文献情報
文献番号
202301012A
報告書区分
総括
研究課題名
DPC制度の適切な運用及びDPCデータの活用に資する研究
課題番号
22AA2003
研究年度
令和5(2023)年度
研究代表者(所属機関)
伏見 清秀(国立大学法人 東京医科歯科大学 大学院医歯学総合研究科 医療政策情報学)
研究分担者(所属機関)
- 石川 ベンジャミン光一(学校法人 国際医療福祉大学 大学院医学研究科 赤坂心理・医療福祉マネジメント学部 医療マネジメント学科)
- 今中 雄一(京都大学 医学研究科)
- 阿南 誠(独立行政法人国立病院機構九州医療センター医療情報管理センター)
- 康永 秀生(国立大学法人東京大学 大学院医学系研究科公共健康医学専攻臨床疫学・経済学)
- 藤森 研司(東北大学 大学院医学系研究科 公共健康医学講座医療管理学分野)
- 池田 俊也(国際医療福祉大学 医学部 公衆衛生学)
- 松田 晋哉(産業医科大学 医学部・公衆衛生学)
- 堀口 裕正(独立行政法人国立病院機構 本部 総合研究センター 診療情報分析部)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 行政政策研究分野 政策科学総合研究(政策科学推進研究)
研究開始年度
令和4(2022)年度
研究終了予定年度
令和5(2023)年度
研究費
30,600,000円
研究者交替、所属機関変更
-
研究報告書(概要版)
研究目的
①適切な診断群分類の研究: 改定された診断群分類の分析と精緻化を進め、学術的な資料を提供し、令和6年度の診療報酬改定に貢献する。
②DPCデータを活用した入院医療の評価に関する研究: DPCデータの提出要件が拡大してきた回復期や慢性期を含む医療機関での分析を進め、入院医療全体の適切な推進に貢献し、議論に必要な資料とする。
③DPCデータの解析と第三者提供の推進に資する研究: DPCデータベースとNDB・介護DBとの連結解析が開始されることや、個票の第三者提供の対象に含まれることを踏まえ、評価や問題点の抽出、改善に向けた検討を行い、制度の運用に貢献する。
②DPCデータを活用した入院医療の評価に関する研究: DPCデータの提出要件が拡大してきた回復期や慢性期を含む医療機関での分析を進め、入院医療全体の適切な推進に貢献し、議論に必要な資料とする。
③DPCデータの解析と第三者提供の推進に資する研究: DPCデータベースとNDB・介護DBとの連結解析が開始されることや、個票の第三者提供の対象に含まれることを踏まえ、評価や問題点の抽出、改善に向けた検討を行い、制度の運用に貢献する。
研究方法
約1,300の病院からデータ保護管理義務契約を結んでDPC調査データを収集し、パブリック・クラウドサービスを利用して安全かつ効率的にデータ処理を行い、過去10年分を含む7,000万例の大規模データベースを構築した。
結果と考察
①適切な診断群分類作成のための研究では、令和6年度DPC/PDPS傷病名コーディングテキスト改定に向けて、学内、学外から研究協力者を募り、過去2年間の研究成果を踏まえて課題等を議論し改定案を作成した。また、DPC分析用データセットの作成・開発に取り組み、収集したデータを処理し、分析に必要なデータセットを作成、データセットの完成により、DPCデータの精度が向上し、より高度な分析が可能となった。パブリック・クラウドサービスを利用して効率的なシステム構築と運用を進め、数千万円以上かかると予想される運用コストを抑え、効率的に研究を進めた。
②DPCデータを活用した入院医療の評価に関する研究では、早期離床・リハビリテーション加算の新設の影響、医療的ケア児の入院医療費の推計、急性胆嚢炎に対する胆嚢ステント留置の影響、COVID-19の入院医療への影響を明らかとした。DPCデータベースは大規模な診療報酬データベースであり、臨床疫学研究やヘルスサービスリサーチに活用できることを示し、2023年には70編の論文が掲載された。高齢女性の股関節・大腿近位骨折においては、栄養改善とリハビリテーションを適切に行うことが、患者の生命予後及びADLを守るために重要であることが示された。自殺企図症例の分析からは、自殺による死亡の予防及び減少のために、自殺企図患者を受け入れる急性期病院は精神科医療の体制整備が必要であることが示された。成人重症病床への小児重症患者の入室実態調査からは、PICUの配置は地域差があり、とりわけPICUが無い都道府県の小児重症患者の多くは成人重症病床で治療されていることが示唆された。小児領域における抗菌薬利用の分析からは、DOTベースの指標に加えてPDDベースの指標も小児における抗生物質使用のベンチマークとして有益である可能性が示唆され、極早産・極低出生体重児における抗微生物薬投与の地理的分布から、国内の新生児医療における空間効果と、アウトカムとの関連の分析の必要性が示唆された。切迫早産の分析では、本邦における切迫早産患者における塩酸リトドリンの長期投与に関する現状を明らかにするとともに、関連因子を明らかにした。2020-21年度の時点でも相当数の長期投与がなされており、地域差や施設差の存在も示唆された。頚椎脱臼骨折に対する早期手術の評価からは、早期手術群は遅延手術群と比較して30日死亡率が有意に高いことが示された。炎症性腸疾患の外科手術率の時系列変化の分析から外科手術は潰瘍性大腸炎(UC)、クローン病(CD)共に減少し、先進治療薬の使用はUCで増加、CDでは減少、CDでは内視鏡的腸管拡張術の増加などの関連が示唆された。
③DPCデータの解析や第三者提供の推進を目指す研究では、DPC制度の適正運用とデータ活用促進のためのセミナーを開催し、ExcelやTableauなどのBIツールを使用したDPCデータの分析や地域医療評価の手法を教授した。また、レセプト電算コードマスターや手術コードマスターなどの分析用マスターを整備して配布し、DPCデータの利活用や医療の質向上に貢献することを目指した。また、高齢者救急の入院経路別の分析では、在宅医療のある家庭からの入院、介護施設・社会福祉施設からの入院では、誤嚥性肺炎、肺炎、心不全、股関節・大腿近位の骨折、腎臓又は尿路の感染症などが多く、在宅療養支援病院等と在宅および介護施設等の連携に基づいて、状態の悪化に早めに対応することで高齢者救急の負荷を軽減する地域版RRSのような仕組みを導入することが必要であると考えられた。
②DPCデータを活用した入院医療の評価に関する研究では、早期離床・リハビリテーション加算の新設の影響、医療的ケア児の入院医療費の推計、急性胆嚢炎に対する胆嚢ステント留置の影響、COVID-19の入院医療への影響を明らかとした。DPCデータベースは大規模な診療報酬データベースであり、臨床疫学研究やヘルスサービスリサーチに活用できることを示し、2023年には70編の論文が掲載された。高齢女性の股関節・大腿近位骨折においては、栄養改善とリハビリテーションを適切に行うことが、患者の生命予後及びADLを守るために重要であることが示された。自殺企図症例の分析からは、自殺による死亡の予防及び減少のために、自殺企図患者を受け入れる急性期病院は精神科医療の体制整備が必要であることが示された。成人重症病床への小児重症患者の入室実態調査からは、PICUの配置は地域差があり、とりわけPICUが無い都道府県の小児重症患者の多くは成人重症病床で治療されていることが示唆された。小児領域における抗菌薬利用の分析からは、DOTベースの指標に加えてPDDベースの指標も小児における抗生物質使用のベンチマークとして有益である可能性が示唆され、極早産・極低出生体重児における抗微生物薬投与の地理的分布から、国内の新生児医療における空間効果と、アウトカムとの関連の分析の必要性が示唆された。切迫早産の分析では、本邦における切迫早産患者における塩酸リトドリンの長期投与に関する現状を明らかにするとともに、関連因子を明らかにした。2020-21年度の時点でも相当数の長期投与がなされており、地域差や施設差の存在も示唆された。頚椎脱臼骨折に対する早期手術の評価からは、早期手術群は遅延手術群と比較して30日死亡率が有意に高いことが示された。炎症性腸疾患の外科手術率の時系列変化の分析から外科手術は潰瘍性大腸炎(UC)、クローン病(CD)共に減少し、先進治療薬の使用はUCで増加、CDでは減少、CDでは内視鏡的腸管拡張術の増加などの関連が示唆された。
③DPCデータの解析や第三者提供の推進を目指す研究では、DPC制度の適正運用とデータ活用促進のためのセミナーを開催し、ExcelやTableauなどのBIツールを使用したDPCデータの分析や地域医療評価の手法を教授した。また、レセプト電算コードマスターや手術コードマスターなどの分析用マスターを整備して配布し、DPCデータの利活用や医療の質向上に貢献することを目指した。また、高齢者救急の入院経路別の分析では、在宅医療のある家庭からの入院、介護施設・社会福祉施設からの入院では、誤嚥性肺炎、肺炎、心不全、股関節・大腿近位の骨折、腎臓又は尿路の感染症などが多く、在宅療養支援病院等と在宅および介護施設等の連携に基づいて、状態の悪化に早めに対応することで高齢者救急の負荷を軽減する地域版RRSのような仕組みを導入することが必要であると考えられた。
結論
研究結果はDPC制度改定に反映され、診断群分類の統合や精緻化、コード体系の整備が検討される。医療の質評価やDPC情報の透明化に関しても研究成果が活用され、DPCデータの質の確保や公表に貢献することが期待される。
公開日・更新日
公開日
2024-07-01
更新日
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