一過性脳虚血発作(TIA)の診断基準の再検討、ならびにわが国の医療環境に則した適切な診断・治療システムの確立に関する研究

文献情報

文献番号
200926061A
報告書区分
総括
研究課題名
一過性脳虚血発作(TIA)の診断基準の再検討、ならびにわが国の医療環境に則した適切な診断・治療システムの確立に関する研究
課題番号
H21-循環器等(生習)・一般-017
研究年度
平成21(2009)年度
研究代表者(所属機関)
峰松 一夫(国立循環器病センター リハビリテーション部)
研究分担者(所属機関)
  • 上原 敏志(国立循環器病センター 内科脳血管部門)
  • 岡田 靖(国立病院機構九州医療センター 脳血管センター 脳血管内科)
  • 木村 和美(川崎医科大学 脳卒中医学)
  • 中川原 譲二(中村記念病院 脳神経外科)
  • 飯原 弘二(国立循環器病センター 脳血管外科)
  • 内山 真一郎(東京女子医科大学 神経内科学)
  • 小笠原 邦昭(岩手医科大学 脳神経外科)
  • 鈴木 明文(秋田県立脳血管研究センター 脳神経外科学研究部・脳卒中診療部)
  • 棚橋 紀夫(埼玉医科大学国際医療センター 脳卒中内科)
  • 高木 繁治(東海大学医学部 神経内科)
  • 長尾 毅彦((財)東京都保健医療公社 荏原病院 総合脳卒中センター 神経内科)
  • 永廣 信治(徳島大学 脳神経外科学)
  • 長谷川 康博(名古屋第二赤十字病院 神経内科)
  • 松本 昌泰(広島大学大学院病態探究医科学講座 脳神経内科学)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 循環器疾患等生活習慣病対策総合研究
研究開始年度
平成21(2009)年度
研究終了予定年度
平成23(2011)年度
研究費
26,200,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
 一過性脳虚血発作(TIA)の診断基準の再検討、ならびにわが国の医療環境に則した適切な診断・治療システムの確立を目的とする。
研究方法
 わが国の脳卒中専門施設におけるTIAの診療実態を把握するために、日本脳卒中学会認定研修教育病院683施設を対象としたアンケート調査を実施した。また、2008年1月から2009年12月までの2年間に分担研究者所属施設に入院(発症後7日以内)したTIA例について、TIA発症時の対応、検査および治療内容、入院中の脳・心血管系事故の有無等を検討するための後ろ向き患者登録票を作成し、2010年4月からデータWeb入力を開始した。
結果と考察
 アンケート調査の回収率は72.3%であった。日常診療で用いているTIAの定義は、「症状持続時間が24時間以内で、画像上の梗塞巣の有無は問わない」との回答が48%、「症状持続時間が24時間以内で、画像上、梗塞を認めない」が42%であった。「非脳卒中専門医からTIA疑いで紹介された患者のうち、実際にTIAである割合はどれくらいと思われますか?」の質問に対し、約8割の施設が50%以下と回答した。発症24時間以内のTIA患者が来院した場合の入院の適応方針については、「原則として全例、当日に入院させる」が60.5%と最も多く、「ABCD2スコアなどの脳卒中発症予測スコアを用いて判断する」と答えたのは7.3%のみであった。抗血栓療法については、65.4%の施設が、「原因精査を行った上で、24時間以内に抗血小板療法もしくは抗凝固療法を開始する」と回答した。
 各分担研究者所属施設でのTIA例の後ろ向き検討により、TIA症状の進行や動揺はその後の脳卒中発症の有意な予測因子であることや、MRI拡散強調画像陽性例やABCD2スコアの高い例はその後に脳梗塞を発症しやすいことが報告された。また、TIAの既往のある脳梗塞例は既往のない例と比べて、アテローム血栓性梗塞の比率が有意に高く、退院時の転帰不良例が多いことも示された。
結論
 今回実施したアンケート調査により、国内専門施設のTIA診療はおおむね妥当であると思われたが、持続時間を1時間前後と定義した新分類や脳卒中発症予測スコアはほとんど普及していないこと、また非専門医によるTIA正診率はかなり低いと考えられていることが明らかとなった。

公開日・更新日

公開日
2010-05-26
更新日
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