文献情報
文献番号
202310012A
報告書区分
総括
研究課題名
早老症のエビデンス集積を通じて診療の質と患者QOLを向上する全国研究
研究課題名(英字)
-
課題番号
21FC1016
研究年度
令和5(2023)年度
研究代表者(所属機関)
横手 幸太郎(国立大学法人千葉大学 大学院医学研究院)
研究分担者(所属機関)
- 前澤 善朗(国立大学法人千葉大学 大学院医学研究院)
- 加藤 尚也(国立大学法人千葉大学 医学部附属病院)
- 竹本 稔(国際医療福祉大学 医学部)
- 中神 啓徳(国立大学法人大阪大学 大学院医学系研究科 健康発達医学)
- 窪田 吉孝(千葉大学医学部附属病院 (形成・美容外科))
- 小崎 里華(国立研究開発法人 国立成育医療研究センター 遺伝診療センター遺伝診療科)
- 茂木 精一郎(群馬大学大学院医学系研究科皮膚科学)
- 谷口 俊文(国立大学法人千葉大学 医学部附属病院・感染制御部)
- 井原 健二(国立大学法人大分大学 医学部)
- 金子 英雄(地方独立行政法人岐阜県総合医療センター)
- 渡邊 一久(名古屋大学医学部附属病院 老年内科)
- 谷口 晃(奈良県立医科大学 医学部)
- 松尾 宗明(佐賀大学 医学部)
- 忍足 俊幸(千葉大学大学院医学研究院眼科学)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 難治性疾患政策研究
研究開始年度
令和3(2021)年度
研究終了予定年度
令和5(2023)年度
研究費
5,770,000円
研究者交替、所属機関変更
-
研究報告書(概要版)
研究目的
早老症は、全身に老化徴候が早発・進展する疾患の総称である。その代表例としてWerner症候群(以下WSと略)、Hutchinson-Gilford Progeria症候群(以下HGPSと略)やRothmund-Thomson症候群(以下RTSと略)が知られる。WSは思春期以降に発症し、がんや動脈硬化のため40歳半ばで死亡し、国内推定患者数は約700~2,000名、世界の報告の6割を日本人が占める。HGPSは1~2歳時に早老徴候が出現し、10歳代でほぼ全例が死亡する。RTSは特徴的な皮膚所見が乳児期から認められ骨格異常や癌腫を合併する。
研究方法
WS研究:①診断基準や診療ガイドラインを啓発する。②小児・成人を一体的に研究・診療できる体制を構築する。③他のAMEDなどのプログラムを支援する。④ウェルナー症候群レジストリを運用する。⑤ウェルナー症候群に対するニコチンアミド リボシドの臨床試験を支援する。⑥ウェルナー症候群患者の遺伝子診断を支援する。また、遺伝子診断の保険適応申請を支援する。
HGPS研究:①診療ガイドラインの作成へ向けエビデンスを収集する。②関連学会において診療ガイドラインの承認を得る、③患者・家族会の設立を支援する。
その他の早老症:①RTS の診療ガイドラインの作成へ向け、エビデンス収集を開始する。②WS 全国疫学調査の結果をもとに、aWS や WS 類似疾患の情報を収集する。
HGPS研究:①診療ガイドラインの作成へ向けエビデンスを収集する。②関連学会において診療ガイドラインの承認を得る、③患者・家族会の設立を支援する。
その他の早老症:①RTS の診療ガイドラインの作成へ向け、エビデンス収集を開始する。②WS 全国疫学調査の結果をもとに、aWS や WS 類似疾患の情報を収集する。
結果と考察
WS研究:患者会と連携しweb患者会継続的に参加している。患者用パンフレット(ウェルナー症候群ハンドブック)の英文化、ウェルナー症候群ホームーページの英文化、ウェルナー症候群の診療経験のある医療機関のリスト化とホームページへの掲載を行った。また悪性腫瘍サーベイランス指針を作成した。また、若年のウェルナー症候群疑い症例における遺伝子診断の適応についても提言をまとめた。さらにWSの普及啓発文書を日本眼科学会雑誌に掲載した。また、患者の寿命は1991年には41歳であったが、2016年には59歳まで延伸していることが判明した。ウェルナー症候群患者では女性において全ての症候が揃うのが遅いことがわかり、GGIに論文掲載された。また早老症レジストリ研究においても、54名の症例が登録され、10年前の報告と比べ、心筋梗塞、脳梗塞といった動脈硬化性疾患の減少を認めた。一方、3年間の縦断的分析で腎障害の進展が急速であること、悪性新生物が早期から観察され、特に間葉系肉腫が主要な死因になっているといった新規知見を得ている。
また、基礎研究では1) WS患者脂肪組織由来間葉系幹細胞は炎症所見を呈し、脂肪分化能が低下すること、2) ウェルナー症候群iPS細胞の、クリスパーを用いた遺伝子修復株、3) WS患者の皮下組織石灰化はリンパ管の老化と関連すること、4)ウェルナー症候群のMDS/AMLはTP53変異と関連することをそれぞれ論文報告した。
また、根本治療として開発中の、エクソンスキッピング法を用いたWRN遺伝子の発現回復治療の開発にも進捗が見られている。また、ウェルナー症候群に対するニコチンアミドリボシドの安全性・有効性を検証するための前向き、単施設試験(EMPOWER)を支援している。
HGPS研究:ファルネシル化酵素阻害剤Zokinvy™(lonafarnib: ロナファルニブ)の国内承認に向けて、国内代理店を通してPMDA及び厚生労働省へ各種申請を進めた結果、令和5年度末に承認された。さらに令和6年度の春には、保険診療としての治療開始が可能となった。また、新たに全国調査を行い疫学情報と臨床的特徴を明らかにした。遺伝性早老症HGPSに対する治療薬ロナファルニブの厚労省承認を受け国内での治療が可能となり、さらにHGPSおよびZMPSTE24遺伝子異常症の患者の把握により速やかな治療開始に貢献した。
その他の早老症:本邦での患者数は2010年10症例、2020年8症例であった。我々は全国調査による本邦の特徴を参考にした上でロスムンド・トムソン症候群の診療ガイドラインを作成した。日本小児遺伝学会の学会承認を得ている。また、市民公開講座を開催し、患者会創設に繋げた。また、患者会と協力し疾患のリーフレットを作成した。これらの研究活動により、ロスムンド・トムソン症候群の認知度が高まり、適確な診断がなされ、多職種による定期的なフォローが早期から行われることにより患者のQOLの向上、生命予後の改善が期待される。
また、基礎研究では1) WS患者脂肪組織由来間葉系幹細胞は炎症所見を呈し、脂肪分化能が低下すること、2) ウェルナー症候群iPS細胞の、クリスパーを用いた遺伝子修復株、3) WS患者の皮下組織石灰化はリンパ管の老化と関連すること、4)ウェルナー症候群のMDS/AMLはTP53変異と関連することをそれぞれ論文報告した。
また、根本治療として開発中の、エクソンスキッピング法を用いたWRN遺伝子の発現回復治療の開発にも進捗が見られている。また、ウェルナー症候群に対するニコチンアミドリボシドの安全性・有効性を検証するための前向き、単施設試験(EMPOWER)を支援している。
HGPS研究:ファルネシル化酵素阻害剤Zokinvy™(lonafarnib: ロナファルニブ)の国内承認に向けて、国内代理店を通してPMDA及び厚生労働省へ各種申請を進めた結果、令和5年度末に承認された。さらに令和6年度の春には、保険診療としての治療開始が可能となった。また、新たに全国調査を行い疫学情報と臨床的特徴を明らかにした。遺伝性早老症HGPSに対する治療薬ロナファルニブの厚労省承認を受け国内での治療が可能となり、さらにHGPSおよびZMPSTE24遺伝子異常症の患者の把握により速やかな治療開始に貢献した。
その他の早老症:本邦での患者数は2010年10症例、2020年8症例であった。我々は全国調査による本邦の特徴を参考にした上でロスムンド・トムソン症候群の診療ガイドラインを作成した。日本小児遺伝学会の学会承認を得ている。また、市民公開講座を開催し、患者会創設に繋げた。また、患者会と協力し疾患のリーフレットを作成した。これらの研究活動により、ロスムンド・トムソン症候群の認知度が高まり、適確な診断がなされ、多職種による定期的なフォローが早期から行われることにより患者のQOLの向上、生命予後の改善が期待される。
結論
ほぼ研究計画に沿って研究が行われた。このようなガイドラインの策定、改訂、啓発事業を各疾患に対して行うことで、現在の早老症患者のQOLが高まることが期待される。
公開日・更新日
公開日
2025-05-23
更新日
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