ICD-11の適用を通じて我が国の死因・疾病統計の向上を目指すための研究

文献情報

文献番号
202302004A
報告書区分
総括
研究課題名
ICD-11の適用を通じて我が国の死因・疾病統計の向上を目指すための研究
課題番号
23AB1002
研究年度
令和5(2023)年度
研究代表者(所属機関)
林 玲子(国立社会保障・人口問題研究所)
研究分担者(所属機関)
  • 別府 志海(国立社会保障・人口問題研究所 情報調査分析部)
  • 石井 太(慶應義塾大学 経済学部)
  • 篠原 恵美子(山田 恵美子)(東京大学大学院 医学系研究科)
  • 大津 唯(埼玉大学大学院 人文社会科学研究科)
  • 丸井 英二(人間総合科学大学大学院 人間総合科学研究科)
  • 木下 博之(香川大学 医学部)
  • 橋本 英樹(東京大学大学院 医学系研究科公共健康医学専攻保健社会行動学分野)
  • 野口 晴子(早稲田大学 政治経済学術院)
  • 奥山 絢子(聖路加国際大学 看護学研究科)
  • 成田 瑞(国立精神・神経医療研究センター 精神保健研究所行動医学研究部)
  • 大夛賀 政昭(国立保健医療科学院 医療・福祉サービス研究部)
  • 高橋 秀人(帝京平成大学 薬学部)
  • 小川 俊夫(摂南大学 農学部食品栄養学科公衆衛生学教室)
  • 今井 健(東京大学大学院 医学系研究科疾患生命工学センター)
  • 今村 知明(奈良県立医科大学 医学部公衆衛生学講座)
  • 東 尚弘(東京大学大学院 医学系研究科公衆衛生学分野)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 行政政策研究分野 政策科学総合研究(統計情報総合研究)
研究開始年度
令和5(2023)年度
研究終了予定年度
令和7(2025)年度
研究費
14,872,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
長期的、国際的に整合的で、ICD-11の詳細性、多次元性、拡張性を活用し、日本の死亡・疾病の状況を効率的に把握できる新たな死因・疾病分類表を提案することで、我が国の死因・疾病統計の向上を図ることを目的とした。
研究方法
以下の5項目について研究を進め、国内外における会議等を通じた情報収集・発信を行った。
1. 死因・疾病分類表: WHOによるICD-10、ICD-11の製表用分類、日本のICD-10準拠の死因簡単分類、疾病分類表(小分類)を比較し、ICD-11に対応した新しい分類案の作成および新たなコードに対応した死亡者数と推計患者数を推計した。また、死因・疾病分類表の長期推移比較を可能とするために、ICD-9からICD-10への不連続性を解消する死因統計再構築、ICD-10 の2003年版から2013年版への更新による2016年から2017年の死因別死亡の変化について分析した。さらに国際的に整備されているHuman Cause-of-Death Database(HCD)による分類表と整合的な分類表の検討を行った。
2. 標準病名マスター対応表整備: 標準病名マスターとICD-11用語和訳作業結果を統合したICD-11対応の統合標準病名集の開発に向けた基礎資料を継続作成した。
3. 死因統計の改善: 死因統計における老衰死亡について分析し、老衰の死亡診断書の記載に関わる質的調査のインタビューガイドを検討し、調査準備を行うとともに、老衰死の性比の推移を分析した。循環器系疾患、特に心不全のICD-10からICD-11の移行による変化を把握し現状を分析した。外因死について、溺水についての詳細分析を行った。死亡オンライン個票を用い、テキストデータをコード化したうえで、COVID-19を含めた、複合死因分析を行った。
4. 疾病統計の改善: NDBデータの主疾病予測モデルの理論的構築を行った。がんについて、ICD-11適用によるがん登録への影響を文献により把握した。精神・神経系疾患について、既存統計の整理を行い、ICD-11移行による変化を確認すると共に、抑うつ症および不安または恐怖関連症群について詳細検討した。
5. ICD-11V章の活用: V章のコードの構成や特徴、国内外における活用に向けた動向について整理を行い、公的データベースにおけるICD-11 の疾病情報とV章にかかわる生活機能情報の該当有無の確認を行い、またICD-11 V章に収載される「生活機能」項目と、WHODAS2.0、Washingtonのショートセット6項目の対応を確認し、内閣府2020年調査、生活のしづらさなどに関する調査の結果に適用した。
結果と考察
 既存の分類と整合的でICD-11に対応した新しい死因簡単分類は、ICD-11の章構造の変化、章を超えた疾病の位置づけの変化、章内の構造変化、死因製表用リストの新設項目、日本において死亡数の多い項目の挿入、現在別掲の中皮腫、熱中症の追加、および1000人を下回る死亡数の項目の削除を施し作成し、現行で136の項目を130項目に抑えたものとなった。
 1995年のICD-10導入における死因別死亡数の統計の不連続が、死因別かつ性・年齢階級別でみても概ね解消された。2017年のICD の変更により旧J18「肺炎,病原体不詳」は、新分類で神経系の疾患、精神及び行動の障害、呼吸器系の疾患になった。
 ICD-11のWHO死因製表用リストには、日本の死因簡単分類同様、老衰が「老化に関連した内部機能の低下」として一つの分類となり、今後国際的にも老衰を適切に位置づける必要性が生じている。
 ICD-11では心不全のコードが臨床のニーズに対応したものの、現状のDPC 分類はその区別がなく、適切な治療を行うための更新が必要と考えられる。
 がんについて、ICD-11では、中枢神経系、造血器・リンパ組織の新生物は別の枠組みに位置付けられたことから、がん罹患集計の継続性をどのように担保する検討する必要がある。
 ICD-11 の疾病情報とV章にかかわる生活機能情報を連結できる可能性があり、V章へのリコード法の開発を進める必要が示唆された。

 
 
 

結論
 死因分類については、ICD-11に対応した死因簡単分類のさらなる精査に付け加え、順位分類、年次推移分類の検討が必要である。
 疾病分類については、その用途および国際的に用いられている疾病分類を考慮し、患者調査データとNDBデータによる疾病体系を比較したうえで、必要とされる疾病分類をまずは設定する必要がある。また、主傷病の適切な設定と並行して、複合疾病の分析が必要である。
 老衰、心不全を含めた心疾患、がん、精神・神経系疾患、外因、生活機能について既存の分類の課題、ICD-11適用時の改善に関する知見が得られ、今後の分析手法が構築された。

公開日・更新日

公開日
2024-08-20
更新日
2024-11-08

研究報告書(PDF)

研究成果の刊行に関する一覧表
倫理審査等報告書の写し

公開日・更新日

公開日
2024-09-17
更新日
-

研究報告書(紙媒体)

収支報告書

文献番号
202302004Z
報告年月日

収入

(1)補助金交付額
14,872,000円
(2)補助金確定額
14,735,000円
差引額 [(1)-(2)]
137,000円

支出

研究費 (内訳) 直接研究費 物品費 6,799,325円
人件費・謝金 1,069,838円
旅費 2,283,541円
その他 4,582,899円
間接経費 0円
合計 14,735,603円

備考

備考
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公開日・更新日

公開日
2024-11-08
更新日
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