職域における科学的根拠に基づくがん検診の社会実装に関する研究

文献情報

文献番号
202307012A
報告書区分
総括
研究課題名
職域における科学的根拠に基づくがん検診の社会実装に関する研究
課題番号
23EA1003
研究年度
令和5(2023)年度
研究代表者(所属機関)
立道 昌幸(東海大学 医学部)
研究分担者(所属機関)
  • 高橋 宏和(国立研究開発法人国立がん研究センター がん対策研究所検診研究部検診実施管理研究室)
  • 佐川 元保(東北医科薬科大学 医学部)
  • 青木 大輔(慶應義塾大学)
  • 松田 一夫(公益財団法人福井県健康管理協会)
  • 笠原 善郎(福井県済生会病院 乳腺外科)
  • 中山 富雄(国立研究開発法人国立がん研究センター がん対策研究所 検診研究部)
  • 加藤 勝章(宮城県対がん協会がん検診センター)
  • 小川 俊夫(学校法人常翔学園 摂南大学 農学部食品栄養学科公衆衛生学教室)
  • 齊藤 英子(国際医療福祉大学三田病院予防医学センタ-)
  • 森定 徹(杏林大学 医学部)
  • 泉 陽子(東北大学 東北メディカル・メガバンク機構)
  • 島津 太一(国立研究開発法人 国立がん研究センター がん対策研究所 行動科学研究部)
  • 須賀 万智(東京慈恵会医科大学 医学部 環境保健医学講座)
  • 南谷 優成(東京大学 大学院医学系研究科総合放射線腫瘍学講座)
  • 森 晃爾(産業医科大学 産業生態科学研究所産業保健経営学研究室)
  • 五十嵐 侑(産業医科大学 災害産業保健センター)
  • 財津 將嘉(産業医科大学 高年齢労働者産業保健研究センター)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 がん対策推進総合研究
研究開始年度
令和5(2023)年度
研究終了予定年度
令和7(2025)年度
研究費
18,693,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
平成 30 年3月に「職域におけるがん検診に関するマニュアル」が公表され、保険者や事業主ががん検診を任意で実施する際に、職域におけるがん検診が効果的に行われるため、科学的根拠に基づくがん検診の普及啓発が進められている。しかし職域におけるがん検診の受診状況調査によれば、「職域におけるがん検診に関するマニュアル」の認知、活用状況は十分ではなく、職域におけるがん検診の精度管理、精密検査受診率の向上に関する取組については、対策を講じる必要がある。
 本研究では、保険者や事業主ががん検診を任意で実施する際に、保険者や事業主に対して、「職域におけるがん検診に関するマニュアル」を反映した、5つのがん検診の検診内容と精度管理の普及啓発を図った永続的に利活用できる動画資材を作成することを目標とする。また、作成した動画資材を用いて、保険者や事業主、産業医等を対象に、職域におけるがん検診に関する研修会を実施することを目的とする。
研究方法
「職域におけるがん検診に関するマニュアル」に関する普及版、マニュアルを正確に伝えるコンテンツ版、職域での指針に基づくがん検診の普及版、の3種類についてコンテンツを検討し動画を作成した。普及班は、現在の職域のがん検診に関する意識調査を行い、阻害因子・促進因子を検討した。研修班は、がん検診の主体となる健保組合、協会健保へのヒアリング調査を行い、来年度からの研修課題を明らかにした。
結果と考察
職域でのがん検診の企画者は非医療者であることから、「職域におけるがん検診に関するマニュアル」については、存在は認知されているものの、実際それを活用するには至っていなかった。これまでの厚労科研の成果物に誘導する動画作成を行い、理解の底上げが必要と思われたことから、まずは、3つの動画作成を完了した。また、指針そのものも詳細に実施に向けて検討するといくつかの課題があり、特に精度管理については研究レベルで解決できない、行政の対応が必要な課題も明かとなった。まず本年度作成した動画を来年度早々に健保連、協会健保等を通じて普及啓発を行うことであるが、いずれにしても、非医療職に通じるヘルスコミュニケーション理論を十分に活用した取り組みが必要であると考えられた。
結論
1)がん検診については、正確に認知されていない部分があり、職域と自治体での職域でのがん検診のCL(案)を作成し、それを元にした検診実施機関での精度管理アンケートをWebで実施したところ、この手法によって各施設の精度管理状況を知るための情報を含んだ回答が十分に得られることが判明した。
 本アンケート調査により、検診実施機関においては、住民検診では既に頻度が低くなっている課題が職域特有のものとして存在していることが判明した。その解決には今回のようなCLの普及によって検診実施機関のリテラシー向上と自施設の評価を行うと共に、委託元である職域に対するリテラシー向上の働きかけを同時進行させることが不可欠である。
2)がん検診は、市町村、健康保険組合、企業から提供されているが、受診するかの判断は本人に委ねられている。受診対象年齢であってもがん検診の案内を受け取っていないと答えた者が多数存在したことから、がん検診の案内を確実に届けることがまず解決すべき課題である。また、がん検診を受けない主な理由に挙げられた検診費用の経済的負担と受診の利便性(アクセシビリティ)についても、健康保険組合と企業とのコラボレーションの下で検討していく必要がある。
3)「職域におけるがん検診に関するマニュアル」を周知して、日本のがん検診システムを改善するためには、医療保険者や事業場の職域がん検診の企画において、意思決定に関わる担当者に対する実践的な研修が必要と考えられる。
「職域におけるがん検診に関するマニュアル」に基づいて職域がん検診を実施するにあたり、健康保険組合や健診機関など、組織ごとの課題が存在する。各組織の課題を理解し、それぞれの実情に基づいた研修プログラムを検討することが必要と考えられる。
4)現役労働者の年齢層では、職業によるがん予後の差が存在し、職域によるベースラインとしてのハイリスク集団はmanual職種であり得ることが示唆された。

公開日・更新日

公開日
2024-05-31
更新日
-

研究報告書(PDF)

公開日・更新日

公開日
2024-05-30
更新日
-

研究報告書(紙媒体)

収支報告書

文献番号
202307012Z