本邦におけるHTLV-1感染及び関連疾患の実態調査と総合対策

文献情報

文献番号
200931019A
報告書区分
総括
研究課題名
本邦におけるHTLV-1感染及び関連疾患の実態調査と総合対策
課題番号
H20-新興・一般-004
研究年度
平成21(2009)年度
研究代表者(所属機関)
山口 一成(国立感染症研究所 血液・安全性研究部)
研究分担者(所属機関)
  • 山田 恭暉(長崎大学大学院 医歯薬学総合研究科)
  • 岡山 昭彦(宮崎大学 内科学)
  • 佐竹 正博(日本赤十字社 西東京都赤十字血液センター)
  • 出雲 周二(鹿児島大学 医歯学総合研究科 難治ウイルス研)
  • 望月 學(東京医科歯科大学 眼科学)
  • 渡邉 俊樹(東京大学大学院 新領域創成科学研究科)
  • 徳留 信寛(独立行政法人国立健康・栄養研究所)
  • 大隈 和(国立感染症研究所 血液・安全性研究部)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 新型インフルエンザ等新興・再興感染症研究
研究開始年度
平成20(2008)年度
研究終了予定年度
平成22(2010)年度
研究費
10,640,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
ヒトT細胞白血病ウイルス1型(HTLV-1)による感染症が国民の健康に与えている影響を評価し、キャリア、患者に対する総合対策を提言し、それを行うことを目的として、本年度は、本邦の成人T細胞白血病(ATL)、HTLV-1関連脊髄症(HAM)を含むHTLV-1関連疾患の現在の実態把握を全国調査により実施した。また、HTLV-1関連疾患発症のリスク因子と考えられているウイルス量の測定が各施設において独自に行われているため、全国的なサーベイランスを行う手段としての標準的な測定法の確立に向けた検討を行った。
研究方法
ATL及びHAMについて、実態把握のためのアンケートを作成し、各地域のその疾患患者数が多いと考えられる代表的な病院へ協力依頼を行った(定点調査)。両疾患を調査するそれぞれの病院においてHTLV-1感染とは無関係でかつ国内における地域別の有病率がすでに知られている血液悪性腫瘍、神経疾患についてもその患者数を同時に調査し(内部コントロール)、それぞれに対する割合として表すことで調査の精度を高めた。また、ウイルス量の測定に関して各施設の定量Polymerase chain reaction (PCR)法について再評価を行った。
結果と考察
ATLの調査では、我が国における年間のATL発症数は1,146例と推測された。患者年齢の中央値は67歳と高齢化しており、高齢者を中心に今後も持続的にATLは発症し、患者はますます高齢化すると推測された。HAMの調査では、新規に発症し診断される患者は増加傾向にあり、HAM患者は九州以外の大都市でも多くみられることが分かった。また、各施設の定量PCR法については、技術的・理論的な問題はなく、各施設の測定値は良好な相関が認められた。しかし、施設間差が認められ、その原因として系統的要因が示唆された。
結論
今回のATL調査で、本邦における年間発症数が推測され、患者が高齢化していることが明らかとなった。我が国における108万人と推測される高齢者を中心とした巨大なHTLV-1キャリアのプールから、今後も持続的にATLは発症し、患者はますます高齢化すると推測された。少なくとも過去10年間ATL発症数は減少していないことが確認された。HAMについては、全国疫学調査の中間結果を報告した。また、ウイルス量の測定法であるreal-time PCR定量法の標準化は、現状のままでも、一定の補正係数を用いることで実現可能であるが、将来的には良質で安定した標準物質を供給することで可能と考えられた。

公開日・更新日

公開日
2010-07-14
更新日
-