中核拠点病院において行われるカウンセリングの質を向上させる研究

文献情報

文献番号
200932013A
報告書区分
総括
研究課題名
中核拠点病院において行われるカウンセリングの質を向上させる研究
課題番号
H20-エイズ・一般-006
研究年度
平成21(2009)年度
研究代表者(所属機関)
山中 京子(大阪府立大学 人間社会学部)
研究分担者(所属機関)
  • 安尾利彦(独立行政法人国立病院機構大阪医療センター)
  • 内野悌司(広島大学保健管理センター)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 エイズ対策研究
研究開始年度
平成20(2008)年度
研究終了予定年度
平成21(2009)年度
研究費
1,615,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
今年度は、(1)中核拠点病院カウンセリング制度の導入時の課題の明確化、(2)医療者によるCo.導入の力量形成のための具体的介入の実施(3)HIV感染者・患者のCo.ニーズおよび利用上の課題の明確化、(4)患者ニーズに応えるCo.の専門的力量の形成のための研修方法の検討を目的に4つの研究を実施した。
研究方法
研究1:全国54カ所の中核拠点病院の診療責任医を対象にアンケート調査を実施した。研究2:医師、看護師などへの個別聞き取り調査を実施し、その結果を盛り込んだワークショップを開催した。研究3:中核拠点病院およびブロック拠点病院に通院するHIV感染者に無記名自記式質問紙調査を実施した。研究4:中核拠点病院を対象にチームによる研修を先駆的に実施している中国四国ブロックの「包括的HIVカウンセリング研修」を対象にプログラム内容および参加者アンケートを分析した。
結果と考察
研究1:33ヶ所の病院からアンケートを回収(回収率61.1%)し、中核拠点病院対象のカウンセリング制度に関する導入上の困難では、「関連情報の獲得」、「各種事務手続き」、「カウンセラー人材の確保」などが明らかとなった。研究2:医療者がカウンセリング導入を判断する際のアセスメント項目、カウンセラーとの情報共有の具体的工夫などが明らかとなった。研究3:HIV感染者の悩みの経験では、「HIV感染によるショック・動揺」が93.7%、「仕事や学校に関する悩み」84.2%、「家族に、HIV感染を伝えるかどうか」83.5%であった。悩みを経験した割合を病院種別でみた結果、概ねブロック拠点病院通院患者に比べ中核拠点病院通院患者の方が、悩みを経験する割合が高かった。また、スタッフからのCo.に関する説明を尋ねたところ、「受けたことがある」ではブロック拠点病院63.1%に対し、小規模中核拠点病院48.5%であった。研究4では、参加者アンケートにおいて、研修方法として困難事例の検討、院内カウンセリング体制のセルフチェックが高く評価された。
結論
中核拠点病院におけるカウンセリングの質を向上させるため、カウンセリング制度、HIV感染者、医療者、カウンセラーを対象に各種調査を実施し、制度実施上の課題、利用者のカウンセリングへの利用者のニーズとその課題、ニーズに見合ったカウンセリング導入の具体的方法、カウンセラーの効果的研修方法などが明らかとなった。

公開日・更新日

公開日
2014-05-26
更新日
-

文献情報

文献番号
200932013B
報告書区分
総合
研究課題名
中核拠点病院において行われるカウンセリングの質を向上させる研究
課題番号
H20-エイズ・一般-006
研究年度
平成21(2009)年度
研究代表者(所属機関)
山中 京子(大阪府立大学 人間社会学部)
研究分担者(所属機関)
  • 兒玉憲一(広島大学大学院 教育学研究科)
  • 安尾利彦(独立行政法人 国立病院機構 大阪医療センター 免疫感染症科および精神科)
  • 内野悌司(広島大学保健管理センター)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 エイズ対策研究
研究開始年度
平成20(2008)年度
研究終了予定年度
平成21(2009)年度
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
本研究はHIV医療体制における中核拠点病院のカウンセリング機能の質的な向上を最終目的として実施された。具体的な研究目的は、研究1:中核拠点病院のカウンセリング体制の現状把握、研究2:医療者による専門的カウンセラー(以下Co.と略記)の導入方法の明確化、導入の力量形成のための介入の実施、研究3:HIV感染者のカウンセリング・ニーズおよび利用上の課題の明確化、研究4: Co.の専門的力量形成上の課題および研修方法の明確化である。
研究方法
研究1:各年度に全中核拠点病院54カ所の診療責任医各1名にアンケート調査を実施。研究2:各年度にブロック拠点病院および中核拠点病院の医師、看護師などに集団面接調査などを行い、その結果より医療者向けのWSを開催。研究3:21年度にブロック拠点病院7ヶ所および中核拠点病院20ヶ所に通院するHIV感染者にアンケート調査(配布数506部)を実施。研究4:20年度にはCo.対象の個別面接調査を、また21年度には中核拠点病院を対象にチームによる研修を実施している中国四国ブロックの研修を対象に、プログラム内容および参加者アンケートの分析を実施。
結果と考察
研究1:体制の現状(利用群:7割、派遣、中核、院内Co.制度の複数利用)、課題(利用群:患者が求めない、複数制度間の調整など、未利用群:制度情報不足、Co.の支援効果の情報不足)、医師の導入意識(告知直後、人間関係問題、孤立感などの対処でCo.の導入を意識)などが明確化された。研究2:Co.導入の判断基準、導入の具体的方法などを明確化し、医療者向けWSを2回開催。研究3:回収数303部。経験率の高い悩みとして、告知後の動揺、周囲への病名告知、孤独感などがあることが判明。Co情報の獲得では、中核群の獲得率が低く、Co.利用に関するスタッフからの勧めも中核群において経験が少なかった。研究4:参加者へのアンケート調査の結果、事例検討はCo.によるアセスメントの理解と多職種検討での多面的事例理解により評価された。
結論
中核拠点病院におけるカウンセリング機能の質的な向上を最終目的として、医師、看護師、HIV感染者、Co.を対象に各種調査を行い、カウンセリング体制上の課題および課題解決方策、Co.導入の具体的方法、利用当事者であるHIV感染者のカウンセリング利用上の課題などを明確化し、Co.導入の力量形成に関しては具体的な介入を実施した。

公開日・更新日

公開日
2014-05-26
更新日
-

行政効果報告

文献番号
200932013C

成果

専門的・学術的観点からの成果
H21年度のHIV感染者への調査により、カウンセリングに対する利用者の主観的評価および平成20年度の診療医への調査により医師の医療におけるカウンセリングの導入評価が明らかになり、カウンセリングの効果評価研究に貢献した。また、H20・21年度の医療者(医師・看護職等対象)へのFGDなどにより、医療者によるカウンセリングの包括医療への導入の考え方やアセスメント方法を明確化し、医療におけるチームによる連携・協働の方法論研究に貢献した。
臨床的観点からの成果
H21年度のHIV感染者への調査により、HIV感染者の心理・社会的問題の内容別経験率、相談率、相談の対象、カウンセリングの利用の有無、カウンセリング利用経験の評価、未利用の理由などを分析し、臨床におけるHIV感染者への具体的な支援のあり方に示唆を提供した。H20・21年度の医療者(医師・看護職等対象)へのFGDなどにより、臨床におけるカウンセリング導入の具体的方法や工夫を明らかにした。H20・21年度の医師への調査により、院内にカウンセリング制度を導入する際の課題解決方策を明らかにした。
ガイドライン等の開発
H20・21年度に各1回合計2回にわたり医療者(医師・看護職等対象)へのFGDなどの調査結果を盛り込んだワークショップを企画・実施し、FGDおよびWSの結果をまとめたWS資料集を作成してカウンセリングの導入方法を具体的に示し、全国の中核拠点病院の医師、看護師、カウンセラーに配布した。
その他行政的観点からの成果
ブロック拠点病院に次ぐ診療拠点の創出をめざす中核拠点病院構想の実現のためには、中核拠点病院の包括医療の質がブロック拠点病院と同様に均てん化される必要がある。本研究では、カウンセリングの病院組織への導入の課題解決方策、カウンセラーの診療チームへの導入方法の明確な提示を行い、カウンセリングの中核拠点病院への新規導入・継続導入における体制の強化および質の向上に対して貢献した。具体的には、中核拠点病院対象(エイズ予防財団管轄)のカウンセリング制度の導入は、研究年度内に15カ所から25カ所に増えた。
その他のインパクト
H20・21年度には各1回合計2回にわたり医療者(医師・看護職等対象)へのFGDなどの研究結果を盛り込んだワークショップを各年度のエイズ学会の会場で開催した。このWSはHIVカウンセリング関連のHPの広く告知を行った。参加者アンケートによれば、医療者のみならず、NGO関係者やHIV感染者の参加も見られ、カウンセリングの理解促進に貢献した可能性が示唆される。なお、報告書およびWS資料集は、上記HPに掲載し、研究結果の広いアクセスを可能にしている。

発表件数

原著論文(和文)
1件
平成20年度研究結果に基づき、中核拠点病院におけるカウンセリング体制の現状と課題の分析に関して、性科学に関する学会誌に論文を投稿、公表した。
原著論文(英文等)
0件
その他論文(和文)
0件
その他論文(英文等)
0件
学会発表(国内学会)
4件
日本エイズ学会、日本福祉社会学会において、研究成果を発表した
学会発表(国際学会等)
0件
その他成果(特許の出願)
0件
「出願」「取得」計0件
その他成果(特許の取得)
0件
その他成果(施策への反映)
0件
その他成果(普及・啓発活動)
4件
平成20・21年度日本エイズ学会において各1回合計2回医療者向けのカウンセリング導入の具体的方法に関するワークショップを開催した。また研究報告書およびWS資料集は関連のHPに掲載した。

特許

主な原著論文20編(論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限る)

論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限ります。

原著論文1
山中京子
HIV感染症に対するカウンセリング体制の現状および課題に関する研究―中核拠点病院診療医に対する調査結果を中心に―
日本性科学会 , 27 (1) , 35-48  (2009)

公開日・更新日

公開日
2014-05-26
更新日
-