文献情報
文献番号
200929005A
報告書区分
総括
研究課題名
ライフステージに応じた広汎性発達障害者に対する支援のあり方に関する研究 支援の有効性と適応の評価および臨床家のためのガイドライン作成
課題番号
H19-障害・一般-005
研究年度
平成21(2009)年度
研究代表者(所属機関)
神尾 陽子(国立精神・神経センター 精神保健研究所)
研究分担者(所属機関)
- 小山 智典(国立精神・神経センター 精神保健研究所 )
- 本田 秀夫(横浜市西部地域療育センター)
- 安達 潤(北海道教育大学 教育発達専攻)
- 市川 宏伸(東京都立梅ヶ丘病院)
- 近藤 直司(山梨県立精神保健福祉センター)
- 笠原 麻里(国立成育医療センター こころの診療部)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 障害保健福祉総合研究
研究開始年度
平成19(2007)年度
研究終了予定年度
平成21(2009)年度
研究費
4,550,000円
研究者交替、所属機関変更
-
研究報告書(概要版)
研究目的
広汎性発達障害 (Pervasive Developmental Disorders: PDD) を持つ人々への支援は、早期発見に始まり、ライフステージを通して支援ニーズの変化に対応しながら、最終的に長期予後の向上を獲得することを目標とすることが望ましい。しかしながら、従来研究が扱う長期予後は予測因子として知能や言語などの個人の能力が強調され、能力以外の個人特性や支援などの環境要因の影響は調べられていない。本研究は、わが国のPDD者の長期予後の実態を、客観的および主観的な側面から明らかにし、ライフステージ毎に予後に関連する個人要因と環境要因を同定することを目的とするものである。
研究方法
大規模後ろ向き調査は、全国の施設を利用するPDD者(18歳以上)を対象として、て養育者や支援者の他に、可能な場合本人からも質問紙での回答を求めた。入所者268人と通所者313人についてはいずれかの情報源から回答を得られた。小規模後ろ向き調査は、早期幼児期から成人までをカバーする年齢帯の臨床サンプルを対象とした。前向き調査は、妊婦健診でメンタルスクリーニングを行い、回答が得られた1500人を対象とした。
結果と考察
PDD成人を対象とした全国調査の結果から、早期診断と早期支援、そして就学前から途切れることのない支援の継続があること、また父親の育児協力といった家族要因が、主観的な長期予後に重要であることが明らかになった。就学前においては、早期集団療育はIQなど全般的発達に対して短期効果があった一方、社会性の向上に対しては変化が生じにくく、継続支援の必要性が示唆された。親への早期支援として、児の診断の有無にかかわらず長所・短所両面からの子ども理解を深めることを目的とした個別シートの活用の意義が確認された。おとなしい気質特徴を持つ子どもの場合、幼児期にPDD特性に気づかれにくい可能性が示された。幼児期にPDD症状が目立たなかった子どもで不安や恐怖の強い場合は、支援がないなかで青年・成人期に至ると、社会恐怖からひきこもりに発展するリスクが報告された。発達障害のある妊婦の発見には、通常の妊婦のメンタルスクリーニングに発達障害特性をトッピングしたスクリーニングが有用で、母親の認知特性に応じた育児支援につながる可能性が示唆された。
結論
長期予後の観点からPDD者に対するライフステージに応じた支援は、幼児期からPDD早期徴候の他に、不安、感覚過敏、気質も含めた包括的評価を行い、それにもとづいた継続的支援が可能なシステムを整備をする必要性が示唆された。
公開日・更新日
公開日
2010-05-25
更新日
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