文献情報
文献番号
202310002A
報告書区分
総括
研究課題名
筋ジストロフィーの標準的医療普及のための調査研究
研究課題名(英字)
-
課題番号
21FC1006
研究年度
令和5(2023)年度
研究代表者(所属機関)
松村 剛(国立病院機構大阪刀根山医療センター 脳神経内科)
研究分担者(所属機関)
- 青木 正志(国立大学法人東北大学 大学院医学系研究科 神経内科)
- 粟野 宏之(鳥取大学 研究推進機構研究基盤センター)
- 池田 真理子(谷口 真理子)(藤田保健衛生大学病院 遺伝カウンセリング室)
- 石垣 景子(東京女子医科大学 小児科)
- 石崎 雅俊(熊本再春荘病院 神経内科)
- 大澤 裕(川崎医科大学 神経内科学)
- 尾方 克久(独立行政法人国立病院機構東埼玉病院)
- 貝谷 久宣(医療法人和楽会)
- 木村 公一(東京大学 医科学研究所)
- 久留 聡(国立病院機構鈴鹿病院)
- 小林 道雄(国立病院機構あきた病院 脳神経内科)
- 小牧 宏文(国立精神・神経医療研究センター病院 小児神経科)
- 諏訪園 秀吾(独立行政法人国立病院機構沖縄病院 脳・神経・筋疾患研究センター )
- 高田 博仁(独立行政法人 国立病院機構 青森病院 脳神経内科)
- 高橋 正紀(大阪大学大学院 医学系研究科 機能診断科学)
- 谷口 雅彦(旭川医科大学 消化器病態外科学分野)
- 中島 孝(独立行政法人国立病院機構新潟病院 脳神経内科)
- 中村 昭則(国立病院機構まつもと医療センター神経内科)
- 西野 一三(国立研究開発法人 国立精神・神経医療研究センター 神経研究所疾病研究第一部)
- 橋本 大哉(名古屋市立大学病院 臨床研究開発支援センター)
- 日野 博文(浅草病院)
- 藤野 陽生(大阪大学 大学院連合小児発達学研究科)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 難治性疾患政策研究
研究開始年度
令和3(2021)年度
研究終了予定年度
令和5(2023)年度
研究費
21,900,000円
研究者交替、所属機関変更
-
研究報告書(概要版)
研究目的
筋ジストロフィーにおける標準的医療の普及と向上に向けた様々な調査・研究を行う。
研究方法
①「デュシェンヌ型筋ジストロフィー診療ガイドライン2014」を改訂する。②肢帯型筋ジストロフィー画像診断アルゴリズムを作成する。③顔面肩甲上腕型筋ジストロフィーの主観的臨床評価尺度(Facioscapulohumeral muscular dystrophy health index: FSHDHI)の日本語版を作成し評価する。④生殖医療に関わる多領域専門家との意見交換の場を設定し、課題を把握する。⑤介護者の健康管理は質の高い在宅療養維持には必須で、患者団体と協力しピアサポートを含む支援体制構築を図る。⑥保険適用の神経筋8疾患のHAL®長期有効性評価を行う。⑦起立支援型電動車椅子の有効性評価を行う。⑧COVID-19神経筋疾患関連の情報提供と調査を行う。⑨患者登録事務局や関連諸機関と協力し、患者登録促進・活用を図る。⑩困難例についての相談窓口を設置し随時対応、難病情報センターのコンテンツ改訂、研究班ホームページのコンテンツ更新、セミナー開催などでアウトリーチ活動に努める。
結果と考察
①デュシェンヌ型筋ジストロフィー診療ガイドライン改訂:令和4年度までに章割りとCQを確定し、システマティックレビュー委員の研修を実施したが、委員長の多忙により進捗が停滞。委員長が日本神経学会の指名であるため、神経学会主体での作成を支援する形とした。②肢帯型筋ジストロフィー画像診断アルゴリズム作成:令和3年に肢帯型筋ジストロフィー画像診断アルゴリズムを作成し、令和4年に研究班・日本神経学会HPに公開した。令和5年には筋画像アトラスが刊行された。③FSHDHIの日本語版作成評評価:令和4年度に班員施設受診者、登録患者66名の協力を得て妥当性評価を行った。高い信頼性・妥当性が確認され、論文公表した。④着床前診断の見解が改定され、これまで非対象だった疾患の申請では疾患専門医の意見が求められるようになったことから、ベッカー型の仮想事例をもとに、疾患専門医、生殖医療・遺伝医療専門家、審査委員に講演いただき、率直な議論を行った。専門領域による見方の違いは大きく、そうした違いを忌憚なく話し合える場の意義は大きい。⑤令和3年度から患者会と一緒にオンラインセミナーを企画し年1回実施。毎回多数の参加をいただき、継続的な実施を求める声が多く、ピアサポートの役割も果たしていることが確認できた。臨床場面でもcarrierの受診が増加傾向で、関心の高まりが実感される。⑥神経筋疾患のHAL®長期有効性評価:EDCに191例が登録され、データ収集を継続中である。⑦起立支援型電動車椅子の有効性評価:令和5年度は実利用環境下で5名の患者に2週間以上試用いただいて評価した。多様なポジショニング・座面高調整機能は快適性だけでなく、介護負担軽減効果やADL/自立支援効果が示唆された。一方で、車体の大きさや重量が本邦の住宅事情にそぐわないなどの課題がある。⑧COVID-19神経筋疾患関連の情報提供・調査:令和4年度に多施設で罹患者調査を実施し、126名のデータを得た。入院せずに回復する患者も多く、筋ジストロフィーがCOVID-19の増悪因子になる可能性は低い。一方で、隔離処置やエアロゾル対策で積極的な排痰処置が困難になるため、二次性肺炎、心機能悪化を見る例もあり、死亡者は高度心不全や嚥下機能障害の強い2名だった。この結果はWorld Muscle Societyで発表し、論文作成中である。⑨患者登録促進・活用:2024年3月末時点の患者登録数は、ジストロフィノパチー2160名、筋強直性ジストロフィー1234名、先天性筋疾患91名、顔面肩甲上腕型筋ジストロフィー194名。成人型では、受診頻度が低く医療機関受診を必須とする現在の登録方法では登録が進みにくい面があり、登録方法の見直しについて検討を行っている。顔面肩甲上腕型筋ジストロフィーの登録データを解析し班会議で報告、FSHDHI妥当性評価やTranilast医師主導治験でRemudy通信を利用した広報を行うなど活用している。⑩医療相談・アウトリーチ活動:難病情報センターのコンテンツ改訂を行った。 研究班HPコンテンツを随時更新。関連研究班や患者会とも協力し各種セミナーを実施した。
結論
筋ジストロフィーの標準的医療普及に必要な活動を継続している。ガイドライン改定については学会との協力を維持し進捗を促進する。COVID-19についての調査・情報提供、生殖医療など、筋ジストロフィーの抱える諸課題を見据えた活動を継続していく。
公開日・更新日
公開日
2025-05-23
更新日
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