HIV関連Lipodystrophyの克服に向けて

文献情報

文献番号
200932008A
報告書区分
総括
研究課題名
HIV関連Lipodystrophyの克服に向けて
課題番号
H20-エイズ・一般-001
研究年度
平成21(2009)年度
研究代表者(所属機関)
秋田 定伯(長崎大学 病院)
研究分担者(所属機関)
  • 白阪 琢磨(大阪医療センター エイズ先端医療研究部)
  • 吉野 宗宏(大阪医療センター 薬剤科)
  • 菊池 嘉(国立国際医療センター エイズ治療・研究開発センター)
  • 山本 有平(北海道大学大学院医学研究科)
  • 山下 俊一(長崎大学大学院医歯薬学総合研究科)
  • 上谷 雅孝(長崎大学大学院医歯薬学総合研究科)
  • 藤岡 正樹(長崎医療センター )
  • 吉本 浩(長崎大学 病院 )
  • 宮崎 泰司(長崎大学大学院医歯薬学総合研究科)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 エイズ対策研究
研究開始年度
平成20(2008)年度
研究終了予定年度
平成22(2010)年度
研究費
24,450,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
本研究は、抗HIV剤の長期的投与によって引き起こされると考えられるHIV関連Lipodystrohpy(以下Lipodystrophy)の治療を目標とする。自家脂肪幹細胞(皮下脂肪組織の吸引採取と幹細胞移植手術を一回で実施)などによる移植細胞治療を客観的評価法を共に確立する。
研究方法
頭頚部、体幹部の臨床調査、容量三次元CT画像での皮下脂肪組織の分布、(半)定量組織量測定し、2例の血友病患者に脂肪幹細胞移植の実施し細胞培養及びラットにて細胞特性、組織特性を検討した。
結果と考察
分担施設で服薬機関平均9年、d4TなどNRTI服用を含む組み合わせが多いこと、血清脂肪値の上昇を認めた。
高度の顔面萎縮を伴い抗HIV剤としてNRTI、PIを服用した30歳代及び40歳代血友病AのHIV/HCV重複感染患者さんに自家脂肪幹細胞移植(吸引脂肪25gから500,000個細胞を10g脂肪吸引組織と共に、患者さん頬部鼻唇溝陥凹部に注入移植)し、術後3ヶ月で著明な臨床症状の改善と容量三次元CTでの解析で移植部位に一致して脂肪組織が経時的に増加していることを認めた。また、HIV患者さん由来の脂肪幹細胞を1例長期培養株として樹立することに成功した。HIV患者さん由来脂肪幹細胞がそれ以外の脂肪幹細胞と異なる性質を示す指標は見当たらなかったまた、細胞質に脂肪滴を包含する脂肪細胞への分化誘導能を比較検討したが、HIV患者由来脂肪幹細胞に特徴的な差異は認められなかったため、抗HIV剤接触環境の影響がLipodystrophyの原因と示唆された。

服薬内容とLipodystrophyは各患者の服薬パターン、期間などが複雑であるが一定の傾向を認めており、長期間内服でLipodystrophyを認めると推察された。今後臨床スコア化により定量化した後、エイズ拠点病院などへのアンケート調査も必要と思われた。2例のみであるが、自家脂肪幹細胞移植は安全で効果的であり、臨床的にも容量CTを用いた容積計測上も有用であった。更なる症例の蓄積と中長期の経過観察が重要となると考えられた。臨床上で単純な皮下組織移植と比較しての有用性が示唆された。脂肪幹細胞と抗HIV薬剤との環境条件設定などで検討が必要であると思われた。
結論
臨床症状と容量CTを用いたLipodystrophyの程度はある程度正の相関を示すが、更に臨床例の蓄積が必要である。簡便な臨床スコアでの評価でLipodystrophyの程度をわが国の実態として検討する必要がある。自家脂肪由来幹細胞移植は簡便でドナー部への侵襲も少なく、有望な治療方法である。

公開日・更新日

公開日
2010-10-05
更新日
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研究報告書(紙媒体)

公開日・更新日

公開日
2011-02-16
更新日
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