他論文(英文等)
0件
学会発表(国内学会)
32件
学会発表(国際学会等)
26件
その他成果(特許の出願)
0件
「出願」「取得」計0件
その他成果(特許の取得)
0件
その他成果(施策への反映)
0件
その他成果(普及・啓発活動)
0件

特許

主な原著論文20編(論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限る)

論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限ります。

原著論文1
Taguwa S., Kambara H., Omori H., et al.
Co-chaperone activity of human butyrate-induced transcript 1 facilitates hepatitis C virus replication through an Hsp90-dependent pathway.
J. Virol. , 83 , 10427-10436  (2009)
原著論文2
Kukihara H., Moriishi K., Taguwa S.,et al.
Human VAP-C negatively regulates hepatitis C virus propagation.
J. Virol. , 83 , 7959-7969  (2009)
原著論文3
Itose I., Kanto T., Kakita N., et al.
Enhanced ability of regulatory T cells in chronic hepatitis C patients with persistently normal alanine aminotransferase levels than those with active hepatitis.
J. Viral. Hepat. , 16 , 846-852  (2009)
原著論文4
Kohga K., Takehara T., Tatsumi T., et al.
Anticancer chemotherapy inhibits MHC class I-related chain a ectodomain shedding by downregulating ADAM10 expression in hepatocellular carcinoma.
Cancer Res. , 69 , 8050-8057  (2009)
原著論文5
Kumagai Y., Kumar H., Koyama S., et al.
TLR-Dependent viral recognition along with type I IFN positive feedback signaling masks the requirement of viral replication for IFN-{alpha} production in plasmacytoid dendritic cells.
J. Immunol. , 182 , 3960-3964  (2009)
原著論文6
Matsushita K., Takeuchi O., Standley D.M., et al.
Zc3h12a is an RNase essential for controlling immune responses by regulating mRNA decay.
Nature , 458 , 1185-1190  (2009)
原著論文7
Kawagoe T., Takeuchi O., Takabatake Y., et al.
TANK is a negative regulator of Toll-like receptor signaling and is critical for the prevention of autoimmune nephritis.
Nat. Immunol. , 10 , 965-972  (2009)
原著論文8
Satoh T., Kato H., Kumagai Y., et al.
LGP2 is a positive regulator of RIG-I- and MDA5-mediated antiviral responses.
Proc Natl Acad Sci U S A. , 105 , 1512-1517  (2010)
原著論文9
Shigemoto, T., Kageyama, M., Hirai, R., et al.
Identification of loss of function mutations in human genes encoding RIG-I and mda5: Implications for resistance to type I diabetes.
J. Biol. Chem. , 284 , 13348-13354  (2009)
原著論文10
Takahasi, K., Kumeta, H., Tsuduki, N., et al.
Solution Structures of MDA5 and LGP2 C-terminal Domains: Identification of the RNA Recognition Loop in RIG-I Like Receptors.
J. Biol. Chem. , 284 , 17465-17474  (2009)
原著論文11
Kuroki M., Ariumi Y., Ikeda M., et al.
Arsenic trioxide inhibits hepatitis C virus RNA replication through modulation of the glutathione redox system and oxidative stress.
J. Virol. , 83 , 2338-2348  (2009)
原著論文12
Yano M., Ikeda M., Abe K., et al.
Double-stranded RNA-induced interferon-beta and inflammatory cytokine production modulated by hepatitis C virus serine Oxidative stress induces anti-hepatitis C virus status via the activation of extracellular signal-regulated kinase.
Hepatology , 50 , 678-688  (2009)
原著論文13
Kawai Y., Ikeda M., Abe K., et al.
Development of an HCV relapse model using genome-length HCV RNA-harboring cells possessing the IFN-a-resistance phenotype.
Hepatol. Res. , 39 , 898-909  (2009)
原著論文14
Ikeda M., Mori K., Ariumi Y., et al.
Oncostatin M synergistically inhibits HCV RNA replication in combination with interferon-a.
FEBS Letters , 583 , 1434-1438  (2009)
原著論文15
Hussein H.A., Shimotohno K., and Hijikata M.
3D cultured immortalized human hepatocytes useful to develop drugs for blood-borne HCV.
BBRC , 379 , 330-334  (2009)
原著論文16
Hussein H.A., Qi Y., Atsuzawa K., et al.
Strain-dependent viral dynamics and virus cell interactions observed in a novel in vitro system supporting the life cycle of blood borne HCV.
Hepatology , 50 , 689-696  (2009)
原著論文17
Machida K., Tsukiyama-Kohara K., Kohara M., et al.
Disruption of IFN signaling and HCV synergistically enhance lymphoproliferation through type II CD95 and interleukins.
Gastroenterology , 137 , 285-296  (2009)
原著論文18
Amako Y., Tsukiyama-Kohara K., Kohara M., et al
Pathogenesis of hepatitis C virus infection in Tupaia belangeri.
J. Virol. , 84 , 303-311  (2010)
原著論文19
Hara H., Aizaki H., Matsuda M., et al.
Involvement of creatine kinase B in hepatitis C virus genome replication through interaction with the viral NS4A protein.
J. Virol. , 83 , 5137-5147  (2009)
原著論文20
Suzuki R., Moriishi K., Fukuda K., et al.
Proteasomal Turnover of Hepatitis C Virus Core Protein Is Regulated by Two Distinct Mechanisms: a Ubiquitin-Dependent Mechanism and a Ubiquitin-Independent but PA28-Dependent Mechanism.
J. Virol. , 83 , 2389-2392  (2009)

公開日・更新日

公開日
2015-06-03
更新日
-