内外リンパ腔画像からみた内耳疾患の病態と局所療法

文献情報

文献番号
200930002A
報告書区分
総括
研究課題名
内外リンパ腔画像からみた内耳疾患の病態と局所療法
課題番号
H19-感覚・一般-002
研究年度
平成21(2009)年度
研究代表者(所属機関)
中島 務(名古屋大学大学院 医学系研究科耳鼻咽喉科)
研究分担者(所属機関)
  • 長縄 慎二(名古屋大学大学院 医学系研究科量子医学)
  • 曽根 三千彦(名古屋大学大学院 医学系研究科耳鼻咽喉科)
  • 中田 誠一(名古屋大学大学院 医学系研究科耳鼻咽喉科)
  • 寺西 正明(名古屋大学大学院 医学系研究科耳鼻咽喉科)
  • 杉浦 真(刈谷豊田総合病院 耳鼻咽喉科)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 感覚器障害研究
研究開始年度
平成19(2007)年度
研究終了予定年度
平成21(2009)年度
研究費
11,300,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
本研究では、内リンパ腔の画像化を臨床的に充分応用できるようにするとともに、臨床症状と画像所見との関係を調べ、内耳病態の解明に貢献しようとした。また、内リンパ腔の画像化においてはガドリニウム造影剤を鼓室内か静脈内に投与するが、Drug delivery systemの観点から内耳への薬剤投与法について検討した。ガドリニウム造影剤を静脈内に投与して内外リンパ腔が評価できるようになれば、臨床的応用は飛躍的に広まる。本研究ではガドリニウム造影剤を静脈内に投与して内外リンパ腔を区別して描出するにはどのような条件が必要か検討を行った。
研究方法
3テスラMRI装置を用いて3D-FLAIRのほかに3D- real IR法でも内耳画像を撮った。最終年度である平成21年度の研究としては、特にガドリニウム造影剤を静脈内に投与して内リンパ腔の描出が可能かどうか検討した。静脈内にガドリニウム造影剤を通常の倍量(0.4mL/kg)もしくは通常量(0.2mL/kg)静注し4時間後にMRI撮影を行った。
結果と考察
ガドリニウム造影剤の鼓室内投与後の内耳造影所見には個人差が大きいが、ガドリニウム造影剤0.4mL/kg静注後の造影程度はガドリニウム造影剤16倍希釈鼓室内投与とほぼ同じであった。臨床症状と内リンパ水腫の関連ではメニエール病で基本的に全例水腫を認めたが、臨床的に聴力変動せず、めまいも非発作型であっても内リンパ水腫を呈する症例が多いことがわかった。
結論
MRIのソフトの開発や新しいハードの導入によって、より良い内リンパ腔の画像化が可能になった。特にガドリニウム造影剤を静脈内に投与して内リンパ腔を評価できるようになったことは、今後の臨床応用に大きなステップであった。その造影程度は鼓室内投与に比して薄いが、今後の技術的進歩によりさらに良い画像にしていきたい。

公開日・更新日

公開日
2010-09-22
更新日
-

文献情報

文献番号
200930002B
報告書区分
総合
研究課題名
内外リンパ腔画像からみた内耳疾患の病態と局所療法
課題番号
H19-感覚・一般-002
研究年度
平成21(2009)年度
研究代表者(所属機関)
中島 務(名古屋大学大学院 医学系研究科耳鼻咽喉科)
研究分担者(所属機関)
  • 長縄 慎二(名古屋大学大学院 医学系研究科量子医学)
  • 曾根 三千彦(名古屋大学大学院 医学系研究科耳鼻咽喉科)
  • 寺西 正明(名古屋大学大学院 医学系研究科耳鼻咽喉科)
  • 中田 誠一(名古屋大学大学院 医学系研究科耳鼻咽喉科)
  • 林 秀雄(名古屋大学大学院 医学系研究科耳鼻咽喉科)
  • 杉浦 真(刈谷豊田総合病院耳鼻咽喉科)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 感覚器障害研究
研究開始年度
平成19(2007)年度
研究終了予定年度
平成21(2009)年度
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
内耳は、側頭骨の中の小さくて繊細な器官であり、内リンパ腔の画像化は困難であった。本研究では、内リンパ腔の画像化を臨床的に充分応用できるようにするとともに、臨床症状と画像所見との関係を調べ、内耳病態の解明に貢献しようとした。また、内リンパ腔の画像化においてはガドリニウム造影剤を鼓室内か静脈内に投与するが、Drug delivery systemの観点から内耳への薬剤投与法について検討した。ガドリニウム造影剤を静脈内に投与して内外リンパ腔が評価できるようになれば、臨床的応用は飛躍的に広まる。本研究ではガドリニウム造影剤を静脈内に投与して内外リンパ腔を区別して描出するにはどのような条件が必要か検討を行った。
研究方法
3テスラMRI装置を用いて3D-FLAIRのほかに3D- real IR法でも内耳画像を撮った。120例にガドリニウム造影剤を8倍、もしくは16倍に生食でうすめて鼓室内注入し24時間後にMRI撮影を行った。また、静脈内にガドリニウム造影剤を通常の倍量(0.4mL/kg)もしくは通常量(0.2mL/kg)静注し4時間後にMRI撮影を行った。
結果と考察
ガドリニウム造影剤の鼓室内投与では、16倍希釈は、8倍希釈と比べて造影効果が弱かった。その造影効果は個人差が大きいが、鼓室内16倍希釈と静脈内倍量投与とほぼ同様であった。臨床症状と内リンパ水腫の関連ではメニエール病で基本的に全例水腫を認めたが、臨床的に聴力変動せず、めまいも非発作型であっても内リンパ水腫を呈する症例が多いことがわかった。
結論
MRIのソフトの開発や新しいハードの導入によって、より良い内リンパ腔の画像化が可能になった。この画像を用いて臨床所見・検査所見との関連について新しい治験を得ることができた。内耳MRIは、結合管の画像化など、今後さらに進歩すると確信している。

公開日・更新日

公開日
2010-09-22
更新日
-

行政効果報告

文献番号
200930002C

成果

専門的・学術的観点からの成果
今まで、内リンパ水腫の診断は、蝸電図、前庭誘発筋原電位、グリセロールテストなど機能検査のみであり。真に内リンパ水腫があるかどうかはっきり診断することができなかった。本研究により内リンパ水腫の画像診断が可能になった。

臨床的観点からの成果
メニエール病と内リンパ水腫の関係が明らかになりつつある。ガドりウム造影剤を鼓室に投与する方法の他、静脈内に投与して内リンパ水腫が画像化できるようになった。そのため、多数の症例で、症状と水腫の関係が検討できるようになり、多くの例で無症状の段階から内リンパ水腫が存在することもわかってきた。

ガイドライン等の開発
米国のメニエール病の診断基準は、Definite Meniere’s Diseaseが死後に剖検で内リンパ水腫が確認されるとCertain Meniere’s Diseaseになる。画像診断が普及すれば、診断基準に大きなインパクトとなる。
その他行政的観点からの成果
難治性メニエール病に対してゲンタマイシン鼓室内投与療法は選択枝のひとつであるが、鼓室内にガドリニウム造影剤を投与して画像診断を行うと、鼓室内に薬剤を投与しても内耳に薬剤が移行しない例をピックアップすることができる。このような症例ではゲンタマイシン鼓室内投与療法は無効であり、他の治療法を選択する。また、突発性難聴に対してステロイド鼓室内投与療法が行われているが、同様に画像診断が有意義である。

その他のインパクト
本研究により 2008年11月に名古屋で国際シンポジウムが開催された。成果はActa Oto-Laryngologica のSupplement 560 (2009)に掲載された。一般向け講演会を2007年度、2009年度に行い、多数の参加者があった。

発表件数

原著論文(和文)
1件
原著論文(英文等)
26件
その他論文(和文)
1件
その他論文(英文等)
1件
学会発表(国内学会)
39件
学会発表(国際学会等)
9件
その他成果(特許の出願)
0件
「出願」「取得」計0件
その他成果(特許の取得)
0件
その他成果(施策への反映)
1件
その他成果(普及・啓発活動)
2件

特許

主な原著論文20編(論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限る)

論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限ります。

原著論文1
Nakata S, Mizuno T, Naganawa S, et al.
3D-FLAIR MRI in facial nerve paralysis with and without audio-vestibular disorder
Acta Otolaryngol , 130 (5) , 632-636  (2010)
原著論文2
Kasai S, Teranishi M, Katayama N, et al.
Endolymphatic space imaging in patients with delayed endolymphatic hydrops.
Acta Otolaryngol , 129 (11) , 1169-1174  (2009)
原著論文3
Nakashima T, Naganawa S, Teranishi M, et al.
Endolymphatic hydrops revealed by intravenous gadolinium injection in patients with Meniere's disease.
Acta Otolaryngol , 130 (3) , 338-343  (2010)
原著論文4
Sone M, Naganawa S, Teranishi M, et al.
Changes in endolymphatic hydrops in a patient with Meniere's disease observed using magnetic resonance imaging
Auris Nasus Larynx , 37 (2) , 220-222  (2010)
原著論文5
Teranishi M, Naganawa S, Katayama N, et al.
Image evaluation of endolymphatic space in fluctuating hearing loss without vertigo.
Eur Arch Otorhinolaryngol , 266 (12) , 1871-1877  (2009)
原著論文6
Yoshioka M, Naganawa S, Sone M, et al.
Individual differences in the permeability of the round window: evaluating the movement of intratympanic gadolinium into the inner ear.
Otol Neurotol , 30 (5) , 645-648  (2009)
原著論文7
中島 務
突発性難聴の画像所見と病態
Audiology Japan , 52 (4) , 179-187  (2009)
原著論文8
Teranishi M, Yoshida T, Katayama N, et al.
3D computerized model of endolymphatic hydrops from specimens of temporal bone.
Acta Otolaryngol Suppl , 129 (560) , 43-47  (2009)
原著論文9
Naganawa S, Nakashima T.
Cutting edge of inner ear MRI.
Acta Otolaryngol Suppl , 129 (560) , 15-21  (2009)
原著論文10
Nakashima T, Naganawa S, Katayama N, et al.
Clinical significance of endolymphatic imaging after intratympanic gadolinium injection.
Acta Otolaryngol Suppl , 129 (560) , 9-14  (2009)
原著論文11
Nakashima T, Naganawa S, Pyykko I, et al.
Grading of endolymphatic hydrops using magnetic resonance imaging
Acta Otolaryngol Suppl , 129 (560) , 5-8  (2009)
原著論文12
Sone M, Mizuno T, Naganawa S, et al.
Imaging analysis in cases with inflammation-induced sensorineural hearing loss.
Acta Otolaryngol , 129 (3) , 239-243  (2009)
原著論文13
Naganawa S, Satake H, Iwano S, et al.
Imaging endolymphatic hydrops at 3 tesla using 3D-FLAIR with intratympanic Gd-DTPA administration.
Magn Reson Med Sci , 7 (2) , 85-91  (2008)
原著論文14
Naganawa S, Satake H, Iwano S, et al.
Communication between cochlear perilymph and cerebrospinal fluid through the cochlear modiolus visualized after intratympanic administration of Gd-DTPA.
Radiat Med , 26 (10) , 597-602  (2008)
原著論文15
Naganawa S, Satake H, Kawamura M, et al.
Separate visualization of endolymphatic space, perilymphatic space and bone by a single pulse sequence; 3D-inversion recovery imaging utilizing real reconstruction after intratympanic Gd-DTPA administration at 3 Tesla.
Eur Radiol , 18 (5) , 920-924  (2008)
原著論文16
Naganawa S, Sugiura M, Kawamura M, et al.
Imaging of endolymphatic and perilymphatic fluid at 3T after intratympanic administration of gadolinium-diethylene-triamine pentaacetic acid.
AJNR Am J Neuroradiol , 29 (4) , 724-726  (2008)
原著論文17
Yoshida T, Sugiura M, Naganawa S, et al.
Three-dimensional fluid-attenuated inversion recovery magnetic resonance imaging findings and prognosis in sudden sensorineural hearing loss.
Laryngoscope , 118 (8) , 1433-1437  (2008)
原著論文18
Sone M, Mizuno T, Sugiura M, et al.
Three-dimensional fluid-attenuated inversion recovery magnetic resonance imaging investigation of inner ear disturbances in cases of middle ear cholesteatoma with labyrinthine fistula.
Otol Neurotol , 28 (8) , 1029-1033  (2007)
原著論文19
Teranishi M, Katayama N, Uchida Y, et al.
Thirty-year trends in sudden deafness from four nationwide epidemiological surveys in Japan.
Acta Otolaryngol , 127 (12) , 1259-1265  (2007)
原著論文20
Nakashima T, Naganawa S, Sugiura M, et al.
Visualization of endolymphatic hydrops in patients with Meniere's disease.
Laryngoscope , 117 (3) , 415-420  (2007)

公開日・更新日

公開日
2015-05-29
更新日
-