心肺停止患者に対する心肺補助装置等を用いた高度救命処置の効果と費用に関する多施設共同研究

文献情報

文献番号
200926062A
報告書区分
総括
研究課題名
心肺停止患者に対する心肺補助装置等を用いた高度救命処置の効果と費用に関する多施設共同研究
課題番号
H19-心筋・一般-001
研究年度
平成21(2009)年度
研究代表者(所属機関)
坂本 哲也(帝京大学医学部 救急医学講座)
研究分担者(所属機関)
  • 浅井 康文(札幌医科大学附属病院 救急集中治療医学)
  • 長尾 建(駿河台日本大学病院 循環器科・救急医学)
  • 横田 裕行(日本医科大学大学院 侵襲生体管理学)
  • 田原 良雄(横浜市立大学附属市民総合医療センター 高度救命救急センター)
  • 森村 尚登(帝京大学医学部 救急医学講座)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 循環器疾患等生活習慣病対策総合研究
研究開始年度
平成19(2007)年度
研究終了予定年度
平成21(2009)年度
研究費
34,046,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
現時点では人工心肺装置等、特に経皮的心肺補助法(PCPS:percutaneous cardiopulmonary support)による心肺蘇生法の有用性に関して世界的合意を検討するだけの十分な報告がなく、本邦でも多施設による集積研究がない。本研究は、心肺停止患者に対するPCPSを用いた高度救命処置の効果と費用を多施設で検討することを目的とした。この結果から人工心肺装置等による心肺蘇生法の有用性を明らかにすることができ、また国際蘇生連絡委員会(ILCOR:International Liaison Committee on Resuscitation)において世界的合意のための資料とすることができる。
研究方法
多施設共同前向き比較対照観察研究(prospective, non-randomized、cohort study)の中間解析を行い、入院1ヶ月後 Cerebral Performance Categories (CPC)1または2(以下Favorable outcome)の割合、合併症、コストを検討した。
結果と考察
平成20年度までに研究参加登録を完了した57施設のうち、今年度までに、PCPS群27施設、非PCPS群23施設、総計50施設が倫理委員会申請を完了し、45施設が患者登録を開始した。2010年3月末日時点で、36施設(PCPS群21施設、Control群15施設)が患者登録を完了し、登録患者数は総計308例、適格基準合致症例数は、PCPS群103例、非PCPS群67例、総計170例に達した。PCPS群のFavorable outcomeの割合は、Intention to treatで、PCPS群15.9%(17例)、非PCPS群が0%(0例)、Per protocol では、PCPS群16.7%(17例)、非PCPS群が0%(0例)と、非PCPS群に比べて良好であった。PCPSの合併症として、出血 /血腫が43.0%(46例)、感染が10.3%(11例)報告された。
結論
中間解析の結果、したがって、PCPSを用いた心肺蘇生が通常の二次救急処置よりも予後を良くすることが示唆された。しかし、サンプルバイアスの可能性を否定できず、また予後不明例がPCPS群の約10%を占めるため、引き続き、症例登録の支援、予後の追跡を行い、更なる検証が必要である。

公開日・更新日

公開日
2010-05-31
更新日
-

文献情報

文献番号
200926062B
報告書区分
総合
研究課題名
心肺停止患者に対する心肺補助装置等を用いた高度救命処置の効果と費用に関する多施設共同研究
課題番号
H19-心筋・一般-001
研究年度
平成21(2009)年度
研究代表者(所属機関)
坂本 哲也(帝京大学医学部 救急医学講座)
研究分担者(所属機関)
  • 浅井 康文(札幌医科大学附属病院 救急集中治療医学)
  • 長尾 建(駿河台日本大学病院 循環器科・救急医学)
  • 横田 裕行(日本医科大学大学院 侵襲生体管理学)
  • 田原 良雄(横浜市立大学附属市民総合医療センター 高度救命救急センター)
  • 森村 尚登(帝京大学医学部 救急医学講座)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 循環器疾患等生活習慣病対策総合研究
研究開始年度
平成19(2007)年度
研究終了予定年度
平成21(2009)年度
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
経皮的心肺補助(PCPS:percutaneous cardiopulmonary support)は、1980年代後半に侵襲度が少ない簡便な循環補助装置として臨床使用が始まり、以後適応の拡大と普及をみている。しかしPCPSを用いた心肺蘇生法の有用性に関して国際的コンセンサスを形成するためには報告が不十分であり、報告例の多い本邦でも多施設による集積研究はない。そこで本研究は、院外心肺停止患者に対するPCPSを用いた高度救命処置の効果と費用を多施設で検討することを目的とした。
研究方法
1.和文報告の集積、2.英文報告のエビデンス評価、3.PCPS適応基準・管理基準の調査、4.後ろ向き診療録調査、5.全国救急医療施設実態調査、6.多施設共同前向き比較対照観察研究、7.PCPSマニュアル作成
結果と考察
平成20年度までの和文報告の集積による生存退院率は29.1±1.4%であり、publication biasの影響は低いと考えられた。また院外心停止例を対象とした大規模な比較対照研究の英文報告はみとめなかった。次に研究協力者施設のPCPS適応基準を調査を基に前向き研究の適格・管理規準案を策定し、研究協力施設の院外心肺停止1220例に後ろ向きに適用して検証した。適格規準に合致した20例の生存退院率は30%、GOSのGR+MDの割合は15%であった。全国の救急医療施設のうち80施設(51.6%)が、院外心停止に対しPCPSを用いた蘇生治療経験を有していた。平成21年3月末の時点で、36施設(PCPS群21施設、非PCPS群15施設)が多施設共同前向き比較対照観察研究の患者登録を完了し、PCPS群のFavorable outcomeの割合は、Intention to treatで、PCPS群15.9%(17例)、非PCPS群が0%(0例)、Per protocol では、PCPS群16.7%(17例)、非PCPS群が0%(0例)と、非PCPS群に比べて良好であった。
結論
中間解析の結果、PCPS群のFavorable outcomeの割合は、非PCPS群に比べて良好であった。PCPSを用いた心肺蘇生が通常の二次救急処置よりも予後を良くすることが示唆されたが、サンプルバイアスの可能性を否定できず、予後不明例がPCPS群の約10%を占めるため、引き続き、症例登録の支援、予後の追跡を行い、更なる検証が必要である。

公開日・更新日

公開日
2010-05-31
更新日
-

行政効果報告

文献番号
200926062C

成果

専門的・学術的観点からの成果
経皮的心肺補助(PCPS:percutaneous cardiopulmonary support)は、循環器領域のみならず、呼吸器領域、さらには救急領域へと適応の拡大と普及をみている。しかし、PCPSの院外心停止に対する有用性に関しては国際的コンセンサスを形成するためのエビデンスが不十分であり、報告例の多い本邦でも多施設による集積研究はなかった。本研究の多施設共同前向き比較対照観察研究の中間解析では、PCPS群の予後良好例の割合は15.9%であり、非PCPS群の0%と比べて高値であった。
臨床的観点からの成果
PCPSは既にK602経皮的心肺補助法として、1日目11,100点、2日目以降3,120点を手術料として保険診療点数請求できる手技であるが、侵襲が大きく、高額の医療であるため院外心停止への適応について慎重な判断が必要となる。本研究により、院外心停止の内、初回心電図が心室細動または無脈性心室頻拍で、病院前の自己心拍再開を問わず病院到着時心停止であり、119番通報あるいは心停止から病院到着まで45分以内であり、病院到着後15分間心停止が持続している75歳未満の患者には有用性が高いことが示された。
ガイドライン等の開発
わが国の心肺蘇生ガイドラインには、まだ反映されていない。しかし、2010年1月31日から2月4日まで米国テキサス州ダラスで開催された国際蘇生連絡委員会(ILCOR:International Liaison Committee on Resuscitation)の心肺蘇生コンセンサス会議Advanced Life Support Task Force(2月1日)において、本研究によるエビデンス評価を研究責任者が発表し、体外循環を用いた心肺蘇生の科学的コンセンサスが形成され推奨治療が議論された。
その他行政的観点からの成果
2009年の消防法改正により、患者の容体に応じた搬送先のリストを盛り込んだ「搬送・受け入れの実施基準」の策定と公表が都道府県に義務付けられた。患者の容体の中で最も緊急性が高い心肺停止について、通常の二次救命処置ができることは当然ながら、心拍再開例については緊急冠インターベンションと低体温療法が可能であるか否かが搬送先選定の根拠となる。特に心室細動や無脈性心室頻拍患者で、現場の救急隊員による除細動で自己心拍が再開しないものについては、加えてPCPSが可能であるかも選定根拠となり得ることが判明した。
その他のインパクト
2009年3月19日に大阪において内外の研究者により開催された国際蘇生科学シンポジウム(I-ReSS: International Resuscitation Science Syposium) に おいて「体外補助循環を用いた心肺蘇生ー我が国における院外心停止に対するECPRの検討(SAVE-J)」を、2010年2月23日に東京においてJ-PULSE・SAVE-J合同公開報告会を開催し、「The ECPR Japanese Network」を発表し、メディカルトリビューン紙などに掲載された。

発表件数

原著論文(和文)
0件
原著論文(英文等)
1件
本邦報告例の集積研究について、Resuscitationに投稿中
その他論文(和文)
3件
総説ほか。
その他論文(英文等)
0件
学会発表(国内学会)
28件
日本救急医学会、日本心臓病学会、日本集中治療医学会、PCPS研究会、日本脳低温療法学会、日本循環器学会など。
学会発表(国際学会等)
14件
Resuscitation Science Symposium/ Scientific meeting(American Heart Association)など
その他成果(特許の出願)
0件
「出願」「取得」計0件
その他成果(特許の取得)
0件
その他成果(施策への反映)
0件
その他成果(普及・啓発活動)
1件
J-PULSE・SAVE-J 合同公開報告会,2010.2.23

特許

主な原著論文20編(論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限る)

論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限ります。

原著論文1
Morimura N, Sakamoto T, Nagao K, et al.
Extracorporeal cardiopulmonary resuscitation for out-of-hospital cardiac arrest: A systematic review of the literature in Japan.
Resuscitation (submitted in 2010)  (2010)

公開日・更新日

公開日
2015-10-07
更新日
-