文献情報
文献番号
202308038A
報告書区分
総括
研究課題名
社会経済的要因による栄養課題の解決に向けた食環境整備のためのツール開発研究
研究課題名(英字)
-
課題番号
23FA1011
研究年度
令和5(2023)年度
研究代表者(所属機関)
村山 伸子(新潟県立大学 人間生活学部)
研究分担者(所属機関)
- 西岡 大輔(大阪医科薬科大学 医学研究支援センター医療統計室)
- 堀川 千嘉(新潟県立大学 人間生活学部 健康栄養学科)
- 坂本 達昭(熊本県立大学 環境共生学部)
- 小林 知未(武庫川女子大学 食物栄養科学部)
- 太田 亜里美(佐々木 亜里美)(新潟県立大学人間生活学部 健康栄養学科)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 循環器疾患・糖尿病等生活習慣病対策総合研究
研究開始年度
令和5(2023)年度
研究終了予定年度
令和6(2024)年度
研究費
7,700,000円
研究者交替、所属機関変更
-
研究報告書(概要版)
研究目的
健康日本21(第二次)(第三次)では、健康格差の縮小が上位目標として設定された。栄養・食生活分野においても、経済格差に伴う栄養格差の実態が示されてきた。しかし、その対策についての研究はこれからの課題である。そこで、本研究の目的は、経済的要因による栄養課題の解決に向けた食環境整備に寄与することである。具体的には、(1)生活状況を踏まえた栄養・食生活の実態分析をする、(2)国内外の効果的な取組事例を収集する。(3)これらの結果をふまえ、栄養課題の解決に向けた食環境整備の取組を進めるため、自治体、市民社会、食品関連事業者・メディア等の事業者がそれぞれ利用可能な支援ガイド等を作成する。
研究方法
項目1 生活状況を踏まえた栄養・食生活の実態分析(研究分担者:西岡、堀川)
使用するデータベースを検討し、使用申請を行い、分析を開始した。
西岡は、国内1中核市の被保護者について、被保護者基本台帳、医療扶助レセプト、介護扶助、障害の認定状況、健診・検診の受診歴のデータを連結し、ライフステージ毎の健康課題と関連要因を分析した。JAGESデータを用いて生活保護利用高齢者の食品摂取の多様性に関連する要因の分析を行った。
堀川は、社会保障生計調査2017年~2021年の5年間の食費データを分析し、論文として投稿した。2019年の「家庭の生活実態及び生活意識に関する調査」と「社会保障生計調査」のデータは個人ごとに連結可能であるため、両者を連結したデータベースを作成した。
項目2 国内外の効果的な取組事例の収集(研究分担者:坂本、小林、太田)
(1)国内の取組事例の収集(坂本)
社会経済的要因による栄養格差を縮小する取組について、国内の自治体、食品関連事業者、市民社会による取組事例を、インターネット検索と実地調査をもとに収集した。
(2)海外の取組事例の収集(小林)
社会経済的要因による栄養格差を縮小する取組について、アメリカ、イギリス、欧州の取組事例をインターネット検索、文献等で収集した。
(3)日本の社会福祉関係の制度への栄養・食生活の位置づけ検討(太田)
全国の生活保護利用者への健康管理支援を行っている福祉事務所(1250件)、生活困窮者の自立支援事業を行っている社会福祉協議会(612件)、子どもの学習支援事業を行っているNPO団体等(757件)に対して郵送によるアンケート調査を行った。
使用するデータベースを検討し、使用申請を行い、分析を開始した。
西岡は、国内1中核市の被保護者について、被保護者基本台帳、医療扶助レセプト、介護扶助、障害の認定状況、健診・検診の受診歴のデータを連結し、ライフステージ毎の健康課題と関連要因を分析した。JAGESデータを用いて生活保護利用高齢者の食品摂取の多様性に関連する要因の分析を行った。
堀川は、社会保障生計調査2017年~2021年の5年間の食費データを分析し、論文として投稿した。2019年の「家庭の生活実態及び生活意識に関する調査」と「社会保障生計調査」のデータは個人ごとに連結可能であるため、両者を連結したデータベースを作成した。
項目2 国内外の効果的な取組事例の収集(研究分担者:坂本、小林、太田)
(1)国内の取組事例の収集(坂本)
社会経済的要因による栄養格差を縮小する取組について、国内の自治体、食品関連事業者、市民社会による取組事例を、インターネット検索と実地調査をもとに収集した。
(2)海外の取組事例の収集(小林)
社会経済的要因による栄養格差を縮小する取組について、アメリカ、イギリス、欧州の取組事例をインターネット検索、文献等で収集した。
(3)日本の社会福祉関係の制度への栄養・食生活の位置づけ検討(太田)
全国の生活保護利用者への健康管理支援を行っている福祉事務所(1250件)、生活困窮者の自立支援事業を行っている社会福祉協議会(612件)、子どもの学習支援事業を行っているNPO団体等(757件)に対して郵送によるアンケート調査を行った。
結果と考察
項目1 生活状況を踏まえた栄養・食生活の実態分析
1)生活保護制度を利用している高齢男性について、共食が多いほど食品の多様性が高かった。食支援の方策として共食の場が有効な可能性がある。(西岡)
2)生活保護利用世帯の実収入総額における食料の合計支出額の割合は5年間で有意な変化は無かった。内訳別では,穀類・調理食品・外食の割合の有意な減少と,菓子類と酒類の割合の有意な増加がみられた。穀類の減少と菓子類の増加から主食を菓子に置き換えている可能性もあり、食支援の際に留意する必要がある。(堀川)
項目2 国内外の効果的な取組事例収集
1)国内の取組事例の収集(坂本)
支援者が使用するニーズを的確に把握するアセスメントツール、同じ予算でもより栄養価の高い食材等を準備・配布するための資料等、利用者が提供された食品を活用できるレシピ配布等が有用と考えられた。子どもたちが最低限の調理スキルを身に付けられるようにするためのツールのニーズがある。
2)海外の取組事例の収集(小林)
食品の提供と同時に、食品の表示の整備、食品の選択方法や調理スキルの教育が実施されていた。
3)日本の社会福祉関係の制度への栄養・食生活の位置づけ検討(太田)
生活保護制度、生活困窮者自立支援事業で介入の可能性がある事業は、自立相談支援事業、家計改善支援事業、就労準備支援事業、子どもの学習支援事業であった。各種事業の初回面談時に口頭で食事状況は把握されていたが、シートでの把握と把握結果の活用は少なかった。食支援として生活保護制度は健康管理支援事業、生活困窮者自立支援事業ではフードバンク等の食料支援につないでいる団体は多かったが、食育等のスキル支援は少なかった。
1)生活保護制度を利用している高齢男性について、共食が多いほど食品の多様性が高かった。食支援の方策として共食の場が有効な可能性がある。(西岡)
2)生活保護利用世帯の実収入総額における食料の合計支出額の割合は5年間で有意な変化は無かった。内訳別では,穀類・調理食品・外食の割合の有意な減少と,菓子類と酒類の割合の有意な増加がみられた。穀類の減少と菓子類の増加から主食を菓子に置き換えている可能性もあり、食支援の際に留意する必要がある。(堀川)
項目2 国内外の効果的な取組事例収集
1)国内の取組事例の収集(坂本)
支援者が使用するニーズを的確に把握するアセスメントツール、同じ予算でもより栄養価の高い食材等を準備・配布するための資料等、利用者が提供された食品を活用できるレシピ配布等が有用と考えられた。子どもたちが最低限の調理スキルを身に付けられるようにするためのツールのニーズがある。
2)海外の取組事例の収集(小林)
食品の提供と同時に、食品の表示の整備、食品の選択方法や調理スキルの教育が実施されていた。
3)日本の社会福祉関係の制度への栄養・食生活の位置づけ検討(太田)
生活保護制度、生活困窮者自立支援事業で介入の可能性がある事業は、自立相談支援事業、家計改善支援事業、就労準備支援事業、子どもの学習支援事業であった。各種事業の初回面談時に口頭で食事状況は把握されていたが、シートでの把握と把握結果の活用は少なかった。食支援として生活保護制度は健康管理支援事業、生活困窮者自立支援事業ではフードバンク等の食料支援につないでいる団体は多かったが、食育等のスキル支援は少なかった。
結論
令和6年度に作成するガイド、ツールについて重要な事項は以下である。
項目1より、生活保護利用者への食支援では、菓子類の摂りすぎへの注意が必要であり、高齢者男性では共食の場も考慮する。
項目2より、既存の各種事業のアセスメントシートで食支援のニーズ把握ができるガイド、ツールが必要である。食環境整備を担う支援者(子どもの学習支援、フードバンク)が、より栄養価が高い食品や料理を提供するとともに、利用者が低価格で栄養価が高い食品を選択し調理できるスキルをつけることができるガイド、ツールが必要である。
項目1より、生活保護利用者への食支援では、菓子類の摂りすぎへの注意が必要であり、高齢者男性では共食の場も考慮する。
項目2より、既存の各種事業のアセスメントシートで食支援のニーズ把握ができるガイド、ツールが必要である。食環境整備を担う支援者(子どもの学習支援、フードバンク)が、より栄養価が高い食品や料理を提供するとともに、利用者が低価格で栄養価が高い食品を選択し調理できるスキルをつけることができるガイド、ツールが必要である。
公開日・更新日
公開日
2025-01-09
更新日
-