HIVに対する粘膜ワクチンの最適化に適う安全性・有効性に優れた粘膜ワクチンアジュバントの開発

文献情報

文献番号
200932037A
報告書区分
総括
研究課題名
HIVに対する粘膜ワクチンの最適化に適う安全性・有効性に優れた粘膜ワクチンアジュバントの開発
課題番号
H19-エイズ・若手-001
研究年度
平成21(2009)年度
研究代表者(所属機関)
吉岡 靖雄(大阪大学臨床医工学融合研究教育センター 大阪大学薬学研究科)
研究分担者(所属機関)
  • 鎌田 春彦(独立行政法人 医薬基盤研究所)
  • 形山 和史(大阪大学大学院薬学研究科 分子生物学分野)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 エイズ対策研究
研究開始年度
平成19(2007)年度
研究終了予定年度
平成21(2009)年度
研究費
1,530,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
本研究では、HIV予防を実現し得る粘膜ワクチンの開発を目指し、効率よく粘膜免疫を誘導するサイトカインアジュバントの開発を進めている。これまでに、4種のインターロイキン1(IL-1)ファミリーサイトカインが、経鼻投与により効率的に抗原特異的粘膜免疫を誘導することを見出している。
研究方法
本年度は、IL-1ファミリーサイトカインの粘膜ワクチンアジュバントとしての安全性を、病理組織学的およびアナフィラキシー誘導能の観点で解析した。
結果と考察
昨年度の検討から、十分な粘膜免疫を誘導可能な投与量・スケジュールで、抗原とともにIL-1ファミリーサイトカインを経鼻投与した。その結果、投与期間中、発熱、立毛、体重減少など顕著な副作用は観察されなかった。また、鼻粘膜組織に及ぼす傷害性は殆んど観察されず、鼻粘膜上皮細胞の壊死や脱落、菲薄化といった病理学的な異常所見は全く認められなかった。さらに、ルナ染色の結果からも、好酸球などアレルギー反応に関与する細胞群の集積についても、鼻組織、肺組織で認められなかった。次に、これらサイトカインを経鼻投与した後の、アナフィラキシーの原因となる抗原特異的IgE産生について評価した。ポジティブコントロールとして使用したコレラトキシンとOVAを共投与した場合には、予想されたとおりOVA抗原を認識する血清中IgEが誘導されていた。また、IL-1apha、IL-1betaあるいはIL-33を共投与した場合にはCT以上のOVA特異的IgEが観察された。一方、非常に興味深いことに、IL-18を共投与した場合のOVA特異的IgE誘導能は他のサイトカイン(IL-1apha、IL-1beta、IL-33)やCTに比べて低い事を明らかとした。以上の結果から、IL-18は安全性に優れた粘膜ワクチンアジュバントになり得る可能性が示された。
結論
IL-1ファミリーサイトカイン、特にIL-18は、投与局所の粘膜面における安全性を保持したまま、粘膜ワクチン効果を増強し得る安全且つ効果的な粘膜アジュバントであると考えられた。

公開日・更新日

公開日
2014-05-26
更新日
-

文献情報

文献番号
200932037B
報告書区分
総合
研究課題名
HIVに対する粘膜ワクチンの最適化に適う安全性・有効性に優れた粘膜ワクチンアジュバントの開発
課題番号
H19-エイズ・若手-001
研究年度
平成21(2009)年度
研究代表者(所属機関)
吉岡 靖雄(大阪大学臨床医工学融合研究教育センター 大阪大学薬学研究科)
研究分担者(所属機関)
  • 鎌田 春彦((独)医薬基盤研究所)
  • 形山 和史(大阪大学大学院薬学研究科分子生物学分野)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 エイズ対策研究
研究開始年度
平成19(2007)年度
研究終了予定年度
平成21(2009)年度
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
経口・経鼻・経膣投与など経粘膜接種によるワクチン(粘膜ワクチン)は、抗原投与部位の粘膜面のみならず、遠隔の粘膜面、更には脾臓などの全身系免疫組織にも抗原特異的免疫応答が誘導可能なため、HIV感染制御の点で理想的方法として期待されている。しかし現在、HIVに対する粘膜ワクチンの最適化に向け、種々検討が行われているが、未だ良好な成果は得られていない。そこで本研究では、安全性・有効性に優れた経粘膜投与型サイトカインをスクリーニング・創製した上で、粘膜ワクチンアジュバントへ適用することで、HIVに対する効果的な粘膜ワクチンシステム構築を図った。
研究方法
特に強力な免疫活性化能を有する腫瘍壊死因子(TNF)スーパーファミリーサイトカインに焦点をしぼり、粘膜ワクチンアジュバントに優れたサイトカインをスクリーニングした上で、その安全性や免疫誘導メカニズムを検討した。
結果と考察
①強力な免疫活性化能を有するTNFスーパーファミリーの中で、TL1A、TNFalphaが優れた粘膜ワクチンアジュバントであることを明らかとした。更に、②独自の “ファージ表面提示法による機能性人工蛋白質創製技術”を駆使することで創製した、生体内安定性・比活性に優れたリジン欠損TNFalpha変異体が、野生型よりも優れた粘膜免疫アジュバント能を発揮することを明らかとした。また、HIVに対する免疫応答を効率的に誘導可能であることも明らかとした。更に、③IL-1alpha、IL-1beta、IL-18、IL-33についても優れた粘膜免疫誘導能を有することを明らかとした。
結論
本研究は、HIVに対する効果的な粘膜ワクチン開発の最大の問題点を克服可能であると共に、HIVに対する有効なワクチン戦略を提供可能と考えられる。また、新型インフルエンザなど未だ世界中で猛威をふるう新興・再興感染症など致死的感染症に対する新たな方法論・基盤技術・医療体系を提供することで、国民の健康と福祉に貢献可能と考えられる。

公開日・更新日

公開日
2014-05-26
更新日
-

行政効果報告

文献番号
200932037C

成果

専門的・学術的観点からの成果
本研究成果は、サイトカインのHIVに対する粘膜ワクチンアジュバントとしての有用性を明らかとするものであり、HIV根絶に向けたワクチン開発に多大に貢献するものである。また、新型インフルエンザなど未だ世界中で猛威をふるう新興・再興感染症など致死的感染症に対する新たな方法論・基盤技術・医療体系を提供することで、国民の健康と福祉に貢献可能と考えられる。
臨床的観点からの成果
HIVに対する多剤併用療法は、感染そのものを防御するものではなく、また薬剤耐性・副作用・費用などの解決すべき問題が多数残されている。従って、HIV治療・予防における最重要課題は、先進国・開発途上国を問わずHIVに対するワクチン開発に他ならない。従って、本研究成果を基盤として近未来的に開発されるであろうHIVに対する粘膜ワクチンアジュバントは、最適な医療体系の構築に大きく寄与すると期待される。
ガイドライン等の開発
該当無し。
その他行政的観点からの成果
該当無し。
その他のインパクト
該当無し。

発表件数

原著論文(和文)
0件
原著論文(英文等)
7件
その他論文(和文)
0件
その他論文(英文等)
0件
学会発表(国内学会)
13件
学会発表(国際学会等)
8件
その他成果(特許の出願)
0件
「出願」「取得」計0件
その他成果(特許の取得)
0件
その他成果(施策への反映)
0件
その他成果(普及・啓発活動)
0件

特許

主な原著論文20編(論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限る)

論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限ります。

原著論文1
Kayamuro H, Abe Y, Yoshioka Y, et al
The use of a mutant TNF-alpha as a vaccine adjuvant for the induction of mucosal immune responses
Biomaterials , 30 (29) , 5869-5876  (2009)
原著論文2
Kayamuro H, Yoshioka Y, Abe Y, et al
TNF superfamily member, TL1A, is a potential mucosal vaccine adjuvant
Biochem Biophys Res Commun , 384 (3) , 296-300  (2009)
原著論文3
Kayamuro H, Abe Y, Yoshioka Y, et al
Mutant TNF-alpha, mTNF, K90R, is a novel mucosal vaccine adjuvant candidate against HIV
Pharmazie , 65 (4) , 254-256  (2010)

公開日・更新日

公開日
2014-05-26
更新日
2015-07-03