文献情報
文献番号
202308018A
報告書区分
総括
研究課題名
大規模レジストリ・大規模臨床試験の分析による標準的糖尿病診療体制の構築のための研究
研究課題名(英字)
-
課題番号
22FA1014
研究年度
令和5(2023)年度
研究代表者(所属機関)
植木 浩二郎(国立国際医療研究センター研究所 糖尿病研究センター)
研究分担者(所属機関)
- 笹子 敬洋(東京大学医学部附属病院 糖尿病・代謝内科)
- 岡崎 由希子(順天堂大学大学院医学研究科 代謝内分泌内科学)
- 野田 光彦(国際医療福祉大学市川病院 糖尿病・代謝・内分泌内科)
- 後藤 温(横浜市立大学医学部・公衆衛生学教室)
- 大杉 満(国立国際医療研究センター糖尿病情報センター)
- 坊内 良太郎(国立国際医療研究センター 糖尿病情報センター 臨床情報研究室)
- 杉山 雄大(国立研究開発法人国立国際医療研究センター 研究所糖尿病情報センター)
- 三宅 加奈(東京大学 医学部附属病院 企画情報運営部/糖尿病・代謝内科)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 循環器疾患・糖尿病等生活習慣病対策総合研究
研究開始年度
令和4(2022)年度
研究終了予定年度
令和6(2024)年度
研究費
8,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-
研究報告書(概要版)
研究目的
糖尿病の良好な管理により合併症を予防することは、寿命の延長とQOLの維持につながることが期待されるが、合併症予防による医療コスト削減と薬剤費などの医療費のバランスについても検討したうえでの標準治療の策定についての研究は、これまでなされてこなかった。
我々は、J-DOIT3試験において、ガイドラインより厳格な治療を行なうことにより、心血管イベント、脳血管イベント、腎症イベントを抑制することを報告した。診療録直結型全国糖尿病データベース事業J-DREAMSを立ち上げ、大規模レジストリを構築した。更に、他の厚労科研研究班と緊密な連携を取りNDB(レセプト情報・特定健診等情報データベース)のデータを用いた全国の糖尿病の診療実態に関する解析に着手している。
J-DOIT3のデータを解析し、得られた仮説をより多くの症例の最新の状況を横断的・縦断的に評価できるJ-DREAMSで検証し、更に非専門施設も含めた全国規模の実態を俯瞰できるNDBのデータへと外挿することで、各々の強みを活かしながらより正確な評価ができるものと期待される。
我々は、J-DOIT3試験において、ガイドラインより厳格な治療を行なうことにより、心血管イベント、脳血管イベント、腎症イベントを抑制することを報告した。診療録直結型全国糖尿病データベース事業J-DREAMSを立ち上げ、大規模レジストリを構築した。更に、他の厚労科研研究班と緊密な連携を取りNDB(レセプト情報・特定健診等情報データベース)のデータを用いた全国の糖尿病の診療実態に関する解析に着手している。
J-DOIT3のデータを解析し、得られた仮説をより多くの症例の最新の状況を横断的・縦断的に評価できるJ-DREAMSで検証し、更に非専門施設も含めた全国規模の実態を俯瞰できるNDBのデータへと外挿することで、各々の強みを活かしながらより正確な評価ができるものと期待される。
研究方法
【J-DOIT3】
腎症・網膜症の発症抑制に寄与する危険因子や薬剤の同定、厳格な多因子介入がQOL、骨折に与える影響などを明らかにする。介入終了後の追跡研究を行う。
【J-DREAMS】
患者の背景情報など、糖尿病標準診療テンプレートを用いて入力し、SS-MIX2標準データ格納システムを用いて蓄積され、多目的臨床データ登録システム(MCDRS)を使用してデータ抽出と送信が行われる。
【NDB】
特別抽出データを解析する環境を整備する。
腎症・網膜症の発症抑制に寄与する危険因子や薬剤の同定、厳格な多因子介入がQOL、骨折に与える影響などを明らかにする。介入終了後の追跡研究を行う。
【J-DREAMS】
患者の背景情報など、糖尿病標準診療テンプレートを用いて入力し、SS-MIX2標準データ格納システムを用いて蓄積され、多目的臨床データ登録システム(MCDRS)を使用してデータ抽出と送信が行われる。
【NDB】
特別抽出データを解析する環境を整備する。
結果と考察
【J-DOIT3】
介入期間中のサブ解析として、①血糖とHDL-コレステロールが心筋梗塞の発症に重要であり、またHDL-コレステロールと合併症との関連には性差があること、②強化療法は網膜症の発症を抑制する一方、進展への明らかな効果は見られなかったこと、③糖尿病による負担感は血糖コントロールと相関することが示された。
加えて追跡研究では、当初予定した5年間の研究期間が終了し、その解析に向けたデータ固定を慎重に進めてきたが、ようやくその準備が整いつつある。本試験のような厳格な多因子介入の効果を、生命予後も含めて長期的に明らかにすることはますます重要となっており、引き続きデータの解析と収集を、質を保ったまま継続していきたい。
【J-DREAMS】
2024年3月末で、大学医学部附属病院や地域中核病院を中心に72施設、102,000人以上の登録がある糖尿病データベースである。
次の点が明らかになった。1年間、2年間でCKDのサロゲートエンドポイントとして用いられるeGFR30%以上の低下の危険因子を解析し、貧血、血清アルブミン低値、心不全が危険因子として同定され、網膜症、腎症の危険因子と共通することが見出された。さらには心不全の新規発症・再発の危険因子として、冠動脈疾患、eGFR低下が同定された。以上より、腎機能低下と心不全には相互に悪影響を与える関係であることが明らかにされた。
【NDBの整備状況】
厚労科研・山内班と緊密に連絡を取り、取得済みの2014年度から2020年度分までを取得した。
介入期間中のサブ解析として、①血糖とHDL-コレステロールが心筋梗塞の発症に重要であり、またHDL-コレステロールと合併症との関連には性差があること、②強化療法は網膜症の発症を抑制する一方、進展への明らかな効果は見られなかったこと、③糖尿病による負担感は血糖コントロールと相関することが示された。
加えて追跡研究では、当初予定した5年間の研究期間が終了し、その解析に向けたデータ固定を慎重に進めてきたが、ようやくその準備が整いつつある。本試験のような厳格な多因子介入の効果を、生命予後も含めて長期的に明らかにすることはますます重要となっており、引き続きデータの解析と収集を、質を保ったまま継続していきたい。
【J-DREAMS】
2024年3月末で、大学医学部附属病院や地域中核病院を中心に72施設、102,000人以上の登録がある糖尿病データベースである。
次の点が明らかになった。1年間、2年間でCKDのサロゲートエンドポイントとして用いられるeGFR30%以上の低下の危険因子を解析し、貧血、血清アルブミン低値、心不全が危険因子として同定され、網膜症、腎症の危険因子と共通することが見出された。さらには心不全の新規発症・再発の危険因子として、冠動脈疾患、eGFR低下が同定された。以上より、腎機能低下と心不全には相互に悪影響を与える関係であることが明らかにされた。
【NDBの整備状況】
厚労科研・山内班と緊密に連絡を取り、取得済みの2014年度から2020年度分までを取得した。
結論
【J-DOIT3】
介入期間中のサブ解析から、①血糖とHDL-コレステロールが心筋梗塞の発症に重要であり、またHDL-コレステロールと合併症との関連には性差があること、②強化療法は網膜症の発症を抑制する一方、進展への明らかな効果は見られなかったこと、③糖尿病による負担感は血糖コントロールと相関することが示された。
加えて追跡研究では、当初予定した5年間の研究期間が終了し、その解析に向けたデータ固定を慎重に進めてきたが、ようやくその準備が整いつつある。
【J-DREAMS】
合併症に関する横断観察研究の解析結果を提示した。J-DREAMSは参加施設・登録症例も増加しており、1型糖尿病患者も多く含む糖尿病症例データベースである。検査結果だけでなく、症例の背景情報が豊富に収集されていることから横断解析、縦断解析のいずれにも用いることが出来ることが示された。
【NDBの整備状況】
NDB特別抽出データを利用する準備を整えている。
介入期間中のサブ解析から、①血糖とHDL-コレステロールが心筋梗塞の発症に重要であり、またHDL-コレステロールと合併症との関連には性差があること、②強化療法は網膜症の発症を抑制する一方、進展への明らかな効果は見られなかったこと、③糖尿病による負担感は血糖コントロールと相関することが示された。
加えて追跡研究では、当初予定した5年間の研究期間が終了し、その解析に向けたデータ固定を慎重に進めてきたが、ようやくその準備が整いつつある。
【J-DREAMS】
合併症に関する横断観察研究の解析結果を提示した。J-DREAMSは参加施設・登録症例も増加しており、1型糖尿病患者も多く含む糖尿病症例データベースである。検査結果だけでなく、症例の背景情報が豊富に収集されていることから横断解析、縦断解析のいずれにも用いることが出来ることが示された。
【NDBの整備状況】
NDB特別抽出データを利用する準備を整えている。
公開日・更新日
公開日
2025-04-02
更新日
-