文献情報
文献番号
202308008A
報告書区分
総括
研究課題名
エビデンスに基づいたロコモティブシンドローム早期対策の実践に資する包括的研究
課題番号
22FA1003
研究年度
令和5(2023)年度
研究代表者(所属機関)
田中 亮(国立大学法人広島大学 大学院人間社会科学研究科)
研究分担者(所属機関)
- 安達 伸生(国立大学法人広島大学 大学院医系科学研究科)
- 三上 幸夫(広島大学病院 リハビリテーション科)
- 高橋 真(国立大学法人広島大学 大学院医系科学研究科(保))
- 緒形 ひとみ(国立大学法人広島大学 大学院人間社会科学研究科)
- 秋田 智之(国立大学法人広島大学 大学院医系科学研究科 疫学・疾病制御学)
- 光武 翼(福岡国際医療福祉大学 医療学部 理学療法学科)
- 猪村 剛史(広島都市学園大学 健康科学部リハビリテーション学科)
- 生田 祥也(広島大学病院 整形外科)
- 岩本 義隆(広島大学病院 診療支援部リハビリテーション部門)
- 田中 繁治(神奈川県立保健福祉大学 保健福祉学部リハビリテーション学科理学療法学専攻)
- 牛尾 会(広島大学病院 リハビリテーション科)
- 平田 和彦(広島大学病院 診療支援部リハビリテーション部門)
- 井上 優(吉備国際大学 保健医療福祉学部)
- 山科 俊輔(国立大学法人広島大学 大学院人間社会科学研究科)
- 出口 直樹(東京都健康長寿医療センター研究所 自立促進と精神保健研究チーム)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 循環器疾患・糖尿病等生活習慣病対策総合研究
研究開始年度
令和4(2022)年度
研究終了予定年度
令和6(2024)年度
研究費
4,816,000円
研究者交替、所属機関変更
-
研究報告書(概要版)
研究目的
本研究の目的は、ロコモティブシンドローム(ロコモ)、フレイル、サルコペニアの関係性を整理し、エビデンスに基づいて簡便な診断法や介入方法を確立し、将来的に要介護となる者を未然に減らす施策の提言を行うことである。
研究方法
令和4年度に引き続き令和5年度も本研究のために3つの研究項目を設定した。研究項目1は「ロコモのスクリーニング方法の検証」とした。横断研究を行ってロコモ非該当を基準個体とした体力測定の基準範囲を検証した。また、若年者を含む非高齢者を対象にロコモ度を推定する体力測定の診断閾値を検証した。さらに、スマートフォンのカメラを使って歩行の運動学的特徴からロコモ度を推定できるか検討した。研究項目2は「運動と栄養に睡眠管理を加えた有効性の検証」とした。システマティックレビューおよびネットワークメタアナリシスを行い、若年者を含む非高齢者に対する介入が睡眠の質に与える効果に関するエビデンスを評価した。また、ランダム化比較試験(RCT)を行い、若年者を対象に運動、栄養、睡眠に着目した生活習慣の見直しが移動機能の改善に及ぼす効果を検証した。研究項目3は「ロコモ、フレイル、サルコペニアの因果関係の検証」とした。コホート研究を実施し、サルコペニアの有無と1年後のロコモの関係、および、ロコモの有無と1年後のフレイルの関係を検討した。
結果と考察
研究項目1ではロコモ非該当を基準個体とした握力、歩行速度、Timed up & go(TUG)テストの基準範囲が検証された。また、若年者を含む非高齢者を対象にした場合、ロコモ度を推定する体力測定の診断閾値の精度は高くないことが示唆された。さらに、歩行の運動学的特徴からロコモの有無や重症度を推定できる可能性が示唆された。研究項目2ではシステマティックレビューの結果、レジスタンストレーニングが若年者を含む非高齢者の睡眠の質を高める介入方法であることが高いエビデンスレベルで確認された。RCTの結果、運動および食に加えて睡眠にも着目した生活習慣の見直しには健康的な若年者の移動機能を向上させる効果があることが示唆された。ただし、睡眠管理を見直しに追加しても運動および食にだけ着目した生活習慣と比べて移動機能がより向上するとはいえなかった。研究項目3ではサルコペニアの有無と1年後のロコモ度の変化に有意な関連は示されたなかった。一方、ロコモの有無と1年後のフレイル進行の有意な関連が示された。
結論
体力測定の結果を活かしたスクリーニング方法の妥当性の一部が作成、検証された。睡眠管理を含めた生活習慣の見直しはロコモの改善に有効であることを示すエビデンスが得られた。ロコモ、フレイル、サルコペニアの因果関係の一部が認められた。
公開日・更新日
公開日
2024-08-16
更新日
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