小児・AYA世代がん患者に対するがん・生殖医療における心理社会的支援体制の構築と安全な長期検体保管体制の構築を目指した研究―サバイバーシップ向上を志向して

文献情報

文献番号
202307025A
報告書区分
総括
研究課題名
小児・AYA世代がん患者に対するがん・生殖医療における心理社会的支援体制の構築と安全な長期検体保管体制の構築を目指した研究―サバイバーシップ向上を志向して
課題番号
23EA1016
研究年度
令和5(2023)年度
研究代表者(所属機関)
鈴木 直(聖マリアンナ医科大学 医学部)
研究分担者(所属機関)
  • 小泉 智恵(獨協医科大学 医学部)
  • 津川 浩一郎(聖マリアンナ医科大学 外科学 乳腺・内分泌外科)
  • 杉本 公平(獨協医科大学越谷病院 リプロダクションセンター)
  • 古井 辰郎(岐阜大学大学院 医学系研究科)
  • 二村 学(岐阜大学大学院医学系研究科・腫瘍制御学講座 腫瘍外科学分野)
  • 高井 泰(埼玉医科大学総合医療センター産婦人科)
  • 松本 広志(埼玉県立がんセンター乳腺外科)
  • 大野 真司(がん研有明病院)
  • 竹井 淳子(聖路加国際大学 乳腺外科)
  • 西山 博之(筑波大学医学医療系臨床医学域腎泌尿器外科学)
  • 根来 宏光(筑波大学 医学医療系)
  • 湯村 寧(横浜市立大学附属市民総合医療センター)
  • 池田 智明(国立大学法人三重大学 医学系研究科)
  • 杉山 隆(国立大学法人愛媛大学 大学院医学系研究科)
  • 松本 公一(国立研究開発法人 国立成育医療研究センター 小児がんセンター)
  • 太田 邦明(東邦大学医学部産科婦人科学教室)
  • 平山 雅浩(国立大学法人三重大学 大学院医学系研究科小児科学分野)
  • 堀江 昭史(京都大学 産科婦人科)
  • 真部 淳(国立大学法人 北海道大学大学院 医学研究院 小児科学教室)
  • 原田 美由紀(東京大学 医学部附属病院)
  • 鈴木 達也(自治医科大学 医学部)
  • 前沢 忠志(三重大学 医学部)
  • 竹中 基記(岐阜大学 医学部)
  • 北野 敦子(聖路加国際大学 聖路加国際病院)
  • 片桐 由起子(東邦大学 医学部産科婦人科学講座)
  • 安岡 稔晃(愛媛大学 医学部)
  • 洞下 由記(奥津 由記)(聖マリアンナ医科大学 産婦人科学)
  • 久慈 志保(聖マリアンナ医科大学 医学部産婦人科学)
  • 中村 健太郎(聖マリアンナ医科大学 医学部産婦人科学)
  • 坂本 はと恵(国立研究開発法人国立がん研究センター東病院 サポーティブケア室)
  • 伊東 雅美(富山大学 医学部産婦人科)
  • 岩谷 胤生(岡山大学病院 乳腺・内分泌外科)
  • 秋田 直洋(日本赤十字社愛知医療センター名古屋第一病院 小児医療センター血液腫瘍科)
  • 米村 雅人(国立がん研究センター東病院 薬剤部)
  • 歌野 智之(国立成育医療研究センター 薬剤部)
  • 網野 一真(日本赤十字社 諏訪赤十字病院 薬剤部)
  • 木村 文則(滋賀医科大学 医学部 )
  • 片岡 明美(がん研究会有明病院 乳腺センター乳腺外科)
  • 寺下 友佳代(北海道大学 大学病院)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 がん対策推進総合研究
研究開始年度
令和5(2023)年度
研究終了予定年度
令和7(2025)年度
研究費
15,380,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
がん・生殖医療は発展しつつあるが、がん・生殖医療のゴールが「妊娠・分娩」だけでは無く、「情報提供と意思決定支援」であり、さらに「妊孕性温存に至らなかった又は不可能であったがん患者の心理社会的ケア」、「がんとの共生」と関連のあるがん・生殖医療領域の種々の課題等、解決すべき課題が山積している。各関連学会との密接な連携実績を基盤として、がん・生殖医療における心理社会的支援体制の構築、を目指した政策提言、長期検体保管体制のあり方を提言する
研究方法
5つの研究を計画立案した
①妊孕性温存に関する情報提供・意思決定支援及び長期フォローアップ体制の構築に向けた研究
②心理社会的介入による意思決定支援並びに精神的なケア提供に向けた研究
③がん・生殖医療に係る医療従事者の人材育成と普及に関する研究
④「がんとの共生」に関連する小児・AYA世代がん患者におけるがん・生殖医療に関する今後の課題検証に関する研究
⑤妊孕性温存検体の安全かつ確実な長期検体温存方法および運用体制の構築に関する研究
結果と考察
①産婦人科専攻医指導施設:小児科と産婦人科の医療従事者教育と、患者自身の自己管理意識につながる患者教育が必要である。小児がん拠点病院:医療者のトランジショナル・ケアに対する認識を変え、患者自身の自己管理につながる患者教育、いわゆるヘルス・リテラシーの向上がトランジショナル・ケアの推進につながる
②(RESPECT試験)2023年度の症例獲得数は8症例、目標症例にあと35症例となった。今後も症例登録と試験遂行を加速していく
(CONFRONT試験)2023年度は11症例が試験に同意し参加した。患者の試験参加が円滑に進むよう、外来で精子凍結直後に試験を案内し、同意された患者の状況が許す限り外来の個室で機材を貸し出して実施した
③(薬剤師調査)医師は妊孕性等に疑問があるときに他職種や他医師に質問することが多かったが、薬剤師は自分で調べる回答がみられた。医師と薬剤師の連携には、薬剤師がより多くの性腺毒性や妊孕性温存に関する知識を得ることで、情報共有を円滑にすることが出来ると考えた
(遺伝カウンセラー調査)医師からの結果では、遺伝性腫瘍についてのみならずがん・生殖医療に関連した内容を遺伝カウンセラーが情報提供するように期待する回答を多く認めた。多職種でがん・生殖医療に取り組んでいく上で、遺伝カウンセラーからのがん・生殖医療の情報提供は、大切な取り組みの一つとなる発展性が示唆された
④-1相談対応の際に活用する情報を最新かつ適切なものとすることへのがん専門相談員の意識は高い傾向にある。組織内での体制づくりがなされることによって、がん相談支援センターの業務の進展と質向上が図られる可能性がある
④-2回答した患者の約半数が里親制度・特別養子縁組制度の情報探索をされた経験があり、使用頻度の高いSNSはX、インスタグラム、Youtube であった
④-3アピアランスの変化に対する補完技術の提供と同時に、心理的な問題に対する介入も必要であり、多職種によるアプローチが必要であることが考えられる
④-4妊娠期がんの経験を有する医師は、自施設内に産科や小児科・NICUが併設されている大学病院や総合病院勤務者が多かった。妊娠期がん障壁として、連携施設がないことや、癌治療医自体の産科に関する知識がないこと、妊娠期がん診療に不慣れな点が挙げられた
④-5死後生殖に関する世界の現状を調査し、架空事例を元に死後生殖の是非に関する議論を行っている。法的拘束力がない以上、十分なる社会的な議論と判断が必要であり早急な法整備が求められる
⑤海外の妊孕性温存施設は多くが集約化されており、卵巣組織凍結については、多くの国で1~数施設での凍結保存を行っている。公的補助や保険の適応も含めた費用面に関して、国による差異が大きかった
結論
がん診療連携拠点病院等における、妊孕性温存に関する様々な情報の提供と意思決定支援並びに長期フォローアップ体制の実態を検証することで、小児・AYA世代がん患者に対するより良い心理社会的ケアを提供することができる。がん・生殖医療に精通する医療従事者(がん治療医、看護師、心理士、薬剤師、遺伝カウンセラー、がん相談員等)を育成することで、本領域に関する情報提供や相談支援の質を向上させ、様々な心理社会的状況下の小児・AYA世代がん患者に対して、個々の状況に応じた多様なニーズへの対応が期待できる。長期保管時のがん患者の心理社会的ケアの体制構築、妊孕性温存ができなかった患者に対する支援、妊孕性温存療法研究促進事業の今後の課題解決の方策等の成果によって、国のがん対策への方策の一助を提言することができる。妊孕性温存検体を安全かつ確実に長期保管するための危機管理マニュアルの作成によって、本邦おける適切な長期保存運用体制の提案が期待できる

公開日・更新日

公開日
2024-05-31
更新日
-

研究報告書(PDF)

研究成果の刊行に関する一覧表
倫理審査等報告書の写し

公開日・更新日

公開日
2024-05-30
更新日
-

研究報告書(紙媒体)

収支報告書

文献番号
202307025Z