成人期における歯科疾患のスクリーニング体制の構築に関する研究

文献情報

文献番号
200926068A
報告書区分
総括
研究課題名
成人期における歯科疾患のスクリーニング体制の構築に関する研究
課題番号
H20-循環器等(歯)・一般-003
研究年度
平成21(2009)年度
研究代表者(所属機関)
森田 学(岡山大学 大学院医歯薬学総合研究科 予防歯科学分野)
研究分担者(所属機関)
  • 川浪雅光(北海道大学 大学院歯学研究科 歯周治療学、歯内療法学分野)
  • 矢谷博文(大阪大学 大学院歯学研究科 顎口腔咬合学分野)
  • 花田信弘(鶴見大学 歯学部 探索歯学講座 )
  • 高柴正悟(岡山大学 大学院医歯薬学総合研究科 歯周病態学分野)
  • 野村義明(鶴見大学 歯学部 探索歯学講座)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 循環器疾患等生活習慣病対策総合研究
研究開始年度
平成20(2008)年度
研究終了予定年度
平成22(2010)年度
研究費
6,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
地域保健においては,成人を対象とした歯科検診が実施されてきた。健診方法としては,歯科医師が直接受診者の口腔を検査するのが一般的である。しかし,この方法は多くのマンパワーが必要であり,一人当たりの検診時間が長い。また,検診手法が侵襲的であるために,出血や苦痛を伴うことも多い。保健事業として行われる歯科健診の受診者数の伸び悩みも,このような理由が背景にある。歯科医師の介入を必要とすること自体が,公衆衛生学的に優れた方法であるとは言いがたい。
そこで,質問調査をベースに,生化学的検査を組み合わせることにより,将来,歯を喪失する可能性の高い者,歯周疾患の有病者を,非侵襲的に効率よくスクリーニングできるためのシステムを開発することを目的とした。
研究方法
大学病院あるいは開業歯科医院の外来初診患者を対象とした。抜歯が適当であると判断された歯を1歯以上有している者(症例群)と,抜歯適応の歯を有していない者(対照群)とに分類した。試作した聞き取りによる質問調査,口腔内の精密検査,および唾液検査(LDH測定,Hb測定),血液検査(歯周病に対する菌抗体価測定)を行い,結果を2群間で比較するとともに,ふるい分けの能力(敏感度・得意度)を検討した。
結果と考察
①「飲酒習慣がある」,「食事の時噛むことが不自由である」,「自分が歯周病であると思う」,以上3項目を用いた場合のいずれか2項目に該当する場合(「はい」と答えた者)について,敏感度0.92,特異度0.77という値を示した。したがって,この質問調査項目が,歯科疾患有病者をふるい分けするための質問調査項目として有効である可能性が示唆された。
②市町村での歯科保健を想定して,質問調査をベースとした歯科疾患スクリーニング事業調査のマニュアルの原案を作成した
③臨床検査や唾液検査のうち,抜歯の予測に有用な順としては,アタッチメントレベル最大値、アタッチメントレベル平均値、歯周ポケット平均値、歯周ポケット最大値,BOP(%),唾液検査のLDHの順であった。歯周病の状況が中等度以上であればPorphyromonas gingivalisへ対するIgG抗体価が上昇している傾向がみられた。唾液,血液検査は臨床指標をある程度反映しているが,抜歯の予測については,精度的に劣ると思われる。むしろ,抜歯に至る前段階(リスクの保有者)をスクリーニングするのに有効であるのかもしれない。
結論
質問調査で歯科疾患保有者をスクリーニングできる可能性が示唆された。

公開日・更新日

公開日
2010-04-24
更新日
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