ICTを利用した医学教育コンテンツの開発と活用に向けた研究

文献情報

文献番号
202303002A
報告書区分
総括
研究課題名
ICTを利用した医学教育コンテンツの開発と活用に向けた研究
研究課題名(英字)
-
課題番号
21AC1003
研究年度
令和5(2023)年度
研究代表者(所属機関)
河北 博文(公益財団法人 日本医療機能評価機構 )
研究分担者(所属機関)
  • 伴 信太郎(名古屋大学医学部附属病院総合診療部)
  • 岡崎 仁昭(自治医科大学 医学教育センター)
  • 松山 泰(自治医科大学 医学部 医学教育センター)
  • 淺田 義和(自治医科大学 医学教育センター)
  • 川平 洋(自治医科大学 メディカルシミュレーションセンター)
  • 久保 沙織(東北大学 高度教養教育・学生支援機構)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 行政政策研究分野 政策科学総合研究(臨床研究等ICT基盤構築・人工知能実装研究)
研究開始年度
令和3(2021)年度
研究終了予定年度
令和5(2023)年度
研究費
10,660,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
 我が国の医学教育を充実させて医療の質の向上を図るためには、標準化された質の高い医学教育コンテンツを大学の垣根を超えてAll Japanで作成して、広く医学生等が利用できる体制を整備することが重要である。本研究は、ICTによる視聴覚素材を活用してコンピュータ上でシナリオ症例の診療を体験し、臨床推論、基本的臨床手技、EBMの応用などを自己学習できる、標準化された質の高い教材を作成し、医学生等が広く利用できる体制を整備することを目的とする。
 また、医師国家試験改善検討部会において医師国家試験のCBT化が示されているが、CBT医師国家試験を実現するためには、音声・動画などを用いたマルチメディア形式の試験問題を作成して、インターネットを介して、トライアル試験を実施して、試験システムの構築、実施のためのロジスティクスの検討などを行うこと、およびCBT問題を多数作問して試験問題ライブラリを構築することが重要である。本研究は、CBT問題を作成し、実際にトライアル試験を行い、課題およびその対応策などについて研究を行い、将来のCBT医師国家試験の実施に向けて提言することを目的とする。
研究方法
 医学教育コンテンツについては、医学教育モデル・コア・カリキュラムに記されている症候・病態を参照し、3年間で約50症候の教材を作成することを目標に、全国22医療教育施設の25名の研究分担者、研究協力者らによって、月例のWeb会議や対面会議などを通じて教育コンテンツの検証と改善を行った。また、医学教育コンテンツを作成する人材を育成するために、学会等においてワークショップを実施した。
 また、医師国家試験CBT化については、音声・動画などのマルチメディアを用いて実臨床に近い試験問題200問を作成し、オープンソースであるTAOを使用してインターネットを介したトライアル試験を実施した。トライル試験は、全国の大学医学部を対象に、2023年9月から2024年2月までの6か月間で行った。参加大学は自施設のPC環境からTAOにアクセスし、試験を行った。さらに、試験実施後、受験生に対するアンケート調査や、試験結果をもとにIRT分析を行い、医師国家試験CBT化に向けて運用や試験問題等の課題や改善策について検討した。
結果と考察
 医学教育コンテンツの作成については、本研究で作成したコンテンツ作成マニュアルと教材作成用のひな型を活用し、呼吸困難や頭痛等44症例の教材(Power Point版)を作成した。このうち15症例の教材はLMSであるMoodleを使用し、公開した。また、月例会議等での共同作業や動画などの素材の共有と開発、ワークショップによる人材育成を行い、医学教育コンテンツを大学の垣根を越えてAll Japanで作成する体制を構築した。 医師国家試験CBT化については、医師国家試験出題基準に従って、音声・動画などのマルチメディアを取り入れた実臨床に近い問題を200問作成し、オープンソースのシステムであるTAOを利用し、インターネットを介して全国の大学医学部46大学、1,357名の医学生に参加してもらい、トライアル試験を実施した。試験においてはシステムトラブルもなく、動画問題等もスムーズに動作されて円滑に進めることができた。また、試験実施後のアンケート調査や、試験結果をもとに出題した問題のIRT分析を行い、トライアル試験の運用における課題や試験問題等の評価から、CBT化への改善策の整理を行った。今後は、医師国家試験CBT化の実現に向けて提言することが重要と考える。
結論
 医学教育コンテンツの作成に関しては、ICTによる視聴覚素材を活用してコンピュータ上でシナリオ症例の診療を疑似体験し、臨床推論、基本的臨床手技、EBMの応用に関する設問を解答し、さらに診療録を記載しながら自己学習できる教材、44症例をPowerPoint版として作成し、これらの教材から15症例の教材をMoodle版として公開した。標準化された質の高い医学教育コンテンツをAll Japanで作成するための基盤は確立しつつある。
 医師国家試験CBT化に関しては、CBTトライアル試験問題では、音声・動画などマルチメディアを用いてより実臨床に近い問題を作成することができ、「知識」だけでなく、「技能」を評価できることが可能になった、2023年度では46大学で1,357名の受験者があり、大規模に実施することができた。TAOの操作や動画・音声の質の課題などがあったが、概ね円滑に実施した。トライアル試験を通じて、明らかとなった課題とその改善策を整理して、CBT医師国家試験の実施に向けて提言することが重要である。

公開日・更新日

公開日
2024-07-17
更新日
-

研究報告書(PDF)

研究成果の刊行に関する一覧表
倫理審査等報告書の写し

公開日・更新日

公開日
2024-07-17
更新日
2024-09-19

研究報告書(紙媒体)

文献情報

文献番号
202303002B
報告書区分
総合
研究課題名
ICTを利用した医学教育コンテンツの開発と活用に向けた研究
研究課題名(英字)
-
課題番号
21AC1003
研究年度
令和5(2023)年度
研究代表者(所属機関)
河北 博文(公益財団法人 日本医療機能評価機構 )
研究分担者(所属機関)
  • 伴 信太郎(名古屋大学医学部附属病院総合診療部)
  • 岡崎 仁昭(自治医科大学 医学教育センター)
  • 松山 泰(自治医科大学 医学部 医学教育センター)
  • 川平 洋(自治医科大学 メディカルシミュレーションセンター)
  • 淺田 義和(自治医科大学 医学教育センター)
  • 久保 沙織(東北大学 高度教養教育・学生支援機構)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 行政政策研究分野 政策科学総合研究(臨床研究等ICT基盤構築・人工知能実装研究)
研究開始年度
令和3(2021)年度
研究終了予定年度
令和5(2023)年度
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
 我が国の医学教育を充実させて医療の質の向上を図るためには、標準化された質の高い医学教育コンテンツを大学の垣根を超えてAll Japanで作成して、広く医学生等が利用できる体制を整備することが重要である。本研究は、ICTによる視聴覚素材を活用してコンピュータ上でシナリオ症例の診療を体験し、臨床推論、基本的臨床手技、EBMの応用などを自己学習できる、標準化された質の高い教材を作成し、医学生等が広く利用できる体制を整備することを目的とする。
 また、医師国家試験改善検討部会において医師国家試験のCBT化が示されているが、CBT医師国家試験を実現するためには、音声・動画などを用いたマルチメディア形式の試験問題を作成して、インターネットを介して、トライアル試験を実施して、試験システムの構築、実施のためのロジスティクスの検討などを行うこと、およびCBT問題を多数作問して試験問題ライブラリを構築することが重要である。本研究は、CBT問題を作成し、実際にトライアル試験を行い、課題およびその対応策などについて研究し、将来のCBT医師国家試験の実施に向けて提言することを目的とする。
研究方法
 医学教育コンテンツについては、医学教育モデル・コア・カリキュラムに記されている症候・病態を参照し、音声・動画等のマルチメディアを取り入れた標準化された質の高い医学教育コンテンツを3年間で約50症候作成することを目標に、大学の垣根を超えてAll Japanのメンバーによって、月例のWeb会議や対面会議などを通じて教育コンテンツの検証と改善を行った。また、医学教育コンテンツを作成する人材を育成するために、学会等においてワークショップを実施した。
 また、医師国家試験CBT化については、音声・動画等のマルチメディアを取り入れてより実臨床に近い試験問題200問を各年度作成し、オープンソースであるTAOを使用してインターネットを介したトライアル試験を実施した。トライル試験は、全国の大学医学部を対象に、各年度3~6か月間で行った。参加大学は自施設のPC環境からTAOにアクセスし試験を行った。さらに、試験実施後、受験生に対するアンケート調査や、試験結果をもとにIRT分析を行い、医師国家試験CBT化に向けて運用や試験問題等の課題や改善策について検討した。
結果と考察
 医学教育コンテンツの作成については、本研究で作成したコンテンツ作成マニュアルと教材作成用のひな型を活用し、呼吸困難や頭痛等44症例の教材(Power Point版)を作成した。このうち15症例の教材はLMSであるMoodleを使用し、公開した。また、月例会議等での共同作業や、動画などの素材の共有と開発、ワークショップによる人材育成を行い、医学教育コンテンツを大学の垣根を越えてAll Japanで作成する体制を構築した。 医師国家試験CBT化については、医師国家試験出題基準に従って、音声・動画などを取り入れて実臨床に近い問題を200問各年度、作成し、オープンソースのシステムであるTAOを利用し、インターネットを介して全国の大学医学部を対象にトライアル試験を実施した。2021年度は10大学(321名)、2022年度は16大学(450名)、2023年度は46大学(1,357名)で実施し、年々参加大学が増えた。試験はシステムトラブルもなく、動画問題等もスムーズに動作されて円滑に進めることができた。また、試験実施後のアンケート調査の実施や試験結果をもとに出題した問題のIRT分析を行い、トライアル試験の運用における課題や試験問題等の評価から、CBT化への改善策の整理を行った。今後は、医師国家試験CBT化の実現に向けて提言することが重要と考える。
結論
 医学教育コンテンツの作成に関しては、ICTによる視聴覚素材を活用してコンピュータ上でシナリオ症例の診療を疑似体験し、臨床推論、基本的臨床手技、EBMの応用に関する設問を解答し、さらに診療録を記載しながら自己学習できる教材、44症例をPowerPoint版として作成し、これらの教材から15症例の教材をMoodle版として公開した。標準化された質の高い医学教育コンテンツをAll Japanで作成するための基盤は確立しつつある。
医師国家試験CBT化に関しては、CBTトライアル試験問題では、音声・動画などマルチメディアを用いた出題を通じて、より実臨床に近い問題を作成することができ、「知識」だけでなく、「技能」を評価できることが可能になった、2023年度では46大学で1,357名の受験者があり、大規模に実施することができた。TAOの操作や動画・音声の質の課題などがあったが、概ね円滑に実施した。トライアル試験を通じて、明らかとなった課題とその改善策を整理して、CBT医師国家試験の実施に向けて提言することが重要である。

公開日・更新日

公開日
2024-07-17
更新日
-

研究報告書(PDF)

公開日・更新日

公開日
2024-07-17
更新日
2024-09-19

研究報告書(紙媒体)

行政効果報告

文献番号
202303002C

成果

専門的・学術的観点からの成果
医学教育モデル・コア・カリキュラムに基づき44症例の教材を作成した。視聴覚素材を用いたシナリオ症例の診療を疑似体験し、臨床推論、基本的診療手技、EBMの応用等の設問に解答し、診療録を記載しながら学習できる。広く医学生が利用することで我が国の医学教育の充実につながる。また、CBTトライアル試験で、心音や呼吸音等の音声や医療面接や検査場面の動画など、実臨床に近い問題を提示し、知識だけでなく技能も評価可能となった。本研究は学会のシンポジウムにも取り上げられ、我が国の医学教育において関心が寄せられた。
臨床的観点からの成果
特記事項なし
ガイドライン等の開発
特記事項なし
その他行政的観点からの成果
広く医学生が利用できるように、ICTを活用した標準化された質の高い医学教育コンテンツをAll Japanで作成する基盤を図った。また、2020年の「医師国家試験改善検討部会」で、コンピュータ制の導入が示されて、動画や音声、画像等を取り入れた問題を作成し、インターネットを介したCBT試験システムを利用したトライアル試験を46大学で概ね円滑に実施し、医師国家試験のCBT化に向けて成果を示した。動画や音声を取入れた実臨床に近い問題により、現行の国家試験では評価が困難である「技能」の評価が可能となった。
その他のインパクト
2024年第56回日本医学教育学会大会において、オンデマンドシンポジウムを実施した。1EdTech Japan Societyが実施する、2024年度 「第9回 1EdTech Japan賞」に応募し、『CBTシステム「TAO」による医師国家試験のCBTトライアル』で最優秀賞、『医学教育モデル・コア・カリキュラムに基づく自己学習教材』で奨励賞を受賞した。
2025年6月に「動画・音声付臨床問題教材作成ガイド~次世代医師国家試験を見据えを発行した。

発表件数

原著論文(和文)
0件
原著論文(英文等)
0件
その他論文(和文)
0件
その他論文(英文等)
0件
学会発表(国内学会)
5件
日本医学教育学会大会、1EdTech Japan賞
学会発表(国際学会等)
1件
1EdTech Learning Impact Aword
その他成果(特許の出願)
0件
その他成果(特許の取得)
0件
その他成果(施策への反映)
0件
その他成果(普及・啓発活動)
0件

特許

主な原著論文20編(論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限る)

公開日・更新日

公開日
2024-07-17
更新日
2025-07-22

収支報告書

文献番号
202303002Z
報告年月日

収入

(1)補助金交付額
13,060,000円
(2)補助金確定額
13,060,000円
差引額 [(1)-(2)]
0円

支出

研究費 (内訳) 直接研究費 物品費 8,811,000円
人件費・謝金 1,616,602円
旅費 725,782円
その他 731,164円
間接経費 1,175,452円
合計 13,060,000円

備考

備考
-

公開日・更新日

公開日
2025-04-30
更新日
-