文献情報
文献番号
202306019A
報告書区分
総括
研究課題名
化学テロ発生時に必要な薬剤の国家備蓄等の適正化の研究
研究課題名(英字)
-
課題番号
23CA2019
研究年度
令和5(2023)年度
研究代表者(所属機関)
若井 聡智(独立行政法人国立病院機構本部 DMAT事務局)
研究分担者(所属機関)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 行政政策研究分野 厚生労働科学特別研究
研究開始年度
令和5(2023)年度
研究終了予定年度
令和5(2023)年度
研究費
4,616,000円
研究者交替、所属機関変更
-
研究報告書(概要版)
研究目的
化学テロ発生時に使用する薬剤は必要性が高い一方で多くの場合は未使用のまま廃棄されることとなる。使用期限が切れると回収・廃棄が必要となるが、一定程度備蓄量が増加した現在においては回収・廃棄のコストも増大し、備蓄量を増やすと回収・廃棄のコストも増えるため購入予算が十分に確保できない懸念がある。
本研究においては、必要な薬剤のうち、平時にも医療機関で一定程度使用される薬剤を検討する。つまり、日常の臨床現場で使用する薬剤は、各医療機関で使用した分を買い足して、常に一定程度備蓄している状態にするという、いわゆるランニングストックとできるものを検討し、削減・圧縮できた予算は、平時には稀にしか使用されないが、化学テロ等対策としては不可欠な薬剤の購入等に重点化することが可能かを検討する。また、神経解毒剤自動注射器の耐用年数等について研究し、使用期間の延長を含め、備蓄の在り方について検討を進めることで、運用の適正化につなげる。
本研究においては、必要な薬剤のうち、平時にも医療機関で一定程度使用される薬剤を検討する。つまり、日常の臨床現場で使用する薬剤は、各医療機関で使用した分を買い足して、常に一定程度備蓄している状態にするという、いわゆるランニングストックとできるものを検討し、削減・圧縮できた予算は、平時には稀にしか使用されないが、化学テロ等対策としては不可欠な薬剤の購入等に重点化することが可能かを検討する。また、神経解毒剤自動注射器の耐用年数等について研究し、使用期間の延長を含め、備蓄の在り方について検討を進めることで、運用の適正化につなげる。
研究方法
<ランニングストック化が可能な化学テロ発生時に必要な薬剤に関する研究>
全国765災害拠点病院と同病院への医薬品供給を担う約300の医薬品卸業者に厚生労働省所管部局の協力も得ながら、アンケート調査を実施する。その結果として、医療機関における化学テロ発生時に必要な薬剤の備蓄・使用状況を把握する。
<神経解毒剤自動注射器の適正な運用方法を明らかにする研究>
海外で準備されている解毒薬や拮抗薬に関して調査し、その準備状況、開発された製品、想定されている課題を検討する。使用期限の面では、加速試験を用いた。今回、薬物が化学反応によってのみ変化し、その速度の温度依存性がアレニウス式*に従う場合を想定してインタビューフォームから加速試験のデータを抽出し、各種解毒剤の安定性を推測した。
全国765災害拠点病院と同病院への医薬品供給を担う約300の医薬品卸業者に厚生労働省所管部局の協力も得ながら、アンケート調査を実施する。その結果として、医療機関における化学テロ発生時に必要な薬剤の備蓄・使用状況を把握する。
<神経解毒剤自動注射器の適正な運用方法を明らかにする研究>
海外で準備されている解毒薬や拮抗薬に関して調査し、その準備状況、開発された製品、想定されている課題を検討する。使用期限の面では、加速試験を用いた。今回、薬物が化学反応によってのみ変化し、その速度の温度依存性がアレニウス式*に従う場合を想定してインタビューフォームから加速試験のデータを抽出し、各種解毒剤の安定性を推測した。
結果と考察
<ランニングストック化が可能な化学テロ発生時に必要な薬剤に関する研究>
研究結果を踏まえると、医療機関の視点から考えたランニングストックが可能な薬剤としては2種類、医薬品卸の視点から考えたランニングストックが可能な薬剤としては5種類となった。即時性という意味では医療機関にストックされているもののみをランニングストック化することが望ましいともいえるが、一方で、日本の流通を考えれば、薬剤卸業者の視点で対応できる薬剤をランニングストックとすることだけでも即応性は維持できるとも考えられる。
ただし、あくまで本データは現時点でのサンプル抽出による評価であることから、何らかの形で一定期間ごとに継続的な調査を実施しながら評価を行い、適正なストック状況を確保することが望ましいという結論となった。
さらに、オピオイドのように、現在本邦では見られないが、海外ではテロに使用される可能性が高いとされている剤や、海外でも使用される蓋然性が高まっていく剤に対する備蓄薬に関しても、今後調査を実施していく必要があると考えられた。
そのため、当研究班としては、現時点で国家備蓄薬としてランニングストック化を提案するものとしては、
1,アトロピン製剤
2,パム静注
3,ジアゼパム製剤
4,バル筋注
5,メタルカプターゼカプセル
を提示することとした。
<神経解毒剤自動注射器の適正な運用方法を明らかにする研究>
化学テロ対応薬剤の現状を神経剤とオピオイドに関して検討した。神経剤に対しては予防的な薬剤、3種類のオキシム(PAM、オビドキシム、HI-6)が人に使用可能とされているが、PAM以外は一般市民に使用できるだけの知見が揃っていない。一方、オピオイドは米国のオピオイドクライシスに対応するため現在では一般市民がナロキソンを投与できる状況になっている。
使用期限の面では、Cテロに用いられる化学物質に対する各種解毒剤の加速試験の結果より3年以内は力価が保たれていることが推定された。
研究結果を踏まえると、医療機関の視点から考えたランニングストックが可能な薬剤としては2種類、医薬品卸の視点から考えたランニングストックが可能な薬剤としては5種類となった。即時性という意味では医療機関にストックされているもののみをランニングストック化することが望ましいともいえるが、一方で、日本の流通を考えれば、薬剤卸業者の視点で対応できる薬剤をランニングストックとすることだけでも即応性は維持できるとも考えられる。
ただし、あくまで本データは現時点でのサンプル抽出による評価であることから、何らかの形で一定期間ごとに継続的な調査を実施しながら評価を行い、適正なストック状況を確保することが望ましいという結論となった。
さらに、オピオイドのように、現在本邦では見られないが、海外ではテロに使用される可能性が高いとされている剤や、海外でも使用される蓋然性が高まっていく剤に対する備蓄薬に関しても、今後調査を実施していく必要があると考えられた。
そのため、当研究班としては、現時点で国家備蓄薬としてランニングストック化を提案するものとしては、
1,アトロピン製剤
2,パム静注
3,ジアゼパム製剤
4,バル筋注
5,メタルカプターゼカプセル
を提示することとした。
<神経解毒剤自動注射器の適正な運用方法を明らかにする研究>
化学テロ対応薬剤の現状を神経剤とオピオイドに関して検討した。神経剤に対しては予防的な薬剤、3種類のオキシム(PAM、オビドキシム、HI-6)が人に使用可能とされているが、PAM以外は一般市民に使用できるだけの知見が揃っていない。一方、オピオイドは米国のオピオイドクライシスに対応するため現在では一般市民がナロキソンを投与できる状況になっている。
使用期限の面では、Cテロに用いられる化学物質に対する各種解毒剤の加速試験の結果より3年以内は力価が保たれていることが推定された。
結論
<ランニングストック化が可能な化学テロ発生時に必要な薬剤に関する研究>
5種類の薬剤についてランニングストック化が可能であるという評価を行った。一方で、本調査と同様の調査を継続的に行い、評価を行っていくことが国家備蓄薬のランニングストック化を安定させる意味でも重要であると考える。
<神経解毒剤自動注射器の適正な運用方法を明らかにする研究>
化学テロ対応薬剤の現状を神経剤とオピオイドに関しては、オピオイドが化学テロの薬剤として存在する以上、日本においてもナロキソンの経鼻薬の承認、導入が望まれると考える。薬剤の使用期限の面では、ローリングストックの期間を3年間に延長することで非常時に用いられる解毒剤の備蓄時の費用を抑制できると考えられる。
5種類の薬剤についてランニングストック化が可能であるという評価を行った。一方で、本調査と同様の調査を継続的に行い、評価を行っていくことが国家備蓄薬のランニングストック化を安定させる意味でも重要であると考える。
<神経解毒剤自動注射器の適正な運用方法を明らかにする研究>
化学テロ対応薬剤の現状を神経剤とオピオイドに関しては、オピオイドが化学テロの薬剤として存在する以上、日本においてもナロキソンの経鼻薬の承認、導入が望まれると考える。薬剤の使用期限の面では、ローリングストックの期間を3年間に延長することで非常時に用いられる解毒剤の備蓄時の費用を抑制できると考えられる。
公開日・更新日
公開日
2025-04-28
更新日
2025-07-22