肝炎状況・長期予後の疫学に関する研究

文献情報

文献番号
200933009A
報告書区分
総括
研究課題名
肝炎状況・長期予後の疫学に関する研究
課題番号
H19-肝炎・一般-009
研究年度
平成21(2009)年度
研究代表者(所属機関)
田中 純子(広島大学大学院 医歯薬学総合研究科 疫学・疾病制御学)
研究分担者(所属機関)
  • 小山 富子(岩手県予防医学協会 県南センター)
  • 日野 啓輔(川崎医科大学 内科学(肝胆膵))
  • 三浦 宜彦(埼玉県立大学 保健医療福祉学部情報科学)
  • 阿部 弘一(岩手医科大学 内科学講座消化器・肝臓分野)
  • 池田 健次(虎ノ門病院 消化器科)
  • 鳥村 拓司(久留米大学 医学部消化器内科)
  • 相崎 英樹(国立感染症研究所 ウイルス第二部)
  • 酒井 明人(金沢大学附属病院 光学医療診療部)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 肝炎等克服緊急対策研究
研究開始年度
平成19(2007)年度
研究終了予定年度
平成21(2009)年度
研究費
30,116,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
わが国における肝炎、肝がん対策の推進および肝炎ウイルス感染予防対策に資する疫学的データを収集、提示すること
研究方法
基礎医学、臨床医学、社会医学の専門家の参加を得て実施する
結果と考察
1)高感度HCV抗原検査の導入を視野に入れた「検査手順」の再検討が必要
2)肝炎ウイルス検査後の医療機関受診率と肝臓専門医受診率は、2006年時の全国調査に比べて上昇した
3)IFN治療が未受療の理由に、本人の意思だけでなく医師の判断や説明が影響していること
4)肝がん死亡の経年推移には地域ごとの特性があり、疫学的背景を考慮した地域毎の対策が必要
5)HBV母子感染防止事業実施後の出生年代におけるHBVキャリア率および自然感染による抗体陽性率の低下が確認された
6)大規模集団における出生年別肝炎ウイルスキャリア率を用い、(患者として通院入院しているキャリアを除く)HCVキャリア推計数は、807,903人(68.0-97.4万人)、同HBVキャリア推計数は、903,145人(83.7-97.0万人)と示した。
7)HBワクチン接種後のHBs抗体価の推移から、全3回の接種プロトコールを再度推奨する必要。HBワクチン接種の際には十分な転倒混和が必要
8)自覚症状がないまま献血により見出されたHCVキャリアは、初診時に約6割が慢性肝炎以上の肝病態の進展が認められた。抗ウイルス治療介入のないHCVRNA陰性化症例の存在。
9)高齢C型肝炎患者では、生存期間と有意な相関を示す血小板数が低値・中間値である群への医療介入による予後改善が必要
10)肝細胞癌早期発見のためのサーベイランスは、専門病院が効果的。2000年以後のサーベイランスでは以前と比べ、治療予知のある状態で発見されている
11)C型慢性肝疾患ではALTが低値であってもAFP10ng/mL未満に保つ積極的な治療が必要
12)核酸増幅検査(NAT)による感染リスク解析から、HBV感染初期の発生および同HBVgenotypeA感染は、都市部で頻度が高い。同HCV感染には明確な地域性が認められない。
13)HCIG候補はgenotype 1b に対する感染阻止能を有する可能性
14)急性肝炎症例の情報をまとめ、HPを整備
結論
得られた知見は、標記の研究目的に適うものである

公開日・更新日

公開日
2010-05-21
更新日
-

研究報告書(紙媒体)

公開日・更新日

公開日
2012-03-30
更新日
-

文献情報

文献番号
200933009B
報告書区分
総合
研究課題名
肝炎状況・長期予後の疫学に関する研究
課題番号
H19-肝炎・一般-009
研究年度
平成21(2009)年度
研究代表者(所属機関)
田中 純子(広島大学大学院 医歯薬学総合研究科 疫学・疾病制御学)
研究分担者(所属機関)
  • 小山 富子(岩手県予防医学協会 県南センター)
  • 日野 啓輔(川崎医科大学 内科学(肝胆膵))
  • 三浦 宜彦(埼玉県立大学 保健医療福祉学部情報科学)
  • 阿部 弘一(岩手医科大学 内科学講座消化器・肝臓分野)
  • 池田 健次(虎ノ門病院 消化器科)
  • 鳥村 拓司(久留米大学 医学部消化器内科)
  • 相崎 英樹(国立感染症研究所 ウイルス第二部)
  • 酒井 明人(金沢大学附属病院 光学医療診療部)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 肝炎等克服緊急対策研究
研究開始年度
平成19(2007)年度
研究終了予定年度
平成21(2009)年度
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
わが国における肝炎、肝がん対策の推進および肝炎ウイルス感染予防対策に資する疫学的データを収集、提示すること
研究方法
基礎医学、臨床医学、社会医学の専門家の参加を得て実施する
結果と考察
1)キャリアを見出す検査手順は適切に機能していることが立証された(H19)が、その後の検討により高感度HCV抗原検査の導入を視野に入れた検査手順の再検討が必要
2)肝炎ウイルス検査後の医療機関受診率と肝臓専門医受診率は、2006年時と比べ上昇した。肝炎対策事業の進捗状況に地域差があり、プロトタイプを示す必要
3)肝がん死亡の経年推移には地域毎の特性があり、疫学的背景を考慮した地域毎の対策が必要。肝がん死亡の経年推移を全国および都道府県別に図示した。
4)HBV母子感染防止事業実施後の出生集団におけるHBVキャリア率および自然感染による抗体陽性率の低下が確認された
5)HBVキャリア率は2005年時点50歳-60歳で、HCVキャリア率は高年齢層で高い値を示す。(患者として通院入院しているキャリアを除く)HCVキャリア推計数は、約80万人、同HBVキャリア推計数は、約90万人と示した。
6)HBワクチン接種プロトコールの再確認および周知が必要。
7)自覚症状がないまま献血により見出されたHCVキャリアの約6割は、初診時に慢性肝炎以上への進展が認められる。検診により見出されたキャリアについても検討が必要
8)50歳以上の男性B型慢性肝炎例では重点的な抗ウイルス療法による肝発がん抑制を目指す必要
9)高齢C型肝炎患者では血小板数が低値・中間値である群への医療介入による予後改善が必要。
10)肝細胞癌早期発見のためのサーベイランスは専門病院が効果的。2000年以後、治療予知のある状態で発見されている
11)C型慢性肝疾患ではALTが低値であってもAFP10ng/mL未満に保つ積極的な治療が必要
12)高感度の検出系(ALSI-HBsAg)は、急性B型感染や、移植後症例のHBV再感染のモニタリングに有用だが慢性B型肝炎患者では血清中DNA量と相関しない。
13)病院にて補足されたHBV感染例の中に占めるタイプA の占める比率が増加
14)献血時のNATによる陽性検体の解析から、HBV感染初期の発生および同genotypeA感染は、都市部に見出される。同HCV感染には明確な地域性がない。
15)HCIG候補は限定的な感染阻止能を有する可能性
16)急性肝炎症例の情報をまとめ、HPを整備
結論
得られた知見は、標記の研究目的に適うものである

公開日・更新日

公開日
2011-06-02
更新日
-

研究報告書(紙媒体)

公開日・更新日

公開日
2012-03-30
更新日
-

行政効果報告

文献番号
200933009C

成果

専門的・学術的観点からの成果
わが国における肝炎ウイルス感染の状況、すなわち、年齢階級別のHCVキャリア率、HBVキャリア率を明らかにすると同時に、肝がん死亡の経年変化を都道府県別に図示したことは、感染予防・肝がん対策をはじめとするさまざまな医療行政に有用な成果となった。地域毎の肝炎対策の普及状況調査や肝炎ウイルス検査手順の再検証により、国の施策の有用性や課題を指摘した。献血時のNATによる解析によりHBVgenotypeA新規感染例が都市部を中心に広がっていることを指摘し新たな感染予防対策の必要性を示唆した。
臨床的観点からの成果
B型慢性肝炎の自然病態の検討により病態年移行率を提示した。高齢C型肝炎患者の血小板数が低・中間値である群への医療介入が必要であることを提示した。自覚症状がないまま献血により見出されたHCVキャリアの6割以上は、初診時に慢性肝炎以上の病態進展が認められたことから、検診を契機として見出されたキャリアについても治療方針の検討が必要であることを示した。HCVenv抗体高力価陽性のプール血漿を原料としたガンマグロブリン分画をHCIG候補とし、genotype 1b に対する感染阻止能の可能性を示した。
ガイドライン等の開発
研究期間内にガイドラインの開発には着手できなかったが、現行の肝炎ウイルスキャリアを見出すための検査手順の検証を行い、さらに効果的な検査手順の可能性について提示した。肝細胞がん早期発見のためのプロトコル作成を目指し、画像診断及びAFPによる組み合わせの有用性を提示した。国は平成20年度から肝炎ウイルスの無料検査を実施したが、これを周知させるためのA3版ポスターを作成し、県医師会を通じて医療機関に一斉配布し・掲示した(広島県)。
その他行政的観点からの成果
1986年以後に出生した全ての児を対象として開始されたHBV母子感染予防対策は、出生年ごとのHBVキャリア率、HBs抗体およびHBc抗体陽性率の解析により効果的に運用されていることを示した。初回供血者集団380万人、節目検診受診者800万人の大規模集団を対象とした特性に応じた解析により、わが国の患者を除く一般集団におけるキャリア率を得、その数値を元として患者を除く推計キャリア数を提示した。
その他のインパクト
「マスコミに取り上げられる・公開シンポジウムの開催等」には至っていない。しかし、JDDW2009、特別企画「本邦におけるHBワクチン戦略はいかにあるべきか?-アジア諸国との比較」の基調講演「我が国のB型肝炎ウイルス(HBV)感染の疫学」では、当該研究班の成果を用いて発表することが期待された。厚労省「肝機能障害の評価に関する検討会」では構成員として参画し、当該研究班の研究代表者として疫学的観点からの発言をした。

発表件数

原著論文(和文)
11件
原著論文(英文等)
45件
その他論文(和文)
17件
その他論文(英文等)
0件
学会発表(国内学会)
101件
学会発表(国際学会等)
35件
その他成果(特許の出願)
0件
「出願」「取得」計0件
その他成果(特許の取得)
0件
その他成果(施策への反映)
2件
厚労省「肝機能障害の評価に関する検討会」への参加 全国肝炎総合対策推進懇談会への参加。
その他成果(普及・啓発活動)
15件
ポスター作成配布(2回)。パンフレット(2種類)配布(4回)。肝炎手帳配布(3回)。感染防止手引きの配布(1回)。聞き取りアンケート調査の際の普及啓蒙活動(2回)。肝炎相談員養成研修会講師(3回)

特許

主な原著論文20編(論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限る)

論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限ります。

原著論文1
Matsubara N, Kusano O, Sugamata Y, et al.
A novel hepatitis B virus surface antigen immunoassay as sensitive as hepatitis B virus nucleic acid testing in detecting early infection
Transfusion , 49 , 585-595  (2009)
原著論文2
Matsuura, K, Tanaka, Y, Hige, S, et al.
Sugiyama M, Tanaka Y, Kurbanov F, Maruyama I, Shimada T, Takahashi S, Shirai T, Hino K, Skaiada I, Mizokami M
J Clin Microbiol , 47 , 1476-1483  (2009)
原著論文3
Sugiyama M, Tanaka Y, Kurbanov F, et al.
Direct cytopathic effects of particular hepatitis B virus genotypes in severe combined immunodeficiency transgenic with urokinase-type plasminogen activator mouse with human hepatocytes.
Gastroenterology , 136 , 652-662  (2009)
原著論文4
Sugiyama M, Tanaka Y, Kurbanov F, et al.
Genome-wide association of IL28B with response to pegylated interferon-alpha and ribavirin therapy for chronic hepatitis C.
Nat Genet , 41 , 1105-1109  (2009)
原著論文5
Nishina S, Korenaga M, Hidaka I, et al.
Hepatitis C virus protein and iron overload induce hepatic steatosis through the unfolded protein response in mice.
Liver Int  (2010)
原著論文6
Ohsawa M, Kato K, Itai K, et al.
Standardized Prevalence Ratios for Chronic Hepatitis C Virus Infection Among Adult Japanese Hemodialysis Patients
Journal of Epidemiology , 20 (1) , 30-39  (2010)
原著論文7
Arase Y, Suzuki F, Akuta N, et al.
Combination Therapy of Peginterferon and Ribavirin for Hepatitis C Patients with Genotype 1b and Low-virus Load.
Internal Medicine , 48 , 253-258  (2009)
原著論文8
Ikeda K, Kobayashi M, Someya T, et al.
Occult hepatitis B virus infection inceases hepatocellular carcinogenesis by eight times in patients with non-B, non-C liver cirrhosis: a cohort study.
Journal Viral Hepatitis , 16 , 437-443  (2009)
原著論文9
Morihara D, Kobayashi M, Ikeda K, Ket al.
Effectiveness of combination therapy of splenectomy and long term interferon in patients with hepatitis C virus-related cirrhosis and thrombocytopenia.
Hepatology Research  , 39 , 439-447  (2009)
原著論文10
Kobayashi M, Suzuki F, Akuta N, et al.
Development of hepatocellular carcinoma in elderly patients with chronic hepatitis C with or without elevated aspartate and alanine aminotransferase levels.
Scand J Gastroenterol , 44 , 975-983  (2009)
原著論文11
Hara H, Aizaki H, Matsuda M, et al.
Involvement of creatine kinase B in hepatitis C virus genome replication through interaction with the viral NS4A protein.
J Virol. , 83 , 5137-5147  (2009)
原著論文12
Tsutsumi T, Matsuda M, Aizaki H, et al.
Proteomics analysis of mitochondrial proteins reveals overexpression of a mitochondrial protein chaperone, prohibitin, in cells expressing hepatitis C virus core protein.
Hepatology , 50 , 378-386  (2009)
原著論文13
Mohsan S, Suzuki R, Kondo M, et al.
Evaluation of Hepatitis C Virus Core Antigen Assays in Detecting the Recombinant Viral Antigens of Various Genotypes.
J Clin Microbiol. , 47 , 4141-4143  (2009)
原著論文14
Hmwe SS, Aizaki H, Date T, Murakami K, Ishii K, Miyamura T, et al.
Identification of hepatitis C virus genotype 2a replicon variants with reduced susceptibility to ribavirin.
Antiviral Res.  (2010)
原著論文15
Tanaka Y, Nishida N, Sugiyama M, et al.
Genome-wide association of IL28B with response to pegylated interferon-alpha and ribavirin therapy for chronic hepatitis C.
Nature Genetics , 41 , 1105-1109  (2009)
原著論文16
Miyazaki T, Honda A, Ikegami T, et al.
The associated markers and their limitations for the primary screening of HCV carriers in public health examination.
Hepatol. Res , 39 (7) , 664-674  (2009)
原著論文17
Okusaka T, Kasugai H, Shioyama Y, et al.
Transarterial chemotherapy alone versus transarterial chemoembolization for hepatocellular carcinoma: A randomized phase III trial.
J Hepatol. , 51 , 1030-1036  (2009)

公開日・更新日

公開日
2015-06-03
更新日
-