文献情報
文献番号
202306006A
報告書区分
総括
研究課題名
各国の電子処方箋の制度及び医療DXの実態の把握のための研究
課題番号
23CA2006
研究年度
令和5(2023)年度
研究代表者(所属機関)
池田 和之(奈良県立医科大学 附属病院薬剤部)
研究分担者(所属機関)
- 青柳 吉博(国立がん研究センター東病院 医療情報部)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 行政政策研究分野 厚生労働科学特別研究
研究開始年度
令和5(2023)年度
研究終了予定年度
令和5(2023)年度
研究費
7,680,000円
研究者交替、所属機関変更
-
研究報告書(概要版)
研究目的
厚生労働省は、これまで「新たな日常にも対応したデータヘルスの集中改革プラン」の策定など医療分野のDXを強力に推進しており、電子処方箋を柱の一つと位置づけている。電子処方箋は、重複投薬や併用禁忌のチェックが実施できることから、電子処方箋システムが普及することで、国民に対してより質の高い医療サービスを提供することを目指している。また、新しい資本主義のグランドデザインなどで「2025年3月を目指してオンライン資格確認を導入した概ね全ての医療機関および薬局での電子処方箋システムの導入を支援する」と掲げている。しかし運用が開始された直後では電子処方箋の普及率は高くなく、今後の普及拡大策を検討することが喫緊の課題である。
本研究の計画時点で世界的動向が、一部の国では明らかとなっている。しかし医療制度や医療情報基盤の違いにより、どのように電子処方箋を社会実装したかやその経緯、運用、取り扱う情報などについての詳細な内容はまとめられていない。今後、我が国での普及拡大策を検討するためには、海外での取り組み及び状況を広く収集し、実態を把握することが必要である。
本研究の計画時点で世界的動向が、一部の国では明らかとなっている。しかし医療制度や医療情報基盤の違いにより、どのように電子処方箋を社会実装したかやその経緯、運用、取り扱う情報などについての詳細な内容はまとめられていない。今後、我が国での普及拡大策を検討するためには、海外での取り組み及び状況を広く収集し、実態を把握することが必要である。
研究方法
研究課題1:文献およびヒアリングによる各国および地域の電子処方箋に関する制度と実施状況の調査
電子処方箋の制度や導入効果、普及のための方策などに関して、インターネットなどを用い文献収集および関係者からのヒアリングを行い整理した。
研究課題2:現地視察による状況の調査
電子処方箋システムには個人情報が多々含まれているため、先進的な取り組みを行っている欧州(スウェーデン・エストニア・デンマーク・オランダ)およびアジア(台湾)では現地視察を行い、電子処方箋に関する状況を直接確認し詳細に調査した。
研究課題3:文献調査およびヒアリングならびに現地視察を踏まえた本邦における電子処方箋に関する改善の提言および医療DXの普及拡大に関する方策の検討
今回調査した研究課題1及び2の事例を参考に、本邦での電子処方箋および医療DXに関して検討すべき事案を提言として取りまとめた。
電子処方箋の制度や導入効果、普及のための方策などに関して、インターネットなどを用い文献収集および関係者からのヒアリングを行い整理した。
研究課題2:現地視察による状況の調査
電子処方箋システムには個人情報が多々含まれているため、先進的な取り組みを行っている欧州(スウェーデン・エストニア・デンマーク・オランダ)およびアジア(台湾)では現地視察を行い、電子処方箋に関する状況を直接確認し詳細に調査した。
研究課題3:文献調査およびヒアリングならびに現地視察を踏まえた本邦における電子処方箋に関する改善の提言および医療DXの普及拡大に関する方策の検討
今回調査した研究課題1及び2の事例を参考に、本邦での電子処方箋および医療DXに関して検討すべき事案を提言として取りまとめた。
結果と考察
研究課題1:北欧諸国では、2000年代から実装に取り組み多くの国で90%以上の普及率となっている。アメリカでも90%以上の普及、カナダでも全土で利用されている。一方韓国および台湾では、構想はあるが社会実装には至っていない。いずれも、電子処方箋導入によりヒューマンエラーの減少や業務の効率化、相互作用や重複投与の回避などが示され、患者安全の向上と医療費の節減につながるとされている。一方、普及促進や適切な利用のため、患者および医療従事者への啓発、システムの機能改善、円滑に情報交換するための標準規格の採用などが必要とされていた。
研究課題2:北欧諸国では、国民に割り当てられた医療用IDに情報を集約している。電子処方箋や調剤の結果もIDに集約され、国民自身の医薬品の購入状況を把握できる。また、処方入力も、病名や処方理由の入力などが必要な一方で、用法は1日の服用回数のみの指定、処方箋は1薬品ごとの登録であった。台湾では、電子処方箋は運用されていないものの健康保険番号に基づき医療情報を集約し、処方や検査、手術などの記録が他の医療機関でも閲覧できていた。
研究課題3:本調査を踏まえ今後本邦でも医療DXを推進するために検討すべき事項等を以下に示す。
1,電子処方箋管理サービス
身長・体重・腎機能や処方理由の表示、1薬品1レコードでの記載、公的機関からのマスタ提供、用法マスタの整理、単位・コメントの検討、メリットの比較、相互接続の第3者認証、チェック機能の充実、関連費用の補助、IDへの医療資格紐づけ、電子処方箋の情報を優先した診療報酬の対応など
2,国民・医療従事者への普及推進
さらなる活用の喚起や利用方法の周知、医療(健康)サイト、患者向けサイトや医療従事者向けサイトの構築など
3,データ活用基盤
データ活用に関する法制度のさらなる検討や活用を見据えた処方の在り方、一次利用での活用のための標準化の推進を行う必要がある。
4,医療DXの推進
医療専用ID、医療情報専門機関、診療報酬制度の見直し、処方の在り方・調剤方式の見直し、医薬品トレーサビリティ(シリアル管理)の検討、API連携・薬局のFHIR仕様、オンライン環境下の薬剤師の役割、患者同意の在り方など
研究課題2:北欧諸国では、国民に割り当てられた医療用IDに情報を集約している。電子処方箋や調剤の結果もIDに集約され、国民自身の医薬品の購入状況を把握できる。また、処方入力も、病名や処方理由の入力などが必要な一方で、用法は1日の服用回数のみの指定、処方箋は1薬品ごとの登録であった。台湾では、電子処方箋は運用されていないものの健康保険番号に基づき医療情報を集約し、処方や検査、手術などの記録が他の医療機関でも閲覧できていた。
研究課題3:本調査を踏まえ今後本邦でも医療DXを推進するために検討すべき事項等を以下に示す。
1,電子処方箋管理サービス
身長・体重・腎機能や処方理由の表示、1薬品1レコードでの記載、公的機関からのマスタ提供、用法マスタの整理、単位・コメントの検討、メリットの比較、相互接続の第3者認証、チェック機能の充実、関連費用の補助、IDへの医療資格紐づけ、電子処方箋の情報を優先した診療報酬の対応など
2,国民・医療従事者への普及推進
さらなる活用の喚起や利用方法の周知、医療(健康)サイト、患者向けサイトや医療従事者向けサイトの構築など
3,データ活用基盤
データ活用に関する法制度のさらなる検討や活用を見据えた処方の在り方、一次利用での活用のための標準化の推進を行う必要がある。
4,医療DXの推進
医療専用ID、医療情報専門機関、診療報酬制度の見直し、処方の在り方・調剤方式の見直し、医薬品トレーサビリティ(シリアル管理)の検討、API連携・薬局のFHIR仕様、オンライン環境下の薬剤師の役割、患者同意の在り方など
結論
これからの社会構造の変化克服のためには医療の情報化は欠かせない。これらは、日本だけでなく先進国における共通の課題である。その中でより急速に超高齢化社会を迎える日本は、先進的な役割を果たすことができると考えられ、本邦での取り組みが最先端の事例として世界で評価されることを期待する。
さらなる医療DXの推進には医療の情報化やDXに適した制度や運用の構築が必要である。今後も既成概念にとらわれず、積極的に変化することが重要と考える。
さらなる医療DXの推進には医療の情報化やDXに適した制度や運用の構築が必要である。今後も既成概念にとらわれず、積極的に変化することが重要と考える。
公開日・更新日
公開日
2024-05-23
更新日
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