がん罹患前より障害があるがん患者に対する医療機関における適切な医療・支援の実装に資する研究

文献情報

文献番号
202307039A
報告書区分
総括
研究課題名
がん罹患前より障害があるがん患者に対する医療機関における適切な医療・支援の実装に資する研究
研究課題名(英字)
-
課題番号
23EA1030
研究年度
令和5(2023)年度
研究代表者(所属機関)
八巻 知香子(国立研究開発法人国立がん研究センター がん対策研究所 がん情報提供部)
研究分担者(所属機関)
  • 山内 智香子(滋賀県立成人病センター 放射線治療科)
  • 櫻井 裕幸(日本大学 医学部)
  • 今橋 久美子(藤田 久美子)(国立障害者リハビリテーションセンター 研究所)
  • 堀之内 秀仁(独立行政法人国立がん研究センター中央病院 呼吸器内科)
  • 打浪 文子(立正大学 社会福祉学部)
  • 高山 亨太(日本社会事業大学 付置研究所)
  • 濱田 麻邑(特定非営利活動法人 支援技術開発機構 研究部 )
  • 中山 富雄(国立研究開発法人国立がん研究センター がん対策研究所 検診研究部)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 がん対策推進総合研究
研究開始年度
令和5(2023)年度
研究終了予定年度
令和7(2025)年度
研究費
8,944,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
もともと障害のある人でがんに罹患する人は相当数にのぼることが推察され、障害者のニーズに対応し、適切な医療・検診を提供するために、どのように整備することが有効かつ現実的であるのか、その方法はまだ明らかではない。本研究は、罹患前から障害のあるがん患者への適切な医療の提供ならびにがん検診の普及に必要な環境整備に寄与するため、1)がん診療連携拠点病院が、障害のある患者に対して病院の体制として必要な合理的配慮を提供し、適切ながん医療を提供するために必要な事項を明らかにすること、2)1を支えるコミュニケーション支援ツール等の資材を継続的に提供する方法を明らかにすること、3)がん診療連携拠点病院で体制整備を行うために活用可能な情報提供資材、コミュニケーション支援資材、職員への研修プログラムが、地域で普及するために有効な方法を明らかにすること、4) 一般のがん検診で利益の得られるがん検診の対象者でありながら、検診を受けられていない人の状態像と検診が受けられない理由を明らかにし、検診受診を促進するための方策を提案することを目的とする。
研究方法
1) がん診療連携拠点病院での障害のある患者の受診実態と、障害者への対応状況の把握
・がん診療連携拠点病院にどのような障害のある患者がどれだけ来院しているのか、病院職員が把握し適切な対応ができているのかを確認するため、カルテ情報を抽出する他施設共同研究を立案した。
・がん診療連携拠点病院等で、障害のある人たちへの対応についてウェブサイト上で網羅的に調査した。
2) 障害のあるがん患者の受診を支えるコミュニケーション支援ツールの持続的な提供方法の検討
・先行研究班でのわかりやすい版作成の手順やノウハウをもとに「子宮頸がん わかりやすい版」を作成した。
・発達障害者や高齢者など、音声情報と視覚情報の双方を利用することで、情報が理解しやすくなるかどうかを検証するため、わかりやすい版がん情報のマルチメディアDAISY形式への変換手順を検討した。
3) がん診療連携拠点病院等の職員への研修プログラムを継続的に普及する方法の検討
・医療現場での障害者ヘの適切な対応を促すため、「医療従事者のためのサポートガイド『知的・発達障害の方が病院に来院されたら』」に関するサポートガイドを作成し、知的・発達障害者支援者に配布し、評価アンケート調査を行った。
・医療従事者向けの障害者対応研修を実施した。2時間のオンライン開催で、視覚障害、聴覚障害、知的障害、それぞれの領域において、研究者と各障害のある患者、または日常生活を支援する福祉専門職の2人1組で講義を行う内容で構成した。
・障害のある人の受診時に医療機関および医療者に求められる対応内容について、手話、字幕、音声を付与した46分の動画をE-learning教材として作成し、教材の評価を行った。
4) 障害者のがん検診の国内外の状況の把握
・自治体、医療関係者、障害者施設関係者へ各約1時間の対面及びWEBインタビューを実施した。
・障害者のがん検診のあり方を検討するために、障害のある方のがん検診の海外動向をWebで探索的に調査した。
結果と考察
1)がん診療連携拠点病院の障害のある患者の受診実態と障害者への対応状況の把握:1施設の受診実態を分析した結果、障害認定を受けた初診患者の割合は障害手帳保持者の割合に比して低い可能性があった。がん診療連携拠点病院の公式ウェブサイトの網羅的探索では、障害に対する配慮が記載されている施設は少なく、特に人的対応についての記載はほとんど見られなかった。これらのことから、がん診療連携拠点病院では障害のある患者のニーズを認識する機会が限られ、障害のある患者への合理的配慮に関する情報が充分に公表されていない可能性がある。2)障害のあるがん患者の受診を支えるコミュニケーション支援ツールの持続的な提供方法の検討:「わかりやすい版」資料の作成の手順を概ね確定することができた。3)がん診療連携拠点病院等の職員への研修プログラムを継続的に普及する方法の検討:障害者のニーズや必要な配慮を伝える資材、研修、E-learningを作成・実施、評価を行い、概ね肯定的な評価を得た。4)障害者のがん検診の国内外の状況の把握: 障害者のがん検診受診に関するヒアリング調査からは、がん検診の受診に物理的、心理的なハードルがあり得ること、障害の程度に応じて実施可能ながん種と不可能ながん種があることが明らかになってきた。海外の動向については、ウェブサイト上の公開情報で明らかになることは限られたが、知的障害のある人にもわかりやすい資料の提供は調査対象の4国とも行われており、障害のある人へのがん検診の情報提供の必要性は認識されていた。
結論
今後は初年度の探索的な知見を踏まえて、具体的な提案の検討に進めていく予定である。

公開日・更新日

公開日
2024-05-31
更新日
-

研究報告書(PDF)

研究成果の刊行に関する一覧表
倫理審査等報告書の写し

公開日・更新日

公開日
2024-05-31
更新日
2024-09-20

研究報告書(紙媒体)

収支報告書

文献番号
202307039Z