女性における生活習慣病戦略の確立-妊娠中のイベントにより生活習慣病ハイリスク群をいかに効果的に選定し予防するか

文献情報

文献番号
200926048A
報告書区分
総括
研究課題名
女性における生活習慣病戦略の確立-妊娠中のイベントにより生活習慣病ハイリスク群をいかに効果的に選定し予防するか
課題番号
H21-循環器等(生習)・一般-004
研究年度
平成21(2009)年度
研究代表者(所属機関)
北川 道弘(国立成育医療センター 病院)
研究分担者(所属機関)
  • 今井 潤(東北大学大学院 薬学研究科医療薬学 )
  • 関沢 明彦(昭和大学 医学部 )
  • 堀川 玲子(国立成育医療センター 病院)
  • 坂本 なほ子(国立成育医療センター 研究所)
  • 荒田 尚子(国立成育医療センター 病院)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 循環器疾患等生活習慣病対策総合研究
研究開始年度
平成21(2009)年度
研究終了予定年度
平成23(2011)年度
研究費
9,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
妊娠中のイベントと女性の生活習慣病リスクを解析し、妊娠中のイベントを用いてハイリスク群を効果的に選定し予防する方法を確立する。
研究方法
本年度は3か年計画の初年度の研究であり、①現在進行中である既存の出生コホート研究の妊娠中のデータを用い、妊娠高血圧症候群発症や妊娠糖尿病の予知方法を検討、②妊娠高血圧症候群の発症予知因子として胎盤で起こっている変化を母体血漿中cell-free RNAや母体血細胞成分由来RNAを用いてモニターが可能かどうかを検討、③妊婦自身の出生時の母子手帳に記載された体重情報、血圧、尿蛋白などのデータを用い30年後の妊婦の母親の高血圧や糖尿病の罹病率を問診により調査、④現在進行中の出生コホート研究の5歳児の健診データを用いて成長・代謝指標の実態と母体因子との関連を検討した。
結果と考察
出生コホート研究の1504妊婦を対象に妊娠高血圧症候群(PIH)発症に対する予測因子の解析によって、妊娠初期および20週の時点での妊婦健診の血圧値が重要な予測因子であることを明らかにし、妊婦自身の出生時の低出生体重は妊娠中の耐糖能異常発症の独立した説明因子でありことを示した。また、母体血漿成分・細胞成分の絨毛細胞に由来する各種RNAを用いた胎盤機能評価指標によるPIHの発症予知が妊娠15-20週の臨床症状発現前の段階で可能であること、さらに、妊娠中の連続的家庭血圧測定のデータを用いて妊娠前のBMIが大であるほど妊娠期間中の家庭血圧値は高値であることを示した。以上、妊娠中のイベントに対する発症予測因子を明らかにすることができた。
妊娠中のイベントと女性の長期予後という点では、妊娠中の高血圧、蛋白尿は約30年後の高血圧や蛋白尿と非常に関連が強く、妊娠高血圧症候群や蛋白尿はその後の女性の高血圧や慢性腎臓病といった生活習慣病発症と非常に強い関連性があることが示され、これらは女性の生活習慣病予防において、高リスク群を明らかにするための有用な情報であることがわかった。また、出生コホート研究対象児(5歳)142名の成長・代謝指標に関して、体格は母親の素因に規定され、5歳時ですでに肥満は脂質代謝異常と血圧値に影響を与えている可能性を示し、母児間での生活習慣病リスクの継承が示唆された。
結論
妊娠高血圧症候群や妊娠糖尿病などの妊娠中のイベント発症の高リスク因子を明らかにし、これらの妊娠中のイベントと女性の生活習慣病発症との関連性の一部を明らかにすることができた。次年度には、さらに出生コホート研究、ケースコホート研究などを用いて女性の生活習慣病発症高リスク群を妊娠・分娩時に効果的に選定する方法を明らかにする。

公開日・更新日

公開日
2010-05-24
更新日
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