放射線療法の提供体制構築に資する研究

文献情報

文献番号
202307021A
報告書区分
総括
研究課題名
放射線療法の提供体制構築に資する研究
課題番号
23EA1012
研究年度
令和5(2023)年度
研究代表者(所属機関)
大西 洋(国立大学法人 山梨大学 大学院総合研究部医学域放射線医学講座)
研究分担者(所属機関)
  • 大野 達也(群馬大学)
  • 溝脇 尚志(京都大学 大学院医学研究科)
  • 高橋 健夫(埼玉医科大学 医学部)
  • 中村 和正(浜松医科大学 医学部)
  • 内田 伸恵(東京都済生会中央病院 放射線治療科)
  • 生島 仁史(徳島大学 医歯薬学研究部)
  • 東 達也(国立研究開発法人 量子科学技術研究開発機構 量子医学・医療部門  放射線医学総合研究所 分子イメージング診断治療研究部)
  • 絹谷 清剛(金沢大学医薬保健研究域医学系)
  • 細野 眞(近畿大学 医学部)
  • 霜村 康平(京都医療科学大学 医療科学部 放射線技術学科)
  • 岡本 裕之(国立がん研究センター中央病院  放射線品質管理室)
  • 荒尾 晴惠(大阪大学大学院医学系研究科)
  • 草間 朋子(大分県立看護科学大学)
  • 谷 謙甫(ユーロメディテック株式会社 医学物理室)
  • 井垣 浩(国立研究開発法人 国立がん研究センター中央病院 放射線治療科)
  • 篠原 亮次(山梨大学大学院 総合研究部附属 出生コホート研究センター)
  • 黒岡 将彦(東京医科大学病院 放射線治療品質管理室)
  • 太田 誠一(京都府立医科大学 医学部附属病院)
  • 神宮 啓一(東北大学 大学院医学系研究科放射線腫瘍学分野)
  • 小宮山 貴史(山梨大学 放射線医学講座)
  • 齋藤 正英(山梨大学 医学部放射線医学講座)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 がん対策推進総合研究
研究開始年度
令和5(2023)年度
研究終了予定年度
令和7(2025)年度
研究費
7,577,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
がん診療連携拠点病院等の整備に関する議論の中で、集学的治療の均霑化と同時に、高度な放射線療法に関しては集約化と連携により、必要な患者への適切な提供の体制作りが指摘された。本研究では、放射線療法の医療提供体制の現状把握、評価した上で、核医学治療、強度変調放射線治療、粒子線治療、密封小線源治療、ホウ素中性子捕捉療法などの高度な放射線療法と立ち遅れがちな緩和的放射線治療に関する適切な提供体制の構築とそのために必要な人材育成、遠隔放射線治療計画技術や人工知能などの有効活用法などについて検討する。
これらの結果として、次回のがん診療連携拠点病院等の整備指針改定に向けた、適切な放射線治療施設と放射線療法に係る人材の配置に関する提言、および高度な放射線治療における患者数や受療状況、待機状況、人材などの現状評価を踏まえた適切な集約化と連携の具体的な施策を提示する
研究方法
令和3年以降、日本放射線腫瘍学会が中心となり、各治療法を推進する各学会や日本診療放射線技師会、日本医学物理士会、日本看護協会、関連企業団体、および患者会により研究グループを構成し、各照射技術別の患者数、受療状況、待機状況、対応している人材等の現状を把握し、集約化と均霑化を実現するための適切な連携体制や機器配置、人材育成、安全管理などについて調査をおこなった。
令和5年度はそれまでの研究成果で明らかとなった諸課題の解決のための対策やプロセスを検討し、一部の課題では新モデルの提示と実装試験のための準備を開始した。また、必要とされる新たなデータ創出のための追加調査を実施した。
結果と考察
結果:多岐にわたる研究項目があるため、個別の結果はそれぞれの分担研究者・研究協力者の報告書を参照されたいが、特に令和5年度に注目するべき進捗が得られたのは、強度変調放射線治療の提供体制に関するものであり、実施率の国際比較や国内での地域差を明らかにし、普及の支障となっている「常勤放射線治療医2名以上」という施設要件の見直しのための新たな人材配置とその育成によるタスクシェア、遠隔放射線治療計画技術の有効活用について検討が進められた。
また他に、密封小線源治療の適切な提供体制の具体的な提示、放射線治療医育成のための教育方法、がん放射線療法看護認定看護師の意義と望ましい配置、核医学治療の提供体制の調査、などで検討が進められた。
結果の一部(放射線治療施設の機器やスタッフの現状とコストなどについては、令和6年診療報酬改定に向けた医療技術評価提案書の基礎資料として活用された。

考察:日本では、諸外国に比べてがん患者に対する放射線治療の提供率が低いが、その主な理由として、医師と患者双方における放射線治療の知識が足りないこととともに、強度変調放射線治療のような高度な放射線治療が施設要件による規制のために普及が阻まれている提供側の問題点も挙げられる。これを改善するためには、短期的には放射線治療医不足を補うための放射線治療計画支援者によるタスクシェアシステムの新規構築と、施設間の指導や安全と質の担保のための遠隔放射線治療計画システムの普及が効果的と考える。また、核医学治療、粒子線治療、密封小線源治療などの高度な放射線治療や理解と応用の進んでいない緩和的放射線治療などのより適切な普及を実現するための体制作りは喫緊の課題と考える。
結論
高齢化の進む日本におけるがん診療を支えるために、低侵襲な放射線治療の適切な普及とその提供体制構築は非常に重要であるが、その実現のためには課題が多い。特に、強度変調放射線治療の普及を実現するための施設要件の見直し、適切な人材配置と育成、タスクシェアや施設間連携方法の検討が必要であり、これらについて作業を進めた。また、医学教育における放射線治療のウエイト増加、患者への放射線治療知識の拡大と選択機会の促進についても具体的な対策が必要である。今後、さまざまな放射線治療方法について、適切な提供体制を実現するべく具体的な新モデルの提案と実装実験を検討している。

公開日・更新日

公開日
2024-05-28
更新日
-

研究報告書(PDF)

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公開日・更新日

公開日
2024-05-28
更新日
2024-07-23

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収支報告書

文献番号
202307021Z